食の安全を守るうえで最も大事なことは、微生物をコントロールすることです。
微生物はどこにでもいて、熱に強いものや低温でも増えるものなど多種多様です。
そのため、微生物コントロールにはさまざまな手段の組み合わせが必要です。
『安全』とはどんなこと?
- 食品の安全とは、食品に危害の要因が存在することで生じる人の健康への悪影響が起きる確率と影響の程度(リスク)を科学的、客観的に分析、評価して得られるものです。
- リスクが小さければ(ゼロに近ければ)安全性は高いと評価されます。逆にリスクが大きければ(1に近ければ)安全性は低いと評価されます。
- 食品について100%の安全はありません。社会的に許容できる範囲に抑えられている状態にあることが安全といえます。
『安心』とはどんなこと?
- 安心とは、心に不安が少ないかない状態といえ、ある程度の不確実性を感じるとき(何が起きるか、起きているかわからない、情報が不足と感じるとき)に不安を感じます。
- 食品を作る人が安全に配慮して作っても、そのことが消費者に伝わらなければ、消費者に安心と感じてもらえない場合があります。
- このように、安心は心理的、主観的な問題で、ある状態を安心と感じるかどうかは個人差があります。
食品に対する安心は、常日頃の行政の的確な対応と食品等事業者の誠実で真剣な取組みにより信頼感が生まれることと、安全に関する適切な情報提供がなされることがあいまって、生み出されるものといえます。
『微生物』はあらゆるところに
微生物は土壌中、空気中、調理台の上、エアコン、人の手指など至るところに存在しており、そこから食べ物に付着します。また、野菜や卵など加工される前の食材にも、微生物は付着しています。
食品
小さくて活発な生き物、微生物というものがいます。
微生物にはいろいろな種類があり、食品、ヨーグルトなどの製造に関わる良い菌などがあります。
その一方で、食品を腐らせてしまう微生物も存在します。
でも、こういった微生物の多くは有害ではありません。
注目すべきは
見た目やにおいを変えることなく危険を及ぼす微生物があり、注意しなければいけません。
これらを病原微生物と呼んでいます。
これらは腹痛や嘔吐や下痢や発熱、そして、時には死をもたらすことがあります。
こういった微生物は食品中で最適な温度、時間、水分が与えられると急速に増殖します。
そうはいっても、病原微生物については予防が可能であり、弱いものなのです。
それはシンプルな5つの方法で制御することができます。
1.「清潔に保つ」
衛生的な手洗いを必要なタイミングで行いましょう。まな板・包丁などの調理器具の洗浄・消毒を行うとともに、虫やネズミから調理場を守りましょう。
2.「生の食品と加熱済み食品とを分ける」
生の肉や魚は他の食材と分けて取り扱いましょう。
まな板・包丁などの調理器具は加熱済み食品用など用途別の区別を!
3.「よく加熱する」
加熱が必要な食品はよく加熱しましょう
調理済み食品もよく再加熱を!!
4.「安全な温度に保つ」
調理済み食品を室温に二時間以上放置しない
温かいものはあたたかい状態で。冷たいものは冷たい状態(冷却)で。
5.「安全な水と原材料を使用する」
野菜や果物など生で食べる食材をよく洗いましょう。
消費期限をすぎたものは食べないようにしましょう。
洗浄剤
油脂やデンプン、たん白質などの汚れを落とします。
界面活性剤やアルカリ剤などがあります。界面活性剤は一般で市販されている洗剤にも含まれています。除菌機能はありません。
除菌剤
製造環境から微生物(菌)を除去します。
一般的には塩素系漂白剤としておなじみの次亜塩素酸ナトリウムが知られていますが、他にも加熱に強い菌に効果のあるタイプなど用途や原因に合わせていろいろな種類があります。
汚れを洗い落していないと、汚れの中の菌を除菌することができません。
洗浄除菌剤洗浄と除菌の機能を兼ね備えたもの。洗浄工程と除菌工程の間の水洗が不要です。除菌剤と同様に加熱に強い菌に対応したタイプもあります。
いずれも食品添加物ではないので、食品に直接使うことができません。また、食品に入らないよう使用後には完全に洗い流す必要があります。
おいしさを保ちつつ、食品中で微生物を増やさない工夫
微生物はあらゆるところに存在するので、どんなに食品に微生物をつけないようにがんばっも、完全に除菌することは難しいのが実情です。
そこで、微生物を「やっつける」「増やさない」対策が必要となります。
「やっつける」には、加熱調理が主な手段となります。しかし、通常の加熱調理では死滅しない耐熱性菌がいますし、やっつけることを主目的として加熱しすぎるとおいしさを損なってしまいます。
「増やさない」対策として
水分を減らす、お酢などの酸を使う(微生物は酸性を嫌います)、保存料などの食品添加物を使う、脱酸素剤を使うなどの手段があります。
これらのうちどれか一つの手段に頼ろうとすると、味・食感などに悪影響を及ぼして、やはりおいしくなくなってしまいます。例えば、水分を減らしてパサパサしてしまったり、酸味が合わない食品だってあります。
食品を日持ちさせる食品添加物ってどんなものがあるの?
食品中で微生物が増えないように内から守るものとして、保存料や日持向上剤、pH調整剤などの食品添加物が利用されます。
というのも、食品の中に入れることができるものは、食品または食品添加物でないといけないと決められていますので、必然的に食品添加物が使われることになります。
同じ食品添加物で、同じ微生物コントロール目的なのに、保存料や日持向上剤、pH調整剤などと名称が異なるのは、食品表示関連の法令や自主基準の定めによります。
食品の購入
■ 肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮な物を購入しましょう。
■表示のある食品は、消費期限などを確認し、購入しましょう。
■購入した食品は、肉汁や魚などの水分がもれないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包み、持ち帰りましょう。
■特に、生鮮食品などのように冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品の購入は、買い物の最後にし、購入したら寄り道せず、まっすぐ持ち帰るようにしましょう。
家庭での保存
■冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
■冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意しましょう。めやすは、7割程度です。
■冷蔵庫は10度C以下、冷凍庫は、-15度C以下に維持することがめやすです。温度計を使って温度を計ると、より庫内温度の管理が正確になります。細菌の多くは、10度Cでは増殖がゆっくりとなり、-15度Cでは増殖が停止しています。しかし、細菌が死ぬわけではありません。早めに使いきるようにしましょう。
■肉や魚などは、ビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫の中の他の食品に肉汁など がかからないようにしましょう。
■肉、魚、卵などを取り扱う時は、取り扱う前と後に必ず手指を洗いましょう。せっけんを使い洗った後、流水で十分に洗い流すことが大切です。簡単なことですが、細菌汚染を防ぐ良い方法です。
■食品を流し台の下に保存する場合は、水漏れなどに注意しましょう。また、直接床に置いたりしてはいけません。
下準備
■台所を見渡してみましょう。ゴミは捨ててありますか? タオルやふきんは清潔なものと交換し てありますか? せっけんは用意してありますか? 調理台の上は かたづけて広く使えるようになっていますか? もう一度、チェックをしましょう。
■井戸水を使用している家庭では、水質に十分注意してください。
■手を洗いましょう。
■生の肉、魚、卵を取り扱った後には、また、手を洗いましょう。途中で動物 に触ったり、トイレに行ったり、おむつを交換したり、鼻をかんだりした後 の手洗いも大切です。
■肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。
■生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です。包丁やまな板は、肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて、使い分けるとさらに安全です。
■冷凍食品など凍結している食品を調理台に放置したまま解凍するのはやめましょう。室温で解凍すると、食中毒菌が増える場合があります。解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行いましょう。また、水を使って解凍する場合には、気密性の容器に入れ、流水を使います。
■ラップしてある野菜やカット野菜もよく洗いましょう。
■包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは、使った後すぐに、洗剤と流水で良く洗いましょう。ふきんのよごれがひどい時には、清潔なものと交換しましょう。漂白剤に1晩つけ込むと消毒効果があります。包丁、食器、まな板などは、洗った後、熱湯をかけたりすると消毒効果があります。たわしやスポンジは、煮沸すればなお確かです。
■料理に使う分だけ解凍し、解凍が終わったらすぐ調理しましょう。解凍した食品をやっぱり使わないからといって、冷凍や解凍を繰り返すのは危険です。冷凍や解凍を繰り返すと食中毒菌が増殖したりする場合もあります。