「何かあったら言ってるよ」
上司や経営者の中には、こう話す人がいます。
「何かあったら言ってね」
「遠慮しなくていいから」
「意見があるなら聞くよ」
本人は部下やスタッフに配慮しているつもりです。
実際に悪気もありません。
むしろ話しやすい職場を作ろうとしている人も多いでしょう。
ところが現実はどうでしょうか。
本当に問題が起きていても誰も言わない。
不満があっても黙っている。
退職届を出されて初めて問題を知る。
そんな経験をしたことがある管理職も少なくありません。
なぜ「何かあったら言って」と伝えているのに、本音が出てこないのでしょうか。
実はその言葉自体に大きな落とし穴があるのです。

- 「何かあったら言ってるよ」
- 本音を言う側には大きなリスクがある
- 本音は聞かれないと出てこない
- 「何かあったら言って」は便利な逃げ言葉でもある
- 本音が出る職場と出ない職場の違い
- 飲食店経営でよく見る失敗
- 優秀な人ほど何も言わずに去る
- 本音を引き出したいなら質問を変える
- 本音は信頼の結果であって原因ではない
- まとめ
本音を言う側には大きなリスクがある
まず理解しなければならないのは、本音を言う人は勇気を使っているということです。
例えば、
人手不足が辛い。
シフトが偏っている。
業務量が多すぎる。
店長の指示が分かりにくい。
そんなことを口にしたとします。
言った本人はどう感じるでしょうか。
嫌われるかもしれない。
評価が下がるかもしれない。
面倒な人だと思われるかもしれない。
このような不安が生まれます。
言う側にはリスクがあります。
しかし聞く側にはほとんどリスクがありません。
つまり「何かあったら言って」という言葉は、一見優しそうでいて、実は相手にボールを投げているだけなのです。
本音は聞かれないと出てこない
多くの経営者や店長は勘違いしています。
本音は話したい人が勝手に話すものではありません。
本音は聞かれて初めて出てくるものです。
例えば友人との会話を思い出してください。
悩みがあっても自分から話さないことがあります。
しかし、
「最近疲れてない?」
「何かあった?」
「前と様子が違うけど大丈夫?」
と聞かれると話し始めることがあります。
職場も同じです。
人は安心できる質問をされて初めて本音を出します。
「何かあったら言って」は便利な逃げ言葉でもある
厳しい言い方をすると、「何かあったら言って」は管理職にとって非常に便利な言葉です。
なぜなら責任を相手に渡せるからです。
問題が起きても、
「言ってくれれば良かったのに」
で終わってしまいます。
しかし部下から見れば違います。
言えない雰囲気だった。
忙しそうだった。
以前相談したら流された。
そんな経験があるかもしれません。
するとスタッフはこう考えます。
「言っても意味がない」
「どうせ変わらない」
そして黙ります。
本音が出る職場と出ない職場の違い
本音が出る職場には共通点があります。
それは上司の方から聞いていることです。
しかも漠然とした質問ではありません。
「最近困っていることはある?」
「仕事でやりづらい部分はある?」
「もっと良くできると思うところはある?」
このように具体的です。
具体的な質問には具体的な答えが返ってきます。
反対に、
「何かある?」
という曖昧な質問では、
「特にありません」
で終わります。
実際には問題が山ほどあったとしてもです。
飲食店経営でよく見る失敗
飲食店経営の現場では特によく見られます。
店長がスタッフに言います。
「何かあったら言ってね」
スタッフは笑顔で返事をします。
「はい、分かりました」
しかし何も言いません。
その後どうなるでしょうか。
突然退職します。
店長は驚きます。
「全然そんな風に見えなかった」
「相談してくれれば良かったのに」
そう話します。
ですがスタッフからすると、相談できる状態ではなかったのです。
相談する時間もなかった。
相談しても変わらなかった。
忙しそうで話しかけられなかった。
理由はいくらでもあります。
つまり問題は「言わなかったスタッフ」ではなく、「言える環境を作れなかった組織」にあることも少なくないのです。
優秀な人ほど何も言わずに去る
特に注意したいのは優秀な人です。
優秀な人は最初から文句ばかり言いません。
まずは自分で解決しようとします。
工夫します。
改善します。
努力します。
それでも改善できない時だけ相談します。
ところが、その相談が軽く扱われるとどうなるでしょうか。
二度と相談しなくなります。
そして静かになります。
最終的には退職します。
周囲は突然辞めたように見えます。
しかし本人の中ではずっと前から結論が出ていたのです。
本音を引き出したいなら質問を変える
もし本音を知りたいなら、
「何かあったら言って」
をやめることです。
代わりに、
「私が気付いていない問題はある?」
「働きにくい部分はある?」
「私に改善してほしいことはある?」
と聞いてみてください。
ポイントは自分に矢印を向けることです。
相手ではありません。
自分です。
すると意外なほど本音が出てきます。
本音は信頼の結果であって原因ではない
本音を言ってもらいたい。
そう考える管理職は多いでしょう。
しかし順番を間違えてはいけません。
本音は信頼があるから出てくるのです。
信頼がない状態で、
「何かあったら言って」
と言っても意味はありません。
人は言葉ではなく行動を見ています。
話を最後まで聞く人なのか。
否定しない人なのか。
改善しようとする人なのか。
そこを見ています。
だから本音を聞きたいなら、まず信頼を積み重ねることが先なのです。
まとめ
「何かあったら言って」
この言葉は優しいように聞こえます。
しかし実際には本音を引き出す力はほとんどありません。
なぜなら本音を話す側には大きなリスクがあるからです。
本音は相手任せでは出てきません。
聞く側が具体的に質問し、安心できる環境を作り、信頼関係を築いて初めて出てきます。
飲食店経営でも、売上改善でも、集客施策でも、客単価向上でも、原価管理でも、リピート率向上でも、店舗改善でも同じです。
現場の本音を知らずして、本当の改善はできません。
もしあなたが経営者や管理職なら、一度振り返ってみてください。
あなたは「何かあったら言って」と伝えているだけでしょうか。
それとも本音が出るまで、自分から聞きに行っているでしょうか。
この違いが、強い組織と弱い組織を分けるのかもしれません。
あなたの職場では本音は言いやすいですか?
それとも「言っても無駄」と感じていますか?
ぜひコメントであなたの体験を教えてください。

