昆布とわかめは普段食べることの多い海藻ですが、2つの違いを答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。
似ているイメージがありますが、昆布は褐藻類コンブ科、ワカメは褐藻類アイヌワカメ科と分類が異なることをはじめ、構造や産地、適した調理方法など様々な面で大きく異なります。
ワカメと昆布は違う海藻
同じ海藻ということもあってワカメと昆布は混同されることも多い食材ですが、違いが多くあります。
ワカメの分類
ワカメは褐藻類アイヌワカメ科に分類されます。
褐藻(かっそう)は海産の多細胞藻類を中心とする生物群のことで、褐色の色が特徴的だと言われています。
いわゆる海の藻(も)としてヘルシーな食材のため様々な料理に使うことができます。
昆布の分類
昆布は褐藻類コンブ科コンブ属に分類されます。
コンブは単体の海藻ではなく、一般名詞として数種など類の海藻のことを指します。
アラメやクロメ、カジメ、オオウキモなども分類的には昆布とされていますが、世間ではあまり知られておらず、葉が長く食用のもののみをコンブと呼んでいることがほとんどです。
昆布ってこんな海藻
昆布はオクロ植物褐藻網コンブ目コンブ科に属する海藻です。実際「〇〇コンブ」という種類はあっても、「昆布」という海藻は存在せず、昔から帯状で葉が長く食用できる海藻を「昆布」と呼んでいたとも言われています。ちなみに、生物学上では昆布を「コンブ」とカタカナ表記するのが正しいことも覚えておくとよいでしょう。
昆布は冷たい海を好む
日本では宮城県以北に生息しているため、日本最大の生産地は北海道です。国産昆布の95%は北海道、残り5%は青森、岩手、宮城が産地として知られています。
生物学が提唱される前から昆布は食用されていて、その歴史は縄文時代にまで遡ると言われています。
江戸時代には船を使い「天下の台所」と名高い大阪に昆布が運ばれるようになりました。
昆布からとれる出汁は大阪の人々の心を掴み、現在でも関西では昆布出汁が好まれています。関西の昆布出汁愛から、最高級品と言われる真昆布は大阪の市場で全国最高額をつけられることが多いそうです。
わかめってこんな海藻
わかめも昆布と同じくオクロ植物褐藻網コンブ目の海藻ですが、チガイソ科に分類されます。わかめは1種類だけなので「ワカメ(若布、和布、稚海藻)」が種族名です。
わかめは冷たい海から温かい海まで、広く生息しています。
そのため、日本では北海道から沖縄まで広く水揚げされ、最大生産地は岩手県です。わかめは養殖も盛んで、岩手県では「田野畑わかめ」などブランド化されているものもあります。
昆布と同じ
わかめも古くから食用海藻として親しまれており、縄文時代の遺跡からはわかめを食用していたと考えられる遺跡や化石などが出土しています。その他、日本最古の和歌集として知られる万葉集にも、わかめを詠った和歌がいくつかのこされています。
ワカメと昆布の共通点
ワカメと昆布の共通点についてご紹介します。
どちらも海藻
ワカメと昆布の大きな共通点として、どちらも海藻ということが挙げられます。
そもそも海藻とは海の中で育つ藻の事を指します。
地上で育っている植物と比較すると、海の中で育つ海藻は植物のように根・茎・葉の区別をつけることができません。
また植物は種によって繁殖をしますが、海藻は海の中を泳いでいる胞子が繁殖に使われ子孫を増やすという違いがあります。
海藻の中では「褐藻類」という分類
ワカメも昆布も海藻の中で「褐藻類(かっそうるい)」という色が褐色(黒ずんだ茶色)の海藻に分類されます。
褐藻類の海藻の種類は、数センチ程の小さいものから極めて大きく成長する種まで幅広いです。
ワカメや昆布以外には、ヒジキやホンダワラ、モズクなどが挙げられます。
共通の特徴
ワカメと昆布の共通点として糖質が低くヘルシーということが挙げられます。
どちらにも水溶性食物繊維が含まれており、水分と混ざると粘性が高まりお腹が膨れるため、お腹が空きにくくなり食べすぎ防止などダイエットに効果的です。
特に昆布は水分を含むと口の中では50倍に、胃の中では100倍ほどの大きさになると言われています。
昆布 7月中旬~9月頃
わかめ 3月~5月
ワカメの主な成分
ワカメには水溶性食物繊維であるアルギン酸や、体の機能維持に欠かせないミネラル、カロテン、カルシウムなどが含まれています。
生活習慣病の予防や新陳代謝の向上
健康維持やダイエット効果をはじめ、育毛効果やアンチエイジング効果、美白効果など美容にも効果があると言われています。
そんなワカメは味が強くない為、味噌汁やスープの具、サラダ、煮物の具など様々な料理に使用することができます。
ワカメ
は葉だけでなく茎も食べることができるので、離乳食やおつまみとしても調理することができ、子供から大人まで幅広く食べられます。
また胎児の骨や脳の発育に必要な甲状腺ホルモンを合成するために必要不可欠なヨウ素が豊富に含まれているため、妊婦さんや小さいお子さんにも積極的に食べてほしいです。
わかめは出汁がとれない
昆布もわかめも旨味成分であるグルタミン酸が多い海藻です。そのままの状態でグルタミン酸量を測れば、わかめの方がわずかにグルタミン酸含有量が多いでしょう。
しかし・・・
それぞれから出汁をとると昆布から抽出された出汁にはグルタミン酸が検出され、わかめから抽出された出汁からはグルタミン酸が検出されません。
つまり・・・
わかめからは出汁をとることができないのです。わかめ出汁は、香りがあるものの出汁の味や旨味などは感じにくく、わかめは出汁をとるのに不向きです。
昆布の主な成分
昆布には、タンパク質やカルシウム、鉄、要素、食物繊維、ビタミンA、B2など多くの栄養素が含まれています。
体脂肪の燃焼や余分な脂肪を溜まりにくくする、アレルギーの予防、がんの発生や進行を抑える、免疫力を高める効果があると言われています。
そのほか・・・
三大旨味成分の中のグルタミン酸を多く含んでおり、味噌汁やおでんなど様々な料理に重宝される「お出汁」に多く使われます。
昆布には、昆布のみで出汁をとるのに適した種類と、かつお節との合わせ出汁に適した種類があります。
用途に・・・
合わせて昆布を選ぶと料理が楽しくなるのではないでしょうか。
また昆布は、めでたさを表すおせち料理にも使われています。
よろこぶという語呂合わせに加えて、子孫繁栄や不老長寿の意味を持ち合わせている縁起の良い食べ物なのでぜひ年始に食べてほしい食品です。
構造・産地
ワカメと昆布それぞれの構造と生育に適した環境・産地についてご紹介します。
ワカメの構造と生育環境
ワカメは根と長い茎から何枚もの葉が生えており、普段食べているのは葉の部分です。
その葉の体長は約1m程です。
ワカメは寒い場所だけでなく、温かい場所でも育つことができるので日本全国で収穫することができます。
中でも宮城県や岩手県にまたがる三陸海岸が国内生産量の6割以上を占めています。
成長するまでに1年ほどかかり、その後収穫になります。
昆布の構造と生育環境
昆布は根と茎の先に1枚の大きな葉で出来ており、普段食べているのは葉の部分です。
その葉は約数10mありとても長いのが特徴です。
寒い地域の海でしか育たない
日本での主な産地は北海道で、国内生産量の8~9割を占めており、残り2~1割を三陸沿岸部が占めていると言われています。
2年程かけて成長した後、収穫になりますが製品にするまで大きな手間がかかるのでワカメと比べて高級な物も多いです。
好漁場のポイント
海藻は植物と違って根っこではなく全体で水中の栄養を取り込むので、良い水質の場所で育てることで、旨味や栄養素の高い立派な海藻に育つと言われています。
青森県、岩手県宮城県に渡って広がる三陸の沿岸部では、寒暖流が交錯する海域が広がっておりプランクトンが豊富で栄養価が高いと有名です。
その中でも特に岩手県にはギザギザとした独特の地形が特徴的なリアス海岸が広がっており、荒波かつ浅瀬で育ちやすい昆布やワカメにとって絶好の場所だとされています。
昆布は地域によって食べ方が違う
種類によって葉肉の食用に適したものとそうでないものがありますが、昆布を食用するかどうかは地域によっての違いが大きいです。
- 北海道
出汁とるために使うことが多い - 三陸
薄い昆布をすだれに抄いて乾燥させた「すき昆布」を、水戻しして食べる文化がある - 東京
消費量は少ないものの、佃煮や塩昆布などに加工する傾向がある - 北陸
昆布を削って作る「目うちとろろ」という独特な食べ方がある - 南海
東京と同じく、消費量は少ないながらも、佃煮や塩昆布などの加工品とする傾向がある - 大阪
出汁、おぼろ、とろろ、佃煮など出汁用から加工品まで広く用いる。佃煮昆布は大阪の名産品 - 沖縄
葉肉を料理してそのまま食べる
特に、沖縄では昆布を調理して食べるのが一般的です。沖縄では昆布を「クープ」と呼び、おめでたい時に食べる食材として親しまれています。ラフテーと炒めたり、おでんに5cmくらいに切った昆布をそのまま入れて食べたりと、さまざまな料理で昆布をそのまま食べる文化が特徴的です。