飲食店で働くなら、まかないのあるお店がいい!と思う人は多いのではないでしょうか。美味しい料理を安く食べられるのは、飲食店で働くスタッフの特権です。美味しいまかないを楽しみに、仕事を頑張っているスタッフも多いでしょう。
近年では飲食店のまかない飯を集めたイベントが開催されるなど、「まかない飯」は新たな食ジャンルとしても注目されています。
- まかないがない店も? 飲食店のまかない事情
- まかないのメニューは? 食べるタイミングは?
- 「まかない」から新メニュー誕生!? こんなメリットも
- まかないの税務上の注意点
- まかない費用はどうやって集めたらいい?
- ※労働給与80,000円、1ヶ月のまかない費用5,000円、従業員負担2,500円の場合
まかないがない店も? 飲食店のまかない事情
「まかない」とは、お店から提供されるスタッフ用の食事のこと。まかないを提供している飲食店は多く、少しでも食費を浮かせたい、節約したい方にとっては嬉しい制度です。
しかし逆にねいところも多い!!!!
しかし、すべての飲食店でまかないが提供されているわけではありません。
そもそもまかない制度を取り入れていない場合や、まかないの制度自体はあっても、シフト次第でまかないが食べられないという場合もあります。
大手飲食店では
まかないという形ではなく、お店で提供するメニューを従業員価格(通常より安く)で食べられる、食事補助や従業員割引といった制度を導入しているところもあります。
このあたりは飲食店によって事情が異なるので、まかないの有無がお店を決めるポイントとなる人は、求人情報をチェックしたり、面接の際に話を聞いたりしておくと良いでしょう。
また、なかには「まかない=タダでご飯を食べられる」と思っている人もいるかもしれません。実際にまかないを無料で提供しているお店もありますが、まかない代をスタッフから徴収するお店もあります。
一見すると
無料のまかないは食費を節約したい人にとって嬉しい制度ですが、無料の場合は給与を現物支給したと見なされ課税対象となるので、飲食店経営者は注意が必要です。
まかないの有無はもちろんですが、まかないの代金など一歩踏み込んだ話も聞いておくと、採用後にギャップが生じる心配が少なくなります。
まかないのメニューは? 食べるタイミングは?
まかないは、お店によって事情が異なる制度という話は先ほどもお伝えしましたが、メニューや食べるタイミングなどもお店によって異なります。
■どんなまかないが食べられる?
まかないは、その日ごとに異なるメニューが登場するお店もあれば、毎回同じようなメニューを出すというお店も。基本的にはお店の業態に近いものが提供されることが多いでしょう。
例えば、カレー店ならカレーが多いですし、イタリアンレストランではパスタやピザ、定食屋さんはご飯にお惣菜がまかないになるのが一般的です。
まかないはお店の残りものを使って一から作るケースもありますが、お店のメニューをそのまままかないとして提供することも多々あります。
この場合によくあるのが、従業員割引をして半額または3割負担などで提供するパターンです。また、急遽予約のキャンセルが入ったお店では、その食材を使ってまかないを作るということもあるようです。
■まかないを食べるタイミングは?
まかないは、シフトの休憩中に食べたり、仕事が終わった後に食べたりと、お店によってタイミングはさまざま。
ランチタイムやディナータイムは最も忙しい時間帯のため、いわゆる「アイドルタイム」に食べることが多いです。アイドルタイムは店の業態によって異なりますが、多くのレストランでは14:00~17:00の間をアイドルタイムとして食事や休憩の時間に当てているようです。
まかないはスタッフ全員で一斉に食べる場合もあれば、休憩に入ったタイミングで一人ひとり別々に食べるケースもあります。スタッフ全員で食べる場合は、スタッフ同士のコミュニケーションの場としても重宝されますね。
「まかない」から新メニュー誕生!? こんなメリットも
まかないはただスタッフのお腹を満たしてくれるだけではありません。まかないの存在が時にお店にいろいろなメリットを与えることもあります。具体的にまかないを導入することでどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
■若手調理スタッフの練習の場
まかないを作る担当は、若手、ベテラン関係なく調理スタッフが順番で回していくお店が多いでしょう。とくに若手スタッフが調理の腕を試す、練習をする場として利用しているお店も多く、若手スタッフが自分の料理の腕を磨くことのできる貴重な場となっています。
■看板メニューを生み出すことも
時としてまかないは、お店の看板メニューを生み出すこともあります。
いまや洋食店の定番メニューとして欠かせない「オムライス」、その元となったのは銀座にある『煉瓦亭』という洋食店のまかないでした。
また、ラーメン店の人気メニューであるつけ麺も、『大勝軒』のまかないが元になったと言われています。
これらはまかない飯が偶然メニューになった例ですが、あえてまかないをメニュー開発の場として利用するケースも。
試作品をまかないとして従業員に食べてもらい、感想を聞き、意見を取り入れながら商品をブラッシュアップしていきます。従業員にとってもメニュー開発に自分たちの意見が取り入れられることは嬉しく、お店への愛着が増し、一体感にもつながります。
このように、飲食店にとって「まかない」は、新たなメニュー誕生のきっかけにもなる大変貴重な存在といえるかもしれません。
■お店の料理への理解を深める
まかないは、調理スタッフだけでなく、ホールスタッフにとってもメリットがあります。
お店で提供されている料理と同じ料理を出している場合、お店の味を自分の舌で味わうことができます。
つまり、お客さんに味や使用している食材を聞かれたときも、スムーズに受け答えができるというわけです。お店への理解を深めるという面でも、大きな役割を担っています。
■従業員のモチベーション向上
忙しい時間を過ぎたあとに食べるまかないは、お腹も心も満たしてくれる存在。バイト継続のモチベーションになってくれます。
とくに調理スタッフにとっては、自分の料理の腕をまわりから評価してもらえる場としての意味合いも。作った料理に対する反応を直に聴けるため、スキル向上やモチベーションアップにつながります。
まかないの税務上の注意点
料理内容は余った食材を使うのが基本です。がんばっているスタッフに美味しいものを食べさせたいと思っても、まかないは税金もかかわってくることなので金額を度外視するわけにはいきません。
労働の対価として
通貨以外の商品や食事などを支給することを「現物給与」といい、まかないも無料で提供すると現物給与とみなされるからです。給与である以上、所得税・住民税の課税対象になります。つまり、まかないは有料か無料かで税法上の取り扱いが異なってくるのです。
次の条件を満たしていれば給与ではなく「福利厚生費」として処理することができるため、課税の対象になりません。
- 従業員が食事の価格(1か月あたりの食材や調味料などにかかる費用)の半額以上を負担している
- 事業主の負担額(上記の金額を差し引いた額)が1人あたり月額3,500円(税抜き)以下である
たとえば、従業員が10人で1か月あたりの食事の価格が50,000円の場合、従業員の負担を25,000円とすれば1の要件を満たします。残り25,000円を1人当たりにすれば2,500円で2の要件も満たしますから、課税はされないことになります。
スタッフのことを考えれば
無料にしてあげたいところですが、無料にすると本人の所得税と住民税が増えることになります。新人を採用する際は面接時にこのようなルールがあることをきちんと説明し、まかないを希望する人には食事代を給料から天引きする旨を伝え、了解を得ておく必要があります。
これは実例ですが
スタッフにうまいものを食べさせたいと金額を考慮せずにまかないを提供し続けた結果、税務調査で不正が発覚し、スタッフ10人分で約70万円も追徴課税された居酒屋があります。まかないは本人と事業主が負担する金額によって「福利厚生費」と「現物給与」に分かれることを理解しておくことが大切です。
まかない費用はどうやって集めたらいい?
従業員にまかない費用を払ってもらう上で、あらかじめやっておかなければならないのが「価格を設定しておく」ことです(原価の半分の価格くらい)。まかないメニュー表を作って「原価」と「従業員価格」を記載しておきましょう。
前記で「条件を満たせばまかない費用を福利厚生費として処理できる」とありましたが、まかないは従業員によって金額はまちまちで、計算がややこしくなるのでまかない費用はちゃんと徴収しておくことが店舗および従業員のためになります。
徴収する場合
食べる時に徴収する場合は、そのまま現金を預かって売上をたてましょう。店の方で「まかないノート」などを用意し、まかないの価格と従業員負担金や数量を把握しておき、後で経理処理します。
給与天引きの場合
徴収する場合と同様に店の方で価格と数を把握しておき、従業員にまかないを食べるたび専用ノートに記入してもらいサインをしてもらいます。1ヶ月分の合計を給与から天引きします。その時にまかない費用合計を給与として計上し、まかない手当として同額控除、従業員負担額を給与天引きにします。
※労働給与80,000円、1ヶ月のまかない費用5,000円、従業員負担2,500円の場合
80,000円+まかない給与5,000円=85,000円
85,000円-まかない控除5,000円-まかない自己負担金2,500円=77,500円
このような計算になります。税法上の観点でいえば「まかない給与」「まかない控除」「まかない自己負担金」がわかるように、給与明細に記入しておく必要があります。これをやっておかないと、税務調査で突っ込まれた時に不利な状況になります。