β-カロテンの多さは緑黄色野菜の中でもトップクラスで、カロテンの名は英語の「キャロット」に由来しています。皮の近くに多く含まれているので、皮ごといただくか、薄くむいて食べましょう。
ニンジンには江戸時代に伝わった東洋系と明治以降に入ってきた西洋系があり、現在、主に流通しているオレンジ色のニンジンは、西洋種。赤く細長い「金時にんじん」は数少ない東洋系で、今でも正月料理の彩りに欠かせない食材のひとつです。他にも紫や白、黄色や10cmほどの小型種など、さまざまな品種があります。
人参の栄養素と効能
人参には江戸時代に中国から来た東洋種と、明治時代に日本に来た西洋種があります。なお東洋種は、お正月料理などに使われる金時人参のことです。
今回は現在主流となっている西洋種についてお話いたしますね。
ルテイン
ルテインは、カロテノイドの1種です。
ルテイン以外のカロテノイドでは、βーカロテンが代表的です。
ルテインは人参をはじめとする緑黄色野菜に豊富に含まれます。
- 抗酸化作用
- ブルーライト・紫外線から目を守る
- 白内障の予防・改善
- 「見え」の改善
ルテインは、もともと人間の水晶体などに含まれる成分でもあります。
ルテインの適度な摂取は、目の健康の維持に役立つと指摘されています。
人参に含まれるルテインの含有量について、公的機関のデータは見つけられませんでした。
一説では、人参のルテインの含有量は、100gあたり0.24mgとされています。
免疫力の向上
人参には、免疫力アップも期待できます。
免役力アップに役立つ主な栄養素は、βーカロテンです。
βーカロテンから作られるビタミンAには、強い抗酸化作用があります。
具体的には、ビタミンAは活性酸素による免疫細胞の老化を防ぎます。
またビタミンAには、
- 目
- 鼻
- 喉
などの粘膜を健やかに保つ作用もあります。
目・鼻・喉は、ウイルスなどの体内への進入口です。
ビタミンAによって粘膜が正常に保たれることで、ウイルスなどの異物が体内に侵入しにくくなります。
目や肌の健康を保つβ-カロテン
β-カロテンは体内でビタミンAに変換される栄養素で、目を乾燥から守り、視力を調整します。また抗酸化作用が強く、肌の老化や動脈硬化の予防効果を期待されている栄養素でもあります。
カロテンは人参の英語名「キャロット」が由来となるほど、人参にはβ-カロテンが豊富なのです。
含有量mg(/100gあたり) | |
にんじん / 根 / 皮つき / 生 | 6900 |
にんじん / 根 / 皮つき / ゆで | 6900 |
にんじん / 根 / 皮なし / 生 | 6700 |
にんじん / 根 / 皮なし / ゆで | 7200 |
人参には、目を健やかに保つ効果があります。
目の健康に役立つ栄養素は、βーカロテン・ルテインなどが代表的です。
βーカロテンは、体内でビタミンAに変換されます。
ビタミンAは、網膜をサポートする成分です。
具体的には、眼精疲労や夜盲症を予防・改善する効果が期待できます。
ルテインには強い抗酸化作用があり、視神経を活性酸素から守る作用があります。
さらにルテインは、視界のコントラストを調整する作用もあります。
具体的には、クリアな視界を保つのに役立つ栄養素です。
もともと体内に存在する栄養素ですが、加齢などによって次第に減少します。
ルテインが不足すると、白内障などのリスクが上がると考えられています。
白内障などのリスクを下げるには、ルテインが豊富な人参などを定期的に摂取することが大切です。
高血圧を予防してくれるカリウム
カリウムは体の中の塩分や水分のバランスを保つ栄養素です。
とりすぎた塩分を体から排出してくれるので、むくみの改善や血圧を下げる効果があります。
含有量mg(/100gあたり) | |
にんじん / 根 / 皮つき / 生 | 300 |
にんじん / 根 / 皮つき / ゆで | 270 |
にんじん / 根 / 皮なし / 生 | 270 |
にんじん / 根 / 皮なし / ゆで | 240 |
整腸作用のある食物繊維
食物繊維には、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維があり、人参にはどちらも含まれています。不溶性食物繊維は、便通を整え便秘解消に役立つ栄養素です。
また、水溶性食物繊維は脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して体の外に排出する働きがあるため、生活習慣病の予防・改善効果が期待できます。
- 善玉菌を増やして腸内環境を整える
- 便秘を解消する
- 糖質・脂質の腸内での吸収を穏やかにする
皮の栄養素
皮に含まれる主な栄養素は中身の人参とほとんど変わりありません。しかし、体に有用な栄養素であるβ-カロテンや食物繊維は、中身よりも皮に多く含まれている、という特徴があります。
もしも皮つきで食べることに抵抗がなければ、丸ごと人参を食べると余すことなく栄養を摂取できてオススメです。
葉っぱの栄養素
人参の葉には、普段私たちが食べている根の部分と比べて、カリウムや鉄、ビタミンCが多く含まれています。一方で、根の部分に比べるとβ-カロテンは少ないので、葉も根も上手にとり入れていきたいですね。
人参の葉は、小松菜やほうれん草などと同じ葉物のイメージです。炒め物やパスタの具として食べると美味しいですので、お店などで見かけたらぜひお試しください。
動脈硬化の予防
人参には、動脈硬化の予防効果が期待できます。
動脈硬化予防に役立つ栄養素は、βーカロテンです。
βーカロテンには、体内の活性酸素を取り除く「抗酸化作用」があります。
活性酸素は、血管・細胞などをサビさせる物質です。
活性酸素は、
- 動脈硬化
- がん
- 老化
などの原因物質でもあります。
βーカロテンは、活性酸素から血管を守ることで、動脈硬化のリスクを下げます。
生と加熱、より栄養成分を逃さない食べ方は?
人参は、生のままが1番栄養成分を逃さず食べられます。なぜなら人参を茹でると、カリウムやビタミンCなどの水溶性の栄養素がお湯に溶けだし減ってしまうからです。
しかし、人参は茹でるとやわらかくなり多く食べられようになるので、生で食べるのがあまり好きでない方は、無理せず加熱して食べるとよいでしょう。
油で炒めるとどうか
人参は油で炒めることで、生の状態よりもβ-カロテンが約40%も増えます。β-カロテンは油と相性がよいので、一緒に調理することで吸収力が上昇するのです。また油で炒めるだけでなく、油の入ったドレッシングと一緒に食べるとβ-カロテンの吸収力はアップします。
β-カロテンを積極的にとりたい方は、人参を使った炒め物やドレッシングをかけた人参サラダにしてもよいですね。
人参を毎日食べると、お肌に効果的って本当?
人参には抗酸化作用のあるβカロテンやビタミンCが含まれているため、日焼けやシミ予防によって肌をきれいにする効果があるといえます。
また多くはないですが、人参には肌の血色をよくする鉄や皮膚トラブルを改善する亜鉛などのミネラルも含まれるので、美肌に導いてくれるかもしれません。
食べ過ぎるとどうか
結論からいいますと、人参は食べ過ぎても大きな問題はありません。
人参にはβ-カロテンが多く含まれ、β-カロテンは体内でビタミンAに変わります。実はビタミンAをとりすぎると、肝機能などに異常をきたす恐れがあるのです。
ただし、β-カロテンは体内にビタミンAが充分に存在する時は、ビタミンAには変換されないのです。つまり、人参を食べ過ぎても健康に大きな害はないといえるでしょう。
しかし、どのような食べ物でも1つに偏るのではなく、さまざまな食材を食べる方が健康によいです。バランスよく食べることが大切ですね。
美味しい人参の選び方
美味しい人参の選び方のポイントをご紹介します。
- 色が濃く鮮やか
- 艶がある
- 先が細くない
- 表皮がなめらかでキズがない
- 切り口は緑色・小さい
基本的には、皮に艶があって色の濃いものを選びましょう。
品種にもよりますが、先っぽが細くないもののほうが美味しいとされています。
切り口も大切なポイントです。
切り口が緑っぽい場合は、鮮度が高いと判断できます。
反対に切り口が茶色っぽいものは、収穫から時間が経っている可能性があります。
また、切り口の芯の部分が細いにんじんは、繊維が柔らかいため、食べやすいとされています。
栄養満点!にんじんが主役のレシピ
それでは、人参をたっぷり使ったメインのおかずにもなるレシピをご紹介いたします。
このレシピでは油を使って調理することで、人参に含まれるβ-カロテンの吸収力がアップします。また卵やひき肉を使うことで、人参にあまり含まれていないたんぱく質を補う効果も。
たんぱく質は筋肉や皮膚を構成する栄養素です。
人参たっぷりのひき肉入りオムレツ
【材料】~2人分~
・人参 1本
・合い挽き肉 100g
・卵 3個
・牛乳 大さじ3
・油 大さじ1
・塩(卵用) 少々
・塩(具用) 小さじ1/2
・こしょう 少々
・ケチャップ 適量
【作り方】
①人参は千切りにし、卵と牛乳をよく混ぜて塩を少々加えておく
②フライパンで合い挽き肉を炒め、油が出てきたら人参を入れてさらに炒める
③人参がやわらかくなったら塩・こしょうで味付けしてお皿に移す
④キッチンペーパーできれいに拭いたフライパンに油をひき、②を入れ半熟になったら、③を入れて形を整える
⑤火が通ったらお皿に移して、ケチャップをかけたら完成
人参ポタージュ
栄養が豊富な皮ごと人参をいただけるポタージュです。
炒める・煮込むの2段階を踏む点がポイントです。
人参のβカロテンは脂溶性のため、油で炒めることで吸収率がアップします。
一方、カリウムは水溶性のため煮汁に逃げ出しやすい性質があります。
ポタージュなら煮汁ごといただくため、逃げ出した栄養素も余さず摂取できます。
【材料】
・人参 150g
・玉ねぎ 1/8個
・サラダ油 大1
・水 400ml
・牛乳 200ml
・塩 少々
・ドライパセリ少々
【作り方】
①人参は皮付きのまま水洗いし、厚さ5mmの半月切りにする
②玉ねぎは縦薄切りにする
③鍋にサラダ油と玉ネギを入れて火にかけ、しんなりするまで炒める
④人参を加えて水を注ぎ、鍋に蓋をして15分蒸し煮にする
⑤④の粗熱が取れたらミキサーにかけ、網に通して鍋に戻し入れる
⑥⑤に牛乳を加えて煮立てないように温める
⑦塩で味を調えて器に注ぎ、ドライパセリを振る
人参しりしり
しりしりとは、人参を細切りして油で炒めた料理です。
油で炒めることで、脂溶性のβ‐カロテンの吸収率アップが期待できます。
【材料】
・人参 150g
・溶き卵 (Mサイズ) 1/8個
・(A)料理酒 大1
・(A)しょうゆ 400ml
・(A)みりん 200ml
・(A)砂糖 少々
・(A)顆粒和風だし 少々
・ごま油 小1
【作り方】
①人参は千切りにする
②中火で熱したフライパンにごま油をひき、人参を入れてしんなりするまで炒める
③(A)を入れて中火で炒める
④溶き卵を回し入れて卵に火が通るまで炒める
⑤お皿に盛り付け、白いりごま(分量外)を散らす