梅干しは古く中国を発祥としている、2000年前からある食べ物です。
日本では遣唐士とともに中国から持ち込まれ、そこから現代に至るまで日本の食文化として愛され続けています。
「梅干し」の名前の由来
梅干しの「干し」という言葉は、乾燥させるという意味です。
梅を塩漬けにした後、天日で干すことによって水分を抜き、保存性を高めるこの方法が、「梅干し」という名称に反映されています。
また、梅を塩漬けにすることで発酵を防ぎ、梅特有の酸味と塩味が強調されることから、特有の風味が生まれます。
梅干しの歴史:時代別まとめ
奈良時代(710〜794年)
中国から梅が伝来
薬用植物として中国から日本へ渡来。最初は「烏梅(うばい)」と呼ばれる燻製梅が薬として使用された。
平安時代(794〜1185年)
貴族の間で薬用として普及
梅干しは風邪や下痢などの治療薬として重宝され、貴族や僧侶の間で使用される。
藤原道長の日記『御堂関白記』にも登場。
鎌倉時代(1185〜1333年)
武士の携帯食として発展
保存がきき、殺菌作用もある梅干しは、戦場での保存食・携帯食として武士に重宝された。
この頃から「庶民にも普及」が始まる。
室町時代(1336〜1573年)
庶民の間でも食用に
医療や宗教の影響で、禅寺などを通じて庶民の生活にも梅干しが浸透。
「梅干し+白米」の組み合わせが一般的に。
江戸時代(1603〜1868年)
食文化として確立
梅干しは庶民の常備菜に。
特に「日の丸弁当(白米+梅干し)」が定着。
また、医療的効能(整腸・防腐など)も広く知られる。
明治〜昭和時代(1868〜1989年)
全国的な普及と商品化
商業生産が進み、和歌山(紀州)などが産地として有名に。
軍隊の携帯食や学校給食にも登場し、全国に広がる。
平成〜令和時代(1989年〜現在)
多様化と健康志向の広がり
減塩梅干しや蜂蜜漬けなどバリエーションが増加。
健康食品として再注目され、海外でも注目されるように。
梅干しと健康について
疲労回復効果
梅干しの酸味の正体は、疲労回復効果があるとされているクエン酸です。クエン酸は、疲労の元となる乳酸を体外に排出する働きがあります。そのため、体の疲れや肩こりの解消にも効果的です。クエン酸にはほかにも、細菌の増殖を防ぐ働きや、カルシウムの吸収を促す働きなどもあります。
食欲増進効果
酸味豊かな梅干しは、唾液の分泌を促すため食欲増進効果があります。夏バテなどで食欲が落ちてしまったときは、梅干しを使った料理を試してみるのがおすすめです。
動脈硬化予防効果
梅の果汁を長時間煮詰めて作られる「梅エキス」には、血流を改善し、生活習慣病の一環である動脈硬化などを予防する効果が期待されている成分が含まれています。ムメフラールと呼ばれ、平成11年に農林水産省食品総合研究所の研究で発見された注目すべき成分です。梅に豊富に含まれるクエン酸と協力して作用し、相乗効果が期待されるとされています。
便秘予防効果
梅干しには、植物性乳酸菌も多く含まれています。腸内環境を整える働きがあるため、便秘予防や肥満の抑制、免疫力の向上、抗アレルギー効果などが期待されます。さらに、悪玉菌を抑制する働きのあるカテキン酸というアミノ酸も含まれているため、乳酸菌と相乗効果を発揮して、より高い整腸作用が期待できるでしょう。
アンチエイジング効果
梅干し1個には、リンゴの33倍にもあたる0.03mgものビタミンEが含まれています。ビタミンEは、高い抗酸化作用を持つことで知られています。「若返りのビタミン」とも呼ばれ、血行を促進させて血管や肌、細胞の老化を防止してくれる働きがあるため、生活習慣病の予防にも効果的です。
梅干しを食べるときの注意点
梅干しには豊富な栄養素が含まれており、体にさまざまな健康効果をもたらしてくれます。しかし、塩分が多く含まれるため、摂りすぎには注意が必要です。
梅干しは1日1個が目安
文部科学省の食品成分データベースによれば、梅干し1個(可食部20g)には、3.6gの塩分が含まれています。厚生労働省で定められている1日の食塩摂取量の目標値は、男性が7.5g未満、女性が6.5g未満です。高血圧や慢性腎臓病の重症化を予防するなら、男女ともに6g未満に抑えることが推奨されています。梅干しは摂りすぎに注意し、1日1個を目安にしましょう。
人それぞれ適量は異なる
たくさん汗をかく夏場や、特定の疾患にかかっている方など、状況次第で塩分の摂取が必要になる場合もあります。その場合、1日1個以上食べても健康への影響は少ないと考えられます。しかし、塩分の摂りすぎは高血圧のリスクが高まるため、摂りすぎには注意しましょう。また、病院から塩分を制限されている方は、かかりつけ医師に相談して、適量を食べるようにしてください。
健康的な取り入れ方
・朝食に白湯+梅干し(胃腸を整える「梅湯」)
・おにぎりやお弁当に入れて殺菌・整腸
・梅肉を料理に活用(ドレッシング・タレ・炒め物)
梅干しの美容効果
美肌効果(抗酸化作用)
ポリフェノールや梅リグナンが肌の酸化を防ぐ
→ シミ・シワ・くすみの予防に◎
クエン酸で新陳代謝がUP → 肌のターンオーバーを促進
デトックス・腸活
殺菌・整腸効果で腸内環境が整う
→ ニキビ・肌荒れの原因となる腸の炎症を改善
老廃物の排出を促し、むくみや体の重さを改善
代謝アップ・ダイエットサポート
クエン酸がエネルギー代謝を活性化
→ 脂肪燃焼を促進、冷えやすい体質を改善
むくみ解消
梅に含まれるカリウムが余分なナトリウムを排出
→ 特に「塩抜きした梅干し」や「減塩タイプ」なら効果的
ホルモンバランスを整える(間接的)
腸内環境の改善や自律神経への穏やかな作用
→ 肌や髪の質、睡眠の質向上にもつながる
梅干し美容法・取り入れ方
方法 | 効果・ポイント |
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朝の「梅湯」 | 白湯に梅干し1粒を潰して飲む:代謝・デトックス効果◎ |
梅肉+ヨーグルト | 腸活&美肌。酸味と乳酸菌の相乗効果 |
梅ドレッシング | サラダに。酢と組み合わせればさらに美容効果UP |
梅干し炊き込みご飯 | お通じ改善、冷え対策にもおすすめ |