商売の基本と繁栄の鉄則は一つしかない。相手の利益を徹底的に優先すること。
こうした姿勢を自利利他ともいう。自利利他とは、自らの仏道修行により得た功徳を自分が受け取るとともに、他のための仏法の利益をはかることだが、とにかく、相手の利益を優先することが商売繁盛の基本になる。
商売の基本と繁栄の鉄則の実践は大阪商人が得意としていた。大坂の町は秀吉が築き、家康がそのまま引き継いだが、江戸末期までビジネスの中心は大阪であり、大阪商人が主役だった。
大坂商人と聞くと、商売っ気が旺盛で、ケチで利益に敏いイメージを持つかも知れないが、大阪商人の本質的気質は、相手の利益を優先するところにあった。
利益を独り占めするようながめつさはなく、時には身銭をきって他人のビジネスを助けることも日常的にあったようだ。
例えば、江戸時代の大阪の街には、現代以上に沢山の橋が架かっていたが、その九割は私設の橋、つまり、誰かが私財を費やして作った橋と云われている。(因みに東京の橋は殆どが官製だった)
このエピソードひとつとっても大阪商人の気質が伺えるが、江戸~明治時代までの商売人(ビジネスパーソン)には、こうした気質が大いに残っていた。
商売の基本を守れば繁栄する
商売の基本である相手の利益を優先することで得られるメリットは、大きな信頼が得られること。
信頼とは無形資産のようなものだが、その効果は絶大である。提供する商品やサービスがライバルと変り映えしなくても、信頼があれば、ライバルに勝つことができるからです。
信頼が信頼を呼んで、新しい顧客や新しい注文が入ることもある。また、苦境の時の助けの手の多寡も信頼で決まる。
兎に角、信頼は、商売を拡大するための絶対条件であり、商売繁盛の源泉になる。
信頼は
相手の利益を優先することで厚くなるが、注意すべきは、信頼を積み重ねるには途方もない時間と労力がかかるが、信頼を失墜するのは一瞬である、という点だ。
商売が繁盛するにつれて、油断・慢心・傲慢な言動が出やすくなるが、常に謙虚に、周囲に感謝し、相手の利益を優先し続ける姿勢が何よりも重要。
自分中心のビジネスは破綻する
商売の基本から逸脱した自分中心のビジネスは何れ破綻する。
大阪商人のように、相手の目線になって物事を考え、モラルある判断基準を持ち、常に相手の利益を想う誠実な姿勢が、企業の永続性を高めるのだ。
また、お互い損得なく、他者を助けることが出来る時はどんどん助け、助けてもらえる時はどんどん助けてもらう。
こうした経営姿勢の定着が、顧客・社員・取引先との信頼を厚くし、会社の経営基盤を一段と強固にする。業界や経済の繁栄も、こうした共存共栄の姿勢があるほど盤石になる。
百年、二百年と続く老舗企業ほど、こうした企業精神が色濃く残っているが、しんどい時こそ相手の利益を優先することが、経営者が大切にすべき経営姿勢である。
会社経営に必要な経営資源
独自の商品やサービスを生み出し、ライバルを上回る売上を作るためには、相応の経営資源が必要です。
なかでも重要なのは、人・顧客・お金の3つの経営資源。
会社経営の規模は、顧客と商品の掛け合わせで大きくなるので、顧客は、会社経営を成功させるうえで必須の経営資源と言える。さらに、新たな顧客を生み出す人やお金等も必要不可欠な経営資源になる。
人を育てる
会社経営を成功させるうえで「人」は最も必要な経営資源といえる。
会社創業も、新規事業のスタートアップも、会社を次世代に引き継ぐ事業承継も、すべては人の才能・資質・能力次第で成否が分かれるからだ。人を育てる仕事は経営者の最重要業務と言って過言ではないが、必要な人財が社内で賄えない場合は、社外の人財を活用する手もある。とにかく、周囲の状況に応じて最適・最強の人財を揃えることができれば、会社経営は成功する。
顧客を創る
顧客なくして、会社経営の成功はない。顧客の増減は、会社経営の成功と失敗を分かつ重要な要素。しかも、毎年、一定数の顧客は離脱するので、会社経営を安定させるには、常に一定の顧客を生み出す必要がある。
顧客創造のコツは、ターゲット顧客を明確にすることに尽きる。商品やサービスを提供するターゲット顧客が明快になれば、自ずと販売活動が最適化され、簡単に売上が増えるスパイラルが回り始めるからです。会社経営の成功は、顧客創造にあると言って過言ではない。
お金を回す
会社経営はお金で始まり、お金で終わる。会社は、お金が無くなると倒産するので、売上と利益を増やすと共に、お金を増やすことが最も重要なミッションになる。さらに、増やしたお金を成長投資として使うことも必要で、お金を上手に使うほど、会社経営の成功率が上がる。お金を増やしては使う、この繰り返しが、企業繁栄の大原則になる
会社経営に必要な経営スキル
独自の商品やサービスを生み出し、ライバルを上回る売上を作るためには、相応の経営スキルが必要。
なかでも重要なのは、管理会計・マネジメント・リーダーシップの3つの経営スキル
事業活動の結果は必ず数字に表れるので、数字を科学する管理会計のスキルは会社経営を成功させるうえでの必須スキルと言える。また、人・顧客・お金等の重要な経営資源を最適化・最大化するマネジメントとリーダーシップも欠かせない経営スキルになる。
管理会計
管理会計は、数字を有益な情報に変換する優れたツールだ。結果分析だけでなく、検証精度も上がるので、経営者の決断の質や事業活動の質が数段パワーアップする。
当然、ミスも少なくなるため、成功のチャンスが増える。先見性も磨かれるので、先を読んで、先手を打つ会社経営も定着する。結果、新興企業やベンチャーよりも早く進化するので、常に好調をキープする。まさに、管理会計は、会社経営の成功に欠かせない必須スキル。
マネジメント
マネジメントは、経営資源を最適化・最大化するスキルだ。人を活用する、顧客を創造する、お金を貯めて投資する等、マネジメント力の高低は、間違いなく、会社経営の成否を左右する。マネジメントは、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報等)を管理・コントロールするのではなく、経営資源を最適化・最大化する思考・言動に重きを置くと成果が出やすい。人でいえば、いかにして個々の社員の才能資質を活かしきるかがマネジメントの見せ所と言える。
リーダーシップ
リーダーシップは、社員や関係者の成長をけん引するだけでなく、事業の推進力にも影響を及ぼす重要なスキル。
リーダーシップは、何でもできて頼りがいのある人物だけに宿るものではない。自分の苦手分野を社員に助けてもらう、あるいは、得意分野を持っている社員を上手に使うセンスも立派なリーダーシップ。
良寛の一句「裏を見せ、表を見せて、散るもみじ」のように、人間的魅力を隠さず飾らずにさらけ出す姿勢が、リーダーシップ力を押し上げる。