「韓国で『食べ放題(무한리필/뷔페)』が流行→短期間で閉店が相次いだ理由と現状」について、
背景・要因・具体例・現在の業界の姿・今後の示唆を盛り込んだ詳しい解説です

- 1) 流行の経緯
- 2) 一旦の衰退(COVIDでの打撃)
- 3) 2022〜2024年の“復活”とその性質
- 4) 「短期間で閉店」が続いた主な理由(詳細)
- 5) 業界の“二つの潮流”—— 生き残る店、倒れる店
- 6) 事例(代表的な動き)
- 7) 事業者が取れる対策(実務的観点)
- 8) 消費者側の視点と今後の見通し
- 9) 要点まとめ
1) 流行の経緯

韓国での「食べ放題」は、従来はホテルや大手デパートの上位サービスに限られていたものが、2000年代〜2010年代にかけて中価格帯の外食チェーンや専門業態(サラダ/寿司/肉系など)に拡大しました。特に若年層の「コスパ志向」と、SNSでの“食べ歩き・大量消費映え”が相まって、手頃な価格の食べ放題ブランド(무한리필系)や時間制限型のビュッフェが急速に増えました。大手チェーンの展開・フランチャイズ化も業態拡大に拍車をかけました。
2) 一旦の衰退(COVIDでの打撃)

— なぜ“すぐ閉店”が増えたのか
2020年以降の新型コロナ(感染対策)で「ビュッフェ」は感染リスクが高い業態と見なされ、営業制限や休業要請の対象となりました。自己取り分け形式・共用トング・密になりやすい空間が敬遠されたため、コロナ期に多くのチェーンや個店が閉店を余儀なくされました。大型ビュッフェはとくに固定費(家賃・人件費)と在庫ロスの負担が重く、撤退が相次ぎました。結果として、一度縮小した業界が「再開→再拡大」を目指す過程で“出店→撤退”が短期間に繰り返される構図が生まれました。
3) 2022〜2024年の“復活”とその性質

社会的制限が緩和されると、食べ放題は「コスパの良い外食」として再評価されました。特に20代〜30代の若者は外食頻度が高く、安価で満足感の得られる業態を支持したため、売上回復や一部では過去以上の集客を見せた業態もありました。国内決済データなどでは、ビュッフェ業界の売上が飲食業全体を上回る伸びを示した時期も報告されています。
しかし、この「復活」は二極化の性格を持ちます。手頃な価格で量を売るローコスト業態は価格競争・原価圧迫で脆弱、対して“付加価値”を提供するプレミアムビュッフェやブランド化に成功したチェーンは堅調に成長しました。
4) 「短期間で閉店」が続いた主な理由(詳細)

以下は短期間で閉店が相次ぐ根本的な要因です。複合的に作用しています。
(1) 利幅の薄さと原材料費上昇
食べ放題は「客単価を抑えつつ大量来店で回す」モデルのため、原材料費が上昇すると利益が一気に圧迫されます。世界的な食材価格上昇や輸入コスト増(燃料・物流コスト)も影響しました。
(2) 人件費上昇と人手不足
最低賃金の上昇や労働市場の逼迫により、調理・補充・清掃などの現場人件費が上昇。特に人手が多く必要なビュッフェ業態は影響が大きいです。研究や報道でも最低賃金上昇が小企業・個人事業に閉店圧力を与えたと指摘されています。
(3) 在庫ロス(フードロス)と衛生管理コスト
大量調理・大量提供の性質上、売れ残りによる廃棄が発生しやすい。これに対して衛生基準や消費者の食品安全意識の高まりが重なり、管理コストや廃棄コストが増え、薄利業態にとって致命的になります。
(4) 市場の過飽和と出店スピード
一時的なブームに乗って短期間に出店が集中すると、需要を奪い合う結果になり、立地やオペレーションが不十分な店舗は淘汰されやすい。SNSでの拡散力が高い分、初動で人気が出ても“二度目の来店”を生まなければ継続できません。
(5) 消費者行動の分散化(単独外食・デリバリー)
単身世帯の増加やデリバリー・テイクアウトの普及により、「複数人で長時間滞在して食べる」需要が相対的に減少。ビュッフェは複数人の来店や滞在時間が前提のため、需要に齟齬が生じます。
(6) 金融環境(高金利)と家賃負担
高金利で資金繰りが厳しくなり、テナント料(家賃)も負担。貸借対照上の余力がない小規模オーナーは短期間で撤退する傾向があります。2024年〜以降、韓国全体で飲食店・小売店の閉店が急増している統計報道も出ています。
5) 業界の“二つの潮流”—— 生き残る店、倒れる店

現在の韓国の食べ放題業界は大きく二分されています。
差別化で成功する層:食材の質(鮮魚や高級肉)、“ライブキッチン”や作りたて提供、子連れ対応やプレミアム体験(ドリンクバーの充実・デザートの高品質化)で単価を上げることで利益を確保する店。ブランディングやチェーン化に成功した事例は拡大しています。
価格競争で苦しむ層:単価を下げて量で勝負するニューギニーズ型(무한리필系)の一部は原価高・人件費高で耐えられず短期閉店が続く。特に立地が悪かったり、サービスが画一的な小規模店は淘汰されやすい。
6) 事例(代表的な動き)

大手チェーンの縮小・撤退:コロナ前後で大手がビュッフェ業態を縮小・撤退した事例(Olbaan、Season’s Table等)が報じられ、業態の脆弱性が示されました。
成功例:Ashley Queens のように、価格帯や業態を工夫して多店舗展開で成功した例もあります。
7) 事業者が取れる対策(実務的観点)

メニュー設計の見直し:高原価メニュー(刺身・高級肉)を限定提供し、その他はコスト低めの副菜でバランスを取る。
時間制・人数制の運用:回転率を上げ、個人向け単価を確保する(例:90分制/追加料金で延長)。
IT・自動化投資:発注最適化・在庫管理で廃棄削減、セルフオーダーで人手コスト削減。
サブスクリプションや平日限定プラン:安定集客と単価向上。
衛生・安心訴求:コロナ後の不安を取り除く対策(トングの頻繁交換、個人パッケージ化)で再来店率を上げる。
8) 消費者側の視点と今後の見通し

消費者は「コスパ」と「安全・質」を同時に求める傾向が強まっています。インフレが続く局面では手頃な外食は根強い需要がある一方で、「量」だけではリピートが続かないため、店舗側は“満足度の質”も高める必要があります。統計的には2024〜2025にかけて飲食店の閉店数が増えており、ビュッフェも例外ではありませんが、質で差別化した業態は生き残っています。
9) 要点まとめ

ビュッフェ業態は「コスパ重視の若年層需要」で一度ブームに。
コロナで大打撃→再開後は一部で回復したが、原材料費・人件費・家賃・金利上昇で脆弱な店舗は短期間で閉店。
成功するのは「差別化(品質・体験)」によって単価を上げられる店。価格だけで勝負する店は厳しい。
