練り製品とは、魚肉に塩を加えてすりつぶし、成形してから熱を加えて固めた食品の総称です。日本以外でも、中国や北欧などに類似した食品は見られますが、日本ほど多様な食品が考案されている国は他にありません。
日本のさまざまな伝承や文献にも登場するかまぼこは、練り製品の代表格です。
- なぜ「かまぼこ」というの?
- 「かまぼこ」はいつからあるの?
- 江戸時代は鯛でつくったかまぼこが珍重された?
- 「かまぼこ」には、なぜ板がついているの?
- かまぼこの足って何?
- 水溶性たんぱく質
- 塩溶性たんぱく質
- 不溶性たんぱく質
- 「すり身」の語源
- かまぼこ板の話
- 野焼きの起源
- 野焼きの語源
- 「かまとと」って、?
かまぼこの栄養価
かまぼこは、新鮮で高タンパク・低脂肪の魚が原料です。
なぜ「かまぼこ」というの?
ガマ(蒲)の穂子に似ていたので『ガマの穂子=蒲穂子』と呼び後に訛って「蒲鉾」という名がついた説、魚のすり身を竹に付けて焼いた見た目が鉾(柄の長い武器の一種)に似ているという説、鉾に魚のすり身を付けて焼いた説など諸説あり、どれも定かではない。
「かまぼこ」はいつからあるの?
『 類聚雑要抄』(るいじゅうぞうようしょう)によると、平安時代にはあったと言われている。永久3年(1115年)、関白右大臣のお祝いの席に「かまぼこ」が出されたとしるされている。これにちなみ、11月15日は「かまぼこの日」になった。
江戸時代は鯛でつくったかまぼこが珍重された?
江戸時代の初期の料理書『料理物語』(1643年刊)には、「鯛は、はまやき、すぎやき、蒲鉾(中略)其の外色々使う」とあり、また、鯛で作った「かまぼこ」がめでたいといって、お祝い料理だったと言われている。
「かまぼこ」には、なぜ板がついているの?
製法的な役割ではかまぼこに使うすり身は柔らかいのでくずれないように板の上にのせてつくられたから。保存的な役割では板が余分な水分を吸収しておいしさを保ってくれるから。
かまぼこの足って何?
かまぼこの“歯応え”は、麺類で言われる「コシ」とは言わず「足(あし)」と呼びます。
かまぼこの足はその“食感”が最も大切で、「かまぼこの生命」とも言われているのです。
かまぼこの足
かまぼこの弾力をあらわし、歯切れ・かたさなど食べたときの食感と大いに関係しているのです。足の要素としては、硬さ、強さ、歯切れ、喉ごし、きめの細かさなどが上げられますが、足の質は地域により違いがあるので、どのようなものが良いと一概には言い切れないようです。
一般的には、強くてしかも歯切れの良いものが良い足とされています。
かまぼこの足を作っているのは、魚肉たんぱく質です。その種類は実用上から見て大きく、水溶性、塩溶性、および不溶性の3つにに分けることができます。
水溶性たんぱく質
水溶性たんぱく質は酵素系たんぱく質であって、種々の酵素から成り立っており、他のたんぱく質を編成させたり、分解したりするので、かまぼこ製造においては、むしろ邪魔になるものです。かまぼこのすり身を作る工程で行う「水晒し」によってこのたんぱく質の一部は溶失します。
水晒しを徹底的に行うと、製品の足が強くなるのは、この酵素系たんぱく質を除去することが、その一原因ですが、足が強くなるのと引き換えに魚のエキス成分も失うので、魚肉の旨味を損なうという欠点を伴います。
塩溶性たんぱく質
魚肉に食塩を加えてすりつぶすと、粘性のあるすり身ができるのですが、これは塩溶性たんぱく質が、すり身に加えた塩がすり身の水に解けてできた塩水に溶けるためです。かまぼこの足を作るのは、この塩溶性たんぱく質で、魚肉の全たんぱく質の約70%を占めています。
かまぼこの足の形成には、塩が関係しています。
魚肉に塩を加えてすりつぶすことによって、かまぼこの足の素になるアクトミオシンが溶け出し、これが加熱によって絡み合い、かまぼこの足が出来上がるのです。
不溶性たんぱく質
魚肉を食塩水に溶かすと、、魚肉が新鮮ならば、水溶性および塩溶性たんぱく質が解けてしまいますから、あとに水にも食塩水にも溶けないたんぱく質が、わずかに残ります。不溶性たんぱく質の量は、鮮度の低下とともに次第に増加します。したがって、足形成能が、鮮度の低下とともに小さくなっていくのです。
この塩水に溶けないたんぱく質のうち、鮮度の低下によって変性したたんぱく質のことを「変性たんぱく質」、それ以外の、新鮮な魚肉に元来存在する、溶解しないたんぱく質を、「不溶性たんぱく質」と称しています。これは、いわゆる「スジ」で、細胞を包む膜、細胞と細胞をつなぐ結締組織、血管、皮などを構成しています。そして、鮮度低下によって、不溶性に変わったたんぱく質を区別しています。
「すり身」の語源
すり身の語源は、「擂り鉢(すりばち」で、「擂る身(するみ)」、あるいは「擂り潰した身」からきているようです。
魚肉をすり身にする道具として、「擂り鉢」と「すりこ木」が使われていました。
かまぼこの変遷から見ると、室町時代後期にすり鉢の発達に呼応して、魚介類のすり身を使ったかまぼこ様の料理が登場してきます。しかし、すり身は生ものですから、保存は利きません。
地場消費として、漁村を主とした地域では、すり身を団子汁にして煮たり、茹でる料理が伝えられました。特に、北海道では、すり身を竹輪にして焼くのではなく、団子状にしてみそ汁などに入れる料理が普及しています。
戦後、冷凍すり身が出現するようになってから水産練り製品の需要は大きく伸びました。
かまぼこ板の話
かまぼこ板は、通称空板(からいた)と呼ばれています。
かまぼこは、蒸す時、冷す時に、水分をはいたり吸ったりします。その際にかまぼこ板は、かまぼこの乾燥に合わせて水分を出し入れすることにより長期間一定の水分量を保ちます。
これは木材の特性で金属、樹脂等では実現不可能です。これにより腐敗を抑える効果があります。
かまぼこが板付きになったのは、安土桃山時代といわれ、料理人が献上品としてのしつらえを持たせるための工夫もあったのかもしれません。
その他にも、すり身に触らずに成形でき、加熱時などの持ち運びにも便利であることなど様々な役割を果たしているようです。
かまぼこ板には、白くて、節のない、しかもにおいのない、モミやシラベといった木が使われますが、中には移り香を楽しむ目的でスギが使われることもあるようです。
野焼きの起源
島根県松江地方、出雲地方には全国的にも有名な「あご野焼き」があります。
「あご」とは飛魚(トビウオ)のことで、日本海の初夏の味覚として馴染み深いお魚です。平成元年には島根県の県魚に指定されました。
旬の時期(5月~7月)が最も美味しい時期ですが、こちらも冷凍技術のお陰で一年中を通して野焼きを食べることができるようになりました。
旬の時期にはあごも入れますが、「あご野焼き」と表示するに必要な基準量を満たしていないので、通常「のやき」の表示としています。
野焼きの語源
昔は炭火で焼いていたのですが、店内に煙や熱気がこもるのを避けるため、野焼台を戸外や軒先に置いて、野外で焼いたことから「野焼き」の名がついたようです。
「かまとと」って、?
俗に言う「かまとと」(かまとと振り)というのは、「とと(魚)もかまもご存じない」が縮まったもので、
世間知らずのことです。
江戸時代に遊女が世間知らずを装うため、かまぼこを指してこれが魚なのかと問うたことに由来しているといわれます。