野沢菜とはどんな野菜かご存じですか?漬物としていただくことの多い野沢菜ですが、詳しくは知らないという人も多いのではないでしょうか。
歴史・由来
寒さが厳しい県内は、冬になると田畑から青ものはひとつもとれなくなるため、晩秋になると大量に保存用の漬物を仕込んだ。
菜類の漬物のことを「お葉漬け」といい、「野沢菜」「稲核菜」「源助かぶ菜」「木曽菜」などが使われる。
そのなかでも「野沢菜漬」は、県を代表する2大漬物のひとつであり、信州の冬には欠かせない食材となっている。
地元では、ふるさとの味、おふくろの味として親しまれており、地域に深く根付いている。野沢菜は、県の北東にある野沢温泉村の住職が宝暦6年に京都から天王寺かぶを持ち帰り植えたのが始まりといわれている。
味は美味しいと好評で、地名の付いた「野沢菜」として広まっていった。
野沢菜は9月に種を撒き、大きなもので1メートルにもなる。収穫は11月に迎えるが、野沢菜は霜が当たると甘く柔らかくなるため、寒くなるのを待ってから取り入れ作業が行われる。
その後、北信州の風物詩ともいわれるお菜洗いが始まり、丁寧に1枚ずつきれいに洗って一石桶といわれる大きな桶で大量の野沢菜を漬ける。漬け方は色々あるが、各地域で漬け方が工夫されている。
野沢菜とは
野沢菜はアブラナ科アブラナ属の漬け菜の一種で、名前の由来は長野県の野沢温泉村で作られてきたことから名付けられたとされています。別名「信州菜」とも呼ばれています。
野沢菜は長野県の特産であり「野沢菜漬け」の原料です。
野沢菜漬けは日本三大漬物の一つとも言われており、新付けと古漬けがあります。新漬けは浅漬けのことで、漬け汁に数日漬け込んだもので仕上がりは綺麗な緑色をしています。
一般的によく売られている野沢菜漬けは新漬けです。また、べっ甲色した野沢菜漬けのことを古漬けと呼んでいます。
野沢菜の特徴
野沢菜は成長すると、大きいものだと1m程の丈にまで成長するのが特徴です。葉柄の出方はカブやダイコンと同じように、根元から放射状に葉柄を伸ばし成長します
野沢菜漬けとして漬物用に使用されるのは、葉柄の部分だけです。根の部分は残して収穫されますが、残った根の部分は翌春に新しい芽が伸びてきて「とうたち菜」として食されています。
野沢菜の旬と産地
野沢菜の主な産地は長野県です。長野県では10月下旬頃から収穫が始まり、11月下旬頃まで収穫が行われています。
野沢菜とその他の葉物野菜の違い
野沢菜と同じく、葉を食べる野菜であるほうれん草や小松菜との違い
ほうれん草はヒユ科であり、アブラナ科の野沢菜や小松菜とは系統が異なります。
ほうれん草と野沢菜・小松菜の見た目はよく似ていますが、ほうれん草は茎の根元部分が赤みを帯びていることで見分けられます。
生の葉に含まれる栄養素を比較すると、カルシウムや鉄が最も多いのは小松菜で、β-カロテンやカリウムが豊富なのはほうれん草です。
野沢菜は、3種類のなかで最も多くのビタミンCを含んでいます。一方で、鉄の含有量は少なく、小松菜の3分の1程度しか含まれていません。アンチエイジングや美容にも効果的なビタミンCを効率よく摂りたいときは、野沢菜がおすすめです。
野沢菜の本漬けと新漬けの違い
野沢菜漬けは、漬け込み方によって本漬けと新漬けの2種類に分けられます。
本漬け
本漬けの野沢菜は、1ヶ月~2ヶ月程度じっくりと漬け込んだもので、アメ色をしています。酸味が強く芳醇な味わいが特徴。発酵熟成が進んでいるため、乳酸菌を多く摂りたいときにもおすすめです。
新漬け
新漬けは、1週間~2週間程度漬けた浅漬けタイプの野沢菜漬けです。本漬けと比べて青々とした緑色をしていて、シャキシャキした茎の食感と程よい酸味を楽しめます。
野沢菜の効果・効能
野沢菜に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを紹介します。
免疫力をアップしてアレルギーや感染症を予防
野沢菜の葉と茎から抽出した成分に、免疫を活発にする作用があることが、マウスを使った実験で発見されました。
免疫は、アレルギーや感染症の原因となる菌やウイルスから体を守る大切な機能です。野沢菜にはビタミンCなど免疫力向上に効果的とされる栄養素も豊富で、風邪などが流行する季節に積極的に食べておきたい野菜と言えます。
ビタミンCは漬け物からも多く摂れる
野沢菜のビタミンC含有量は、葉物野菜の中でもトップクラスの高さです。ビタミンCには、老化やがんの原因となる活性酸素を取り除く抗酸化作用や、鉄の吸収を助ける作用などがあります。シミ・しわなどの肌悩みにも有効な美容成分でもあります。
生の野沢菜100gあたり41mg、野沢菜漬け(塩漬け)100gあたり27mgのビタミンCが含まれています。水溶性のビタミンCは、水に溶けやすく調理の過程で失われがちな栄養素ですが、野沢菜漬けからも多くのビタミンCを摂取できます。
皮膚・粘膜の健康維持などビタミンAとしての機能も果たすβ-カロテン
β-カロテンは、植物に含まれるカロテノイド色素の一種で、強力な抗酸化作用を持つ栄養素です。細胞を傷つけて老化や生活習慣病、がんを引き起こす活性酸素から体を守ります。
β-カロテンは、体にとって必要な量だけビタミンAに変換されるプロビタミンAでもあります。ビタミンAの持つ皮膚・粘膜や眼の健康維持作用や、免疫機能の制御といった効果も期待できます。
特に緑黄色野菜に多く含まれる栄養素ですが、野沢菜にも豊富で、生の葉100gには1200μgのβ-カロテンが含まれています。
便秘解消に効果的な食物繊維
野沢菜には食物繊維が多く含まれています。野菜類やきのこ類に豊富な食物繊維は、人間の消化酵素では消化できない成分で、腸内環境を整えたり、腸のぜん動運動を促進して便通を改善する効果があります。
また、脂質・糖・塩分などを吸着して便として排出するのを助ける働きもあり、肥満や高血圧といった生活習慣病予防にも役立つ栄養素です。
野沢菜は、小松菜やチンゲン菜よりも多くの食物繊維を含んでいます。現代人にとって不足しがちな食物繊維を効率的に補うのに役立つ葉物野菜と言えるでしょう。
野沢菜漬けには腸内環境を整える乳酸菌が豊富
野沢菜漬けの漬け汁1mlあたりに100個以上の生きた乳酸菌が含まれていることが、松本大学の研究によって証明されています。
松本大学の発表では、漬け汁に含まれる乳酸菌は、野沢菜を漬ける方法やレシピに関わらず発見されたことから、長期保存される発酵漬け物の野沢菜漬けに特徴的なものであると結論づけられています。
乳酸菌は、発酵によって乳酸を作り出す微生物の総称で、漬け物などの発酵食品に多く含まれています。腸内フローラを整えてお腹の調子を良くする効果があるため、便秘や下痢に悩んでいる方にとってはぜひ摂取しておきたい栄養素です。
野沢菜の保存方法
野沢菜の栄養素を損なわない保存方法。
生の野沢菜の保存方法
生の野沢菜は、冷蔵庫の野菜室で保存するのがベストです。
ただし、漬け物用の野沢菜は、サイズが大きく家庭用冷蔵庫に入らない場合があります。大きな野沢菜は、乾燥を防ぐために濡れた新聞紙などに包んで、室内の涼しい場所に置いておくと良いでしょう。
冷蔵庫または冷暗所で保存している生の野沢菜は、数日のうちに使い切るか、塩で漬け込んでください。
野沢菜漬けの冷蔵保存方法
市販の野沢菜漬けは、10℃以下で冷蔵保存します。賞味期限は商品によって異なりますが、多くが10日~20日程度に設定されています。
家庭で漬けた野沢菜漬けの賞味期限は、2週間程度が目安です。野沢菜漬けは、長く保存するほど発酵が進み、酸味が強く感じられるようになります。
野沢菜漬けの冷凍保存方法
野沢菜漬けを長期間保存する場合、冷凍することもできます。ただし、水分の多い浅漬けの野沢菜だと解凍後に食感が損なわれる恐れがあるため、冷凍するならしっかりと浸け込まれた本漬けの野沢菜漬けがおすすめです。
浅漬けの野沢菜を冷凍した場合、半解凍の状態で食べるとシャキシャキとした食感を楽しむことができます。