煮魚の代表格である「金目鯛」。近年は寿司や刺身も人気が高く、クセが少なく上品な味わいは幅広い世代に親しまれるおいしさです。今回は、そんな金目鯛の特徴をはじめ、おいしい旬の時期や味わい、含まれる栄養やおすすめの食べ方などをご紹介します。
金目鯛とは?
「金目鯛」とは、キンメダイ科キンメダイ属の深海魚のことで、まるで金魚のように魚体が赤く、大きな目玉を持つ白身魚です。大きいものは体長50cmを超えることもあり、その立派な姿から真鯛の代わりに祝儀魚に用いる地方もあります。
金目鯛という名の由来は、大きな目玉が光を反射して金色に見えることからです。目自体は透明なガラス玉のようですが、奥の網膜下に反射板があり、深海でもわずかな光を捉えて獲物を見つけられるようになっています。
金目鯛は世界中に広く分布していますが、日本の主な産地は静岡県、神奈川県、千葉県、東京都、高知県の1都4県です。水揚げ量がもっとも多いのは静岡県の下田港で、一本釣りされたものは「地金目(トロ金目)」と呼ばれてブランド化されており、高級金目鯛として扱われています。
金目鯛の種類
金目鯛はキンメダイ目キンメダイ科の深海魚に分類される魚。名前に「鯛」と付くが、じつはマダイやクロダイなどのいわゆる鯛とは別物。
金目鯛で食用になるのは、キンメダイ・フウセンキンメ・ナンヨウキンメの3種類。キンメダイは細長いスリット状、フウセンキンメは後ろの鼻の穴が楕円、ナンヨウキンメは目が大きくウロコが粗いといった特徴を持つ。
金目鯛の旬
金目鯛は1年を通して脂がのった美味しい魚だが、旨みを余すことなく堪能できるという点ではもっとも脂がのった12~2月頃が旬といえる。ただし、産卵にエネルギーを使うため栄養価も味も落ちる7~8月の産卵時期のあとは避けたほうがいいかもしれない。
由来・語源
神奈川県三崎、東京での呼び名。目が金色であるため。
目が金色なのは目の奥にタペータムという反射板があるためだそうです。
生息域
海水魚。未成魚は水深100-250m、成魚は沖合の200-800mの岩礁域。
北海道釧路〜土佐湾の太平洋沿岸、新潟県佐渡、富山湾、沖縄、東シナ海大陸棚周辺、九州〜パラオ海嶺。
大西洋、インド-南米北部より北の東太平洋を除く太平洋。
生態
古くは関東の近海、相模湾、駿河湾、千葉県、伊豆半島、伊豆諸島、静岡県に多く、関東を代表する魚というイメージであった。ここに長崎県、鹿児島県、高知県の産地が増えたこと。南半球からなどの輸入ものが増えて全国的な存在となる。
例えば1970〜1980年代、キンメダイの刺身は非常に珍しく、主に煮つけ用の魚であった。江戸川区の食堂で普通に「キンメダイの煮つけ」が並んでいて、少々高かったが、好んで食べていたと記憶する。もっと昔は比較的安い魚だったのかも知れない。
この魚が全国的に流通し始めるのは、高知県や鹿児島県、長崎県など産地が増えたこと、沖縄海域や天皇海山など遠洋漁業でとるようになってから。また南半球はどからの輸入物も増えて価格が平均して下がったのも本種を全国区に押し上げた要因です。
選び方
冷凍ものは身が白いもの。透明感のあるものは脂が少ない。
おいしい旬の時期やその味わいは?
金目鯛は一年を通して味が安定しているので、季節を問わずに楽しむことができます。旬の時期は産地によって異なり、静岡県は12〜2月と冬の時期、千葉県は5〜6月の産卵前、高知県は7〜9月と少し遅めの産卵前に脂がのっておいしくなります。
気になるその味わいですが、金目鯛の身は淡い桜色で刺身にするとトロリとやわらかく、上品な旨味があります。加熱しても固くなりにくいうえ、クセが少なくしっとりとした食感になるので、煮つけやみそ汁にすると絶品です!特にアラは旨味が強く、脂がしっかりとのっているので余すことなくいただきましょう。
ちなみに、大きいものほど脂がのっておいしくなりますが、その分価格も高くなる傾向にあります。
味わい
鮮度がいいと赤みがかった白身で、脂があると時間が経つと白濁する。まったくクセがなく、全体に脂が混在して、脂から来る甘みが強い。
鱗は櫛鱗(しつりん)でザラザラしてしっかり硬くやや取りにくい。皮はしっかりしている。
やや赤みがかった白身で脂が均質に混ざり込んでいる。熱を通しても硬く締まらない。
金目鯛の煮つけ
大型魚はあらを使ってもいいし、切り身を煮つけてもいい。小型は丸のまま煮ると見栄えがいい。水洗いし、湯通しして鱗などを完全に取り去る。これを一本丸ごと煮つけにしたもの。味つけはみりん、酒、砂糖、水で少しこってりと煮上げた。
砂糖・しょうゆ、酒・しょうゆなどお好みの味つけで。金目鯛は濃い味つけをしても脂が多いので中まで煮染まらない。あら煮や切り身を煮つけてもいい。
金目鯛の肝煮
ときどき本種の価値の半分は肝にあり、などと思うことがある。煮つけなどにするときにも、刺身にしても必ず添えたくなる。ただ肝だけを単体で食べた方がうまいと思う。肝を壊さないように取り出して、酒・みりん・醤油を煮立てたなかで火を通して煮汁にそのまま漬け込む。
金目鯛の魚すき(いり焼き、煮ぐい)
金目鯛の皮付きの薄切り切り身をすき焼きの地で煮ながら食べるもの。すき焼き地はお好みで作るが、基本はしょうゆ、酒、砂糖、水で、好みでみりんを使ってもいい。具に玉ねぎは必須で、こんにゃく、青菜などを一緒にいろいろ煮てもいい。
金目鯛の刺身
水洗いにして三枚に下ろし、血合い骨を抜く。皮を引き、単に刺身にしたもの。脂がのっていて甘味が強く、うま味も豊かである。古くはこの脂の強さが敬遠されたが、今や脂がのっているほどおいしいとされている。
金目鯛の刺身(皮付き)
三枚に下ろして血合い骨を抜き、皮付きのまま刺身にしたもの。金目鯛の皮は柔らかく、見た目にも美しい。薄作りにしてねぎなどを薬味にして食べて美味。
金目鯛のしゃぶしゃぶ
三枚に下ろして血合い骨を抜く。皮付きのまま薄く切る。これを昆布だしに酒、塩で味つけしたつゆでしゃぶしゃぶしながら食べる。生よりも食べやすく、ついつい箸が伸びる。ポン酢や柑橘類としょうゆが合う。
金目鯛のちり鍋
まずはキンメダイの中骨と昆布だしで、鍋つゆを作る。味つけは酒と塩。このつゆのなかでキンメダイの切り身、野菜を煮ながら食べる。キンメダイのうま味が染み出した汁が非常に美味。仕上げは雑炊や麺類で。
金目鯛のムニエル
金目鯛の半身の血合い骨を抜く。塩コショウして少し寝かせる。これを多めの油のなかでじっくりとソテーする。今回は身を取り出してキノコ類ソテーしてトマト、シャリーを加えてソースにする。2〜3個のアサリをキノコと一緒に煮込むとより濃厚なソースになる。
金目鯛のみそ汁
あらを湯通しして氷水に落とす。残っている鱗や滑りなどをとる。よく水気を切る。あらを昆布だし(水でも可)で煮だしてみそを溶く。実にうま味の強い汁で、あらについている皮、身に甘みが感じられる。ご飯にとても好相性でおかずになる。
金目鯛の塩焼き
金目鯛は脂が均質に混在しているので焼いても硬くならず、中の脂が染み出してきて表面が揚げたように仕上がる。この皮や表面が香ばしく、内側の豊潤であることなど最上級の塩焼きになる。
開き干し
インド洋海域で水揚げされたキンメダイを開き干しにしたもの。基本的に干ものは冷凍輸入されたものを原料に作る。脂がのっていてとてもいい味だ。
[大半商店 神奈川県小田原市など]
醤油干し
しょうゆ、砂糖などで味つけして干し上げたもの。一般的には「みりん干し」とした方がよいかも。小振りのキンメダイをおかず向きに仕上げていて好感の持てるもの。
[ヤマカ水産 静岡県沼津市]
金目鯛西京味噌漬
ニュージーランド産のものを白みそ(西京みそ)に漬け込んだもの。適度に身が締まり、麹の甘さが感じられていい味に仕上がっている。
[三郷水産 埼玉県八潮市]
期待される効能・効果
癌や血栓の形成、アレルギーの発生を抑えたり、視力を保つのを改善する作用があると言われています。また、老人性認知症や高血圧、動脈硬化の予防にも有用とされます。含有される成分には、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA/IPA)、アスタキサンチンなどがあります。
ドコサヘキサエン酸
神経組織や情報伝達の働きを保ち、脳細胞を活発化させる作用があると言われています。このため、老人性認知症の改善に有用とされています。
また、癌を予防したり、コレステロールを減少させる他、アレルギー症状を緩和する作用などがあると考えられています。
エイコサペンタエン酸
癌や高血圧、動脈硬化の予防に役立つと言われています。血液の流れを改善する他、アレルギー症状や血栓の形成を抑制する働きがあると考えられています。
アスタキサンチン
ストレスに起因する免疫低下を抑えたり、癌や胃潰瘍、白内障の予防に有用とされます。いわゆる色素成分であり、皮の中に含有されている抗酸化物質です。カロテノイド系に属します。