ごぼうの原産地は、ユーラシア大陸北部と言われています。しかし、ごぼうを野菜として食べるのは日本独自のようで、初めてごぼうを利用したと考えられている中国では、現在でも主に薬草として用いられています。
日本への渡来の時期は
到来の時期は定かではないものの、平安時代の書物などで出てくることから、今から1200年程前には野菜としての栽培が始められていたと考えられます。
日本人は、ごぼうの豊かな香りとシャキシャキとした食感を好みますが、日本以外の国では、木の根を食べているように思われてしまうそうです。戦時中に、連合軍の捕虜にごぼうを食べさせたところ、虐待にあったと問題になった話や江戸幕末にドイツ人医師シーボルトがオランダに持ち帰ったものの、残念ながら普及しなかったという話もあります。
お正月料理にごぼうは欠かせない野菜
関西地方のおせち料理では「黒豆、数の子、たたき牛蒡」が祝い肴、三つ肴と言われているほどです。お正月のごぼうに込められた意味は、地面にしっかり根を張って生きていけるようにということだそうです。
地中1mまで伸びるごぼうの手作業による収穫作業は重労働です。
今は、機械で畝の土を切り崩し、ごぼうの根を浮き上がらせてから収穫する方法などがとられています。マラソンなどで何人もの選手を一気に抜き去ることを“ごぼう抜き”と言います。
この語源は
(1)ごぼうは長い割りにまっすぐなので簡単に抜くことができるから
(2)ごぼうを抜く作業は大変であり、抜きにくいものを一気に抜くから、と全く正反対の説があります。
栽培している土壌により、また、ごぼうが長いか短いかでも変わりますが、一般的にはごぼうは抜きにくいものと考えられ、(2)の説が有力のようです。
栄 養
ごぼうの栄養成分で特に注目されるのは、食物繊維です。
ごぼうには、水溶性食物繊維であるイヌリン、不溶性食物繊維であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンがたっぷり含まれています。
これら食物繊維は、腸のぜん動運動を促進するので、便秘に大変効能があります。また、これら繊維質は消化吸収されずに排泄される際、腸内の発ガン物質など有害物質を吸収してくれるので大腸がん予防にも効果があると言われています。
最近の研究報告では、食物繊維のうちのリグニンに抗菌作用があり、がん細胞発生を抑制する効果があることもわかってきました。
その他、ごぼうにはポリフェノールも含まれています。あく抜きのため水につけておくと、水に色がつきますが、これはポリフェノールが溶け出したためです。
選び方
1、直径が10円玉ほど(1.5~2.0cm)の太すぎず、ひび割れのしていないすらりと伸びたものを選びましょう。
2、しわが寄っていたり、ひげの多いものは、古い可能性がありますので注意しましょう。
保存方法
また、あく抜きに長く水にさらすこともお勧めできません。水溶性の栄養分が溶け出してしまいます。さっと酢水につけると良いでしょう。
食物繊維
ごぼう100g当たりには水溶性食物繊維が2.3g、不溶性食物繊維が3.4gとどちらも豊富に含まれています。不溶性食物繊維は腸の中で水分を吸い込んで膨らみ、腸を刺激することで便通を促して便秘の解消に役立ちます。また、有害物質を排出する効果もあります。水溶性食物繊維は、腸内環境を整える効果や血糖値の急激な上昇を抑える、コレステロールの吸収を抑制する効果が期待できます。食物繊維は噛み応えがあるので満腹感を感じやすく、しかも低カロリーなので肥満予防にも効果的。糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防にも効果が期待できます。
イヌリン
イヌリンは水溶性の食物繊維の一種です。胃に入るとゼリー状になり糖を包み込んで小腸で糖を吸収しにくくする働きがあります。血糖値の上昇を緩やかにする効果があることから糖尿病の予防に効果があると言われています。また、善玉菌を増やして老廃物の排出を促す効果があるので、腸内環境を整える効果もあります。
リグニン
不溶性食物繊維の一種であるリグニンは、腸内の発がん性物質を排出する働きがあり、大腸がん予防に効果が期待できると言われています。
クロロゲン酸
クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、優れた抗酸化作用があります。血糖値の上昇を抑える効果や脂肪の蓄積を抑える効果があると言われています。抗がん作用も期待されている成分です。
マグネシウム
マグネシウムはリンやカルシウムと共に働き、歯や骨を作るのに必要なミネラルです。また、カルシウムと協力して筋肉の働きを調整する役割もあります。さらに、体内の酵素の働きを助けてエネルギー生産にも関わっています。
ごぼうの語源・由来
ごぼうは、古く薬草として中国から伝来したもので、漢語の「牛蒡」が語源。
ごぼうの歴史的仮名遣いは「ゴバウ」である。
古く、日本ではごぼうを「キタキス」「ウマフフキ(ウマフブキ)」ともいった。
漢字の「牛蒡」の「牛」を「ゴ」と読むのは、呉音「グ」の慣用音「ゴ」で、中国では草木の大きなものに「牛」が冠される。
「牛蒡」の「蒡」は、ごぼうに似た草の名前に使われた漢字で、それらの植物より大きいことから「牛」が冠され「牛蒡」になった。
西洋では、ごぼうの若葉をサラダに使うことはあるが、根を食材とするのは日本と韓国くらいといわれる。
太平洋戦争中、苦労して採ってきたごぼうをアメリカ人捕虜に食べさせたところ、捕虜は木の根を食べさせられたと勘違いしたという話もある。