春に黄色の花を咲かせ、葉の形が菊に似ていることから、シュンギクという名が付きました。主に関西では「キクナ」とも呼ばれています。
葉の切れ込みの浅く、肉厚な大葉種、切れ込みが深く、香りが強い中葉種があります。主に流通しているのは中葉種ですが、西日本では大葉種が好まれています。
葉の部分は軟らかく、繊維質が少ないため、サラダにするのもおすすめです。茎は、おひたしやみそ汁の具材として使いましょう。ハウス栽培によって一年中出回っていますが、10~2月がおいしい季節です。
- 春に花が咲き菊に似ていることが由来
- 関西では「菊菜」と呼ばれるワケ
- 春菊にはβカロテンが多く含まれる
- 春菊の香りは副交感神経の働きを助ける
- 春菊の旬は冬
- 美味しい春菊の見分け方は?
- 春菊の栄養とは
- 春菊のおすすめレシピ
春に花が咲き菊に似ていることが由来
冬が旬の食材なのに、なぜ「春菊」と呼ばれるのですか。
春菊の由来は、春に花が開き、葉が菊に似ていることからです。俳句の季語でも『春』とされています。分類はキク科キク属、原産地はヨーロッパの地中海沿岸で、日本には戦国時代に明(みん=中国)から渡来したと伝わっています。
初めは関西で食材として用いられ、江戸時代から各地で栽培が始まったようです。
1824(文政7)年の『武江産物志』という書物に、江戸近郊の農産物として練馬の蘿萄(ダイコン)、小松川の秋菜(ふゆな=コマツナ)や北沢の西瓜(スイカ)、内藤新宿の番椒(トウガラシ)や岩槻の牛蒡(ゴボウ)とともに、千住の春菊や水芹(セリ)、茄子(ナス)なども紹介されています。
春菊を食用にするのは日本や中国などの東アジア地域だけで、ヨーロッパでは観賞用の植物です。
関西では「菊菜」と呼ばれるワケ
「関西で春菊を菊菜と呼ぶのは、葉の形が菊の葉に似ていることからとか、葉茎(ようけい)を『菜(な)』として食べるからといわれています。
呼び名
ほかにも『不断菊(ふだんぎく)』『はるぎく』『六月菊』、中国・朝鮮半島から渡来したので『高麗菊』の名もあります。一年中、発芽・成長することから『無尽草(むじんそう)』とも呼ばれます。
呼び名だけでなく
春菊は千葉県、群馬県、大阪府、兵庫県、福岡県などの大都市近郊が主産地で、種類は葉の大きさによって大葉種、中葉(ちゅうば)種、小葉種に大別されます。全国的に栽培されているのは、葉が薄くて切れ込みが少ない中葉種です。
春菊にはβカロテンが多く含まれる
春菊は漢字の通りキク科の植物です。
関西の一部では菊菜と呼ぶこともあります。
あまり意識されませんがいくつか種類があり、それぞれ鍋物に向いている、生食が美味しいなどの特徴があります。
春菊は緑黄色野菜の仲間です。
βカロテンやカルシウム、マグネシウム、カリウム、葉酸などの栄養素を多く含んでいます。
特にβカロテンが豊富です。
βカロテン
強い抗酸化作用があり、アンチエイジング効果や生活習慣病予防が期待できます。
βカロテンは人間の体内でビタミンAに変換されるため、プロビタミンAという別名があります。
ビタミンA
皮膚や粘膜を健康に保ち、免疫力を高める効果がある栄養素です。
皮膚と粘膜は感染症を防ぐために重要な働きをしているので、皮膚と粘膜の働きを助けるビタミンAは抗感染症ビタミンと呼ばれることもあります。
さらにビタミンAは目の健康を維持するのに欠かせないビタミンでもあります。
暗いところでの視野を保つためにはビタミンAは欠かせません。反対にビタミンAが不足すると夜盲症になる恐れがあります。
カルシウムやマグネシウム
骨や歯の形成を助ける栄養素です。
マグネシウムは他にも血液循環を健康に保つ助けになります。
カリウムはナトリウムの排出を促し、高血圧予防に効果があります。
葉酸は赤血球の生産を助けるビタミンの仲間です。
DNAやRNAなどの合成を促進するため、妊娠中の方はとくにたくさん接種するように勧告されている栄養素でもあります。
春菊の香りは副交感神経の働きを助ける
春菊には独特の香りがあります。
この香りにはαピネンとぺリルアルデヒドという成分が含まれています。
αピネンとはほとんどの木が発している香り成分です。特にマツ、ヒノキ、スギなどの針葉樹に多く含まれています。森林浴をするとリラックスするのはこのαピネンの効果とされています。
実際にαピネンは安眠を促す作用があるという研究結果があります。
ぺリルアルデヒドは強い抗菌・殺菌作用がある香り成分です。強い殺菌作用で知られるシソの葉にも多くのぺリルアルデヒドが含まれています。
食中毒を防ぎ、胃腸の働きを助ける効果があります。
春菊の旬は冬
春菊の旬は冬です。
11月頃から2月頃に掛けて多く市場に出回ります。
ただ、春菊は寒さにも暑さにも比較的強い野菜のため、年間を通してある程度の量が出荷されています。
多く出回っている春菊は細かく言うと中葉種に当たる品種です。春菊特有の香りが強く、葉の形も切れ込みが深いのが特徴です。
中葉種の他にも大葉種、小葉種、サラダ用品種などの春菊があります。
大葉種は関西地方以西で好まれている品種です。
葉に丸みがあり、切れ込みがあまり深くない見た目をしています。
葉が肉厚で香りが少なく、クセが無い味わいの春菊です。
小葉種は近年はほとんど栽培されていません。葉が小さく薄いという特徴があります。
サラダ用品種はその名の通り香りが少なく、茎も柔らかいので茎ごと生食することができるタイプの春菊です。
美味しい春菊の見分け方は?
春菊は葉が痛みやすい野菜です。
購入する際には葉の先までシャキッと張りがあり、全体的に濃い緑色をしているものを選びます。
古くなってくると黄色みがかってくるので、色があせたものは避けましょう。
好みにもよりますが茎は余り太くなっているものより細めの方が柔らかくて食べやすいです。茎も張りがあるものが新鮮です。
春菊は品種によって葉の形がギザギザ、切れ込みが深いものや切れ込みが浅く丸っこいものなどがあります。
葉の切れ込みが深い方が香りが強く、葉が丸みを帯びていると香りがマイルドです。
調理法や好みによって選ぶといいでしょう。
春菊の栄養とは
【春菊(可食部100gあたり)】
エネルギー…22㎉
炭水化物…3.9 g
カリウム…73㎎
カリウム…460mg
カルシウム…120mg
リン…44㎎
鉄…1.7㎎
ビタミンA(β-カロテン当量)…4500㎍
ビタミンK…250㎍
ビタミンB1…0.10㎎
ビタミンB2…0.16㎎
ビタミンC…19㎎
食物繊維総量…3.2g
・生活習慣病予防の効果も!β-カロテン
β-カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。ビタミンAは目の機能や皮膚、粘膜の健康を保つために必要なビタミンで、粘膜のダメージを回復する効果や免疫力を高める効果があります。
また、肌荒れ予防にも効果が期待できます。ビタミンAに変換されなかったものは抗酸化物質として働き、動脈硬化やがんなどの生活習慣病の予防や老化防止に効果が期待できると言われています。
・美肌作りに役立つ!ビタミンC
ビタミンCはコラーゲンの合成にかかわるビタミンで、ストレスから体を守る働きをします。活性酸素を消去する抗酸化作用があり、動脈硬化の予防にも効果があります。また、皮膚のシミやしわを防ぎ、傷や炎症の治りをよくする効果もあります。
さらに、粘膜を強くして健康に保つ効果があることから風邪予防の効果も期待できます。水溶性のビタミンで熱に弱い性質があるので、生で食べるとより効果的に摂取できます。
・骨のカルシウム沈着を助ける!ビタミンK
ビタミンKはビタミンDとともにカルシウムの吸収をよくする働きがあります。また、骨からカルシウムが溶けて血液に流れ出るのを防ぐ役割があり、骨形成に重要な働きをしています。
さらに、血液凝固成分を作り、ケガをして出血をした際に出血を止める役割もあります。食品に含まれているビタミンKの他に、腸内細菌によっても合成されます。
・骨粗しょう症の予防に!カルシウム
骨や歯を作るのに欠かせないミネラルです。体内にあるカルシウムの99%は骨と歯に存在しています。また、筋肉を動かしたり、精神の興奮をおさえ安定させるなどの効果もあります。
カルシウムは吸収されにくい栄養素のひとつですが、ビタミンDと一緒にとることで吸収率がよくなります。
春菊のおすすめレシピ
たらと春菊のピリ辛鍋
コチュジャンを加えたピリ辛味が美味しいお鍋です。鍋のしめには、うどんや中華麺を加えるのもおすすめです。
材料(2人分)
たら(切り身)…2切れ
春菊…1束
しいたけ…4個
白ねぎ…1/2本
豆腐…1/2丁
A水…600ml
A鶏ガラスープの素…小さじ2
Aコチュジャン…大さじ1
Aしょうゆ…大さじ1
A酒…大さじ1
塩…少々
作り方
① たらは一口大に切って塩をふりしばらくおく。出てきた水気はキッチンペーパーでふき取る。
② 春菊は4㎝長さに切って、白ねぎは1.5㎝幅の斜め切りにする。しいたけは石づきを取りのぞいて、十字に飾り切りをする。豆腐は4等分に切る。
③ 鍋に【A】を合わせて、中火にかける。沸騰したら、たら、白ねぎ、しいたけ、豆腐を加えて煮る。具材に大体火が通れば、春菊を茎、葉の順に加えて軽く煮る。
④ 具材に火が通れば、汁ごと取り分けていただく。
ポイント
・春菊は火の通りが早いので最後に加えて火を通してください。春菊の食感が少し残る程度の加熱加減がおすすめです。
・コチュジャンの分量はお好みで調整してください。