日本人の主食といえばお米ですが、国民1人当たりの消費量は減少し続けているというのをご存知ですか? 米離れが加速していると言われている日本のお米事情はどうなっているのでしょうか。この問題は長年くり返し報道され、議論されてきたにもかかわらず、その傾向は一向に変わることなく、2016年度には1962年度の約半分、約54キロにまで減少している。なぜ、食事に不可欠なはずのコメの消費量は、減り続けているのだろうか。
- 米の消費量の現状は?
- 日本人にとっての米の重要性とは
- 米の消費拡大のために行われている取り組み
- 1人分を調理するのは面倒くさい
- お米の国は日本ではなかった?
- 田植えをする農家がいなくなる!?
- 追い打ちをかけた「コロナ禍」
米の消費量の現状は?
国民1人が1年間に食べているお米は、1962年の118.3kgをピークに年々減少していて、2022年では50.7kgと約半分の消費量となっています。ここまでお米の消費が減少している理由には、食生活の多様化、少子高齢化、世帯構造の変化などさまざまな要因が挙げられ今後もさらに加速していくと考えられています。
一方で、手軽に食べることのできるコンビニなどの中食や外食などでの消費は増加傾向にあり、米消費の3割程度がそれらで消費されていることもわかっています。
これには、共働き家庭や単身世帯の増加から、料理に時間をかけない人が増えてきていることが大きく関係しています。また、ご飯と比べて手間がかからないパンや麺類が選択されることも多く、主食の多様化も原因の一つです。
日本人にとっての米の重要性とは
お米は私たちのエネルギー源となるだけでなく、正月にはお餅、祝い事では赤飯というように、昔からある年間行事には必ずと言っていいほどお米を使用した食べ物を口にしています。また、おせんべいや日本酒など日本人にとってなじみ深い食品の原材料としても欠かすことのできない存在です。
食文化の基礎としてここまで根付いた理由には、梅雨があり夏は熱帯地域と変わらないほどの気温になるなど日本の気候が米の栽培に適していたからと考えられています。
食料を輸入に頼っている部分が大きい日本ですが、お米に関してはほぼ100%に近い自給率を維持していることから食料安全保障の要ともされていて、気候変動による生産減少など不測の事態に対応するためにも不可欠な作物だと考えられています。
米の消費拡大のために行われている取り組み
お米の消費量を上げることは食料自給率の向上はもちろんのこと、日本の食文化を継承するという意味でも重要な課題です。
米飯学校給食の推進
農林水産省では、米の消費拡大や食育という観点から小中学校で米飯給食の提供を推進しています。
主な取り組みとしては、ご飯に合う和食の献立開発やセミナーをはじめ、米飯給食の回数を増やした学校に対して政府備蓄米の無償交付が行われています。
米の健康効果についての普及・啓発
農林水産省補助事業として2021年12月18日に「米と健康」をテーマにしたシンポジウムが行われ、玄米の科学的根拠に基づいた健康効果や脳機能に効果のあるGABAが多く含まれた「高機能玄米」の存在など、玄米やお米の持つ可能性が示されました。
また、健康に配慮した「機能性米」の研究に取り組む秋田県立大学では「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」を多く含むお米「まんぷくすらり」を開発。レジスタントスターチとは、穀物やイモ類などに少量含まれているでんぷんの一種で、糖尿病などの生活習慣病予防やダイエットに役立てることができると注目されています。
1人分を調理するのは面倒くさい
その原因としては、「食生活の多様化によって主食の選択肢が増え、相対的にコメの割合が減った」「女性の社会進出が進み、外食・中食に頼る傾向が強くなった」などの見解が代表的だ。もちろん、この2つの要因は、大きな関係があるだろう。
しかし、食卓の現場はもう少し事情が複雑である。
飲食関係の企業に勤める31歳のAさんは、1人暮らしの女性。「最近は炊いて冷凍しておき、食べることもあるけれど、基本的にコメはあまり食べない。年に2回ぐらいしか炊かないときもあった」と話す。
夜は情報収集を兼ね、友人たちと外食をする。昼は弁当を作って持っていくか、外で買ってきて職場で食べる。朝も、コーヒーとクロワッサン程度の簡単なもので済ませる。よく作るのはパスタ。2007年から1年間、イタリアに留学していたこともあり「パスタは簡単なので、ついそれでやっちゃう」。
今、多数派の世帯は、Aさんのような1人暮らしや、2人暮らしである。少人数世帯の人にとって、コメを炊くのは効率が悪いことかもしれない。最近は味の良さを売りにする炊飯器が数多く出ているが、1合未満の1人分のコメを炊ける商品はあまり見当たらない。
また、コメのご飯をつくる調理は、時間を要する。通常のコメは、洗って吸水させるまでで30分~1時間、炊いて蒸らすのに40分~1時間程度。最大で2時間かかる。無洗米を吸水させないで使う、圧力鍋などを使うなど工夫すれば時間短縮が可能だが、それでも30分~1時間はかかる。
お米の国は日本ではなかった?
お米の消費量ランキング(ひとりあたりの1日の消費量)
1位「バングラデシュ」473グラム
2位「ラオス」445グラム
3位「カンボジア」436グラム
4位「ベトナム」398グラム
5位「インドネシア」364グラム
6位「ミャンマー」345グラム
7位「フィリピン」325グラム
8位「タイ」306グラム
9位「スリランカ」295グラム
10位「マダガスカル」283グラム
…50位「日本」119グラム
なんと日本は50位なんです!
個人的な意見になりますが、お米が大好きで世界でも1位の消費量だと勝手に思っていました。
全体的に日本人のお米離れが進み消費量が減少し、結果として在庫過剰となっている地域もあるようです。そんな中、お米の消費を拡大させるために、さまざまな取り組みが行われています。
例えば、お米を使用したスイーツや菓子の開発、外国人観光客向けのお米料理の提供、お米の栄養素をPRするキャンペーンなどが挙げられます。
また、スマートフォンアプリを活用して、お米の銘柄や栽培方法、料理方法などを紹介することで、お米に対する理解を深める取り組みも行われています。官民一体となり、お米王国日本にしたいところです。
田植えをする農家がいなくなる!?
農水省が次年度のコメ生産数量を示した食糧部会を開催していた同じころ、茨城県五霞町でドローンを使ったコメの直播(じかまき)栽培の勉強会が開催されていた。
この勉強会は三重県のコメの集荷業者のたっての申し入れで開催されることになった、この集荷業者がいるまちでは「来年田植えする生産者がいない」という事態になり、なんとかまちでコメ作りを続けるために省力化できるドローンで直播する方法を勉強しに来たという経緯がある。
ドローンによる水稲種子直播栽培は始まったばかりで、技術的に解決しなければならない課題も多いが、生産現場では技術的問題を解決できてから取り組むという悠長なことを言っていられなくなっている。勉強会の場を提供した稲作農家も同じで、同社は現在80㌶でコメ作りを行っているが、この内20㌶はドローンによる直播を実践している。
なぜ、直播栽培を導入したかと言うと、この地区でも離農する農家が増加、同社に栽培を依頼する農家が増えた。ただ、これまでのように田植え(移植)栽培では人手不足もあって作業をこなし切れないことがハッキリしたからである。
追い打ちをかけた「コロナ禍」
日本の稲作農家戸数は、1995年は201万戸あったが、2025年には37万戸、30年には10万7000戸に減るという予測をしている調査研究機関もある。なぜこれほどまでにコメ作り農家が減って行くのかというと、農家の平均年齢は現時点ですでに68歳になっており、今後数年で大量離農することが避けられないからである。
以前、大規模稲作農家や新規就農者、農協の組合長らが集まった席で「コメの消費減が先か、コメ作りを止める農家の急増で生産量が足りなくなるのが先か」が話題になり、大規模農家は現場の変化を肌身に感じていることもあってか「生産する農家がいなくなるのが先」と言っていた。現状を見るとそれが現実味を帯びている。
それを加速させたのがコロナ禍とも言える。