私たちが日々の生活の中で何気なく食べている食品。その一方で、大量の食品が「まだ食べられるのに」捨てられている現実があります。これが「食品ロス(フードロス)」と呼ばれる社会課題です。日本国内だけでも年間約522万トン(令和3年度推計・農林水産省)もの食べ物が廃棄されています。これは、国民一人あたりに換算すると、毎日お茶碗1杯分(約114g)を捨てている計算です。
では、その中でも「一番捨てられている食品」は何なのでしょうか?フードロスの実態に迫るとともに、私たちができることについても考えてみましょう。

フードロスの現場:家庭と事業系の2つの柱

食品ロスは大きく「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」に分けられます。事業系とは、スーパーやコンビニ、飲食店、食品工場などが廃棄する食品。家庭系は、一般の家庭で捨てられているものです。
農林水産省のデータによれば
日本のフードロスのうち、約275万トン(53%)が事業系、約247万トン(47%)が家庭系とされています。つまり、私たち一人ひとりの行動も、この問題に大きく関わっているのです。
一番捨てられている食品は「野菜・果物」

では、最も多く捨てられている食品は何かというと、統計や調査によると**「野菜・果物」**がトップに挙げられます。特に家庭から出る食品ロスの約4割が野菜・果物に関係しているとも言われています。
例えば
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傷んでしまったキャベツやトマト
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食べきれずに冷蔵庫の奥でしなびたレタス
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見た目が悪いという理由で捨てられるリンゴやバナナ
これらは、本来まだ食べられる状態であっても、廃棄されるケースが非常に多いのです。
また、加工前の段階で市場に出る前に捨てられる「規格外野菜」や「見た目が悪い果物」なども含めると、その量はさらに膨れ上がります。
捨てられる理由は?

なぜ野菜や果物が最も捨てられてしまうのでしょうか。その背景にはいくつかの理由があります。
- 鮮度が落ちやすい
野菜や果物は日持ちがしにくく、冷蔵保存していてもすぐにしなびたり腐敗したりします。買いすぎて食べきれないケースも多くあります。 - 見た目へのこだわり
消費者は「見た目がきれいなもの」を好む傾向があります。そのため、スーパーでは「傷がある」「形がいびつ」というだけで売れ残り、廃棄されてしまう商品も少なくありません。 - 家庭内での管理不足
冷蔵庫の中で食品の存在を忘れてしまい、気づいたら腐っていたという経験は多くの人にあるのではないでしょうか。賞味期限や消費期限を過度に気にすることも、ロスにつながる原因です。
食品ロスを減らすためにできること

このような現状に対して、私たち一人ひとりにできることもあります。以下は、身近にできる食品ロス削減の工夫です。
1. 買いすぎない
買い物前に冷蔵庫の中をチェックし、必要な分だけを買う「計画的な購入」を心がけましょう。
2. 食べきる工夫
「食べきれる量だけ作る」「余った料理は翌日に活用する」など、食材を無駄にしないための調理方法を工夫しましょう。
3. 保存方法を見直す

野菜や果物の正しい保存方法を知ることで、鮮度を長持ちさせることができます。例えば、葉物野菜は立てて保存する方が鮮度が保たれやすいといったコツがあります。
4. 「見切り品」や「規格外品」を積極的に選ぶ
スーパーで安く販売されている見切り品や、オンラインで買える規格外野菜の活用は、生産者や流通業者の廃棄削減にもつながります。
5. 賞味期限・消費期限の正しい理解
「賞味期限」は「おいしく食べられる期限」、「消費期限」は「安全に食べられる期限」です。賞味期限切れだからといってすぐに捨てるのではなく、状態を確認する習慣をつけましょう。
フードロス削減は「もったいない」の再発見

フードロスの問題は、地球環境、経済、倫理のすべてに関わる複雑な課題です。まだ食べられる食品を捨てるという行為は、「食べること」への感謝や、「資源の有限性」に対する意識の欠如とつながっています。
「もったいない」という日本独自の言葉には、物を大切にしようという精神が込められています。この言葉をもう一度見直し、行動に移すことが、食品ロスを減らす第一歩です。
最後に

「一番捨てられている食品は?」という問いの答えが「野菜や果物」であると知ったとき、それを驚きとして受け止めるか、「自分もやっているかもしれない」と反省するかは人それぞれです。
ですが、誰もができる小さな行動が積み重なれば、確実にフードロスの削減につながっていきます。冷蔵庫の中身を見直すこと、買い物リストを作ること、見切り品を選ぶこと。そのすべてが「もったいない」を減らし、未来をつくる一歩となるのです。
