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japan-eat’s blog

食に関する事や飲食店の運営に関する内容を記載してます。

「ランチ食べ放題」で客が元をとれないワケ

食事をしたり、サービスを受けたりした時、誰もが心の中に「もったいない」とか「元を取りたい」という気持ちを持っています。例えばランチブッフェ(ここでは「立食」よりも「食べ放題」の意味で使います)が典型例です。

もし注文したら「同じおカネを払ったのだから少しでもたくさん食べなきゃ損だ」と考えるのは自然なことです。

 

「食べ放題」が好まれる3つの理由とは?

ランチブッフェというのは、多くの人に人気があります。

その理由

(1)決まった料金で好きなだけ食べられるからお得感がある
(2)好きな物が好きなだけ食べられる
(3)いろいろ種類がたくさんあるので楽しめる

といったところにあるのでしょう。

確かに目の前にごちそうが並んでいると、あれもこれも食べたくなるという気持ちはよくわかります。

例えば料金が2000円だったら、絶対2000円以上食べて元をとってやろうという気持ちにもなりがちです。その結果、お腹が一杯なのについ無理して食べ過ぎてしまうということは、よくあることです。

ところが、相手も商売です。

当然、自分のところが儲からないような価格設定にはしていないはずです。例えば最もシンプルでわかりやすいのは「ドリンクバー」です。

通常、ファミリーレストランなどではドリンクバーはだいたい200~300円ぐらいの価格ですが、原価はせいぜい5円~15円程度(15円〜30円の場合も)だと言われています。
(企業規模により変動)

これで元を取ろうと思ったら20杯も30杯も飲まなければならないわけで、これはどう考えても無理です。

ランチブッフェの場合は

これに加えていくら大食いの人がたくさん食べても絶対に元は取れない構造になっているのです。

そもそも飲食店のコスト構造は、固定費と変動費から成り立っています。店を開けたことで、お客さんが1人もこなくてもかかるのが固定費(家賃や光熱費等)、来た人数分に比例してかかるのが変動費(食材費等)です。したがってお客が1人も来なければ固定費分がまるまる赤字です。お客が1人来れば(1人当たりの料金-変動費)だけ赤字が減ります。

したがってたくさん来れば来るほど、儲けは多くなります。

 

例えば

あるレストランで普通の定食の値段が1000円だとします。

変動費を300円だとすると、このお店では1人のお客が来るたびに700円の利益(固定費含まず)が出るわけです。もしこのお店の固定費が10万円だとすると、150人以上お客が来れば700円×150人=10万5000円ですから、固定費を入れても利益が出ることになります。

一方

このお店がランチブッフェを設定し、値段が2000円で食べ放題とすればどうなるでしょう。仮に来たお客が3人前食べたとしても変動費は300円×3=900円ですから、このお客から上がる利益は1100円となり、むしろ400円増えます。

つまりお客は「3人分食べてやったぞ、どんなもんだ!」と思っていても、店も普通の定食以上にがっちり儲かっているのです。笑

別のコスト要因も

料理というものは1人前作ろうが、100人前作ろうが、投入する食材の量が増えるだけで手間が100倍かかるわけではありません。

それに料理を盛り付けて、一人一人の客席まで運ばなくてもいいわけですから、調理や接客にかかる人件費は減ります。

さらに、どれぐらい注文が入るのかわからない一品メニューに比べたら、ブッフェスタイルの場合は、店側で用意していればいいわけですから、食材自体の仕入れコストも安くすることができるでしょう。

これらはコーヒーチェーン店のS・M・L・LLのサイズでも同じことが言えます。

よく大きいサイズの方が分量当たりの価格が安いからお得だと言って大きなサイズを注文する人がいますが、

これもさきほどのコスト構造と同じでサイズが大きい方が店の利益も大きくなります。むしろ飲めなくて残すぐらいなら、最初から小さいサイズを選ぶのが賢明なのです。

 

「元を取りたい」という気持ちがさらに「大きな損」に

食べ盛りの中学生や高校生ならともかく、ある程度の年齢の大人であれば食べ過ぎるということは何も体に良いことがありません。

食べ過ぎてその日1日気分が悪かったり、場合によっては次の日まで胃がもたれてしまったりします。あげくは翌日に体重計に乗るとさらに大きなショックが待ち受けているということになりかねません。

このように「元を取りたい」という気持ちが往々にしてさらに大きな損を呼び込んでしまうということには注意しなければなりません。経済学ではこのようにすでに使ってしまっていて、戻ってこないおカネのことを埋没費用(=サンクコスト)と言い、この場合のランチブッフェの料金がそれにあたります。

サンクコストにこだわり過ぎると損をしてしまうということになりがちです。

本来、サンクコストはもう戻ってこないおカネですから、考えてもしょうがないのです。

もちろん、ランチブッフェが悪いということではありませんし、損得だけで考える必要もありません。

自分の食べたいものが満足の行くように食べられるのであればそれで何も問題はありません。ただ、何とか元を取りたいと思って無理する必要はないということです。

大切なことは、すでに使ってしまったおカネのことはできるだけ考えないようにすることです。常にゼロクリアで考え、「ここからどういう判断と行動をすれば、最も得になるのか」ということを考えるべきでしょう。

 

結局、仕入れ力のある大手が勝者になる世界

「食べ放題」の最大のデメリットは、原価率が高いということです。

提供するメニューによっては、制限時間を設けなかったら、アッという間に原価率100%を超えてしまう可能性もあります。ピザ&パスタは“粉もの”ですから、いくら食べられても原価はタカが知れていますが、それでも具材の選択に失敗すると、これまたすぐ100%に近づいてしまいます。

肉を主食材とする焼肉やしゃぶしゃぶ

なぜ「食べ放題」が成立するのかと言いますと、肉以外のものを積極的に食べてもらうことで、原価を降下させられるからです。

普通の大人は500gの食材を胃袋に収めると満腹状態になります。

ですから、原価の低い食材をできるだけ多く食べていただき、早めに500gラインに到達してもらうことです。

ごはん、麺類、その他の一品ものを大量摂取してくれれば、肉類の量は当然低くなります。また、同じ肉類でも、原価の低い鶏肉を多く摂取してくれれば、原価の高い牛肉や豚肉の比率は下がります。

つまり、食べ放題成功の勘所のひとつは、メニューの訴求に工夫を凝らし、全体的な原価率を引き下げられるかどうか、です。“散らし”の技術ですね。

逆に言うと、“散らし”ができないような業種で「食べ放題」をやってはいけない、ということです。

客単価は取れるが、原価率は高い。

これが食べ放題の特徴ですが、いちばん大事なことは、人件費を下げられるということです。これができなければ、食べ放題をやる意味がありません。

特にキッチンの人件費率が下がらないといけません。

前述のように、調理にプロの技術を必要とするような、また、調理にやたら手間がかかるような業種は「食べ放題」に不向きということです。

一定の売上規模がなければ人件費率は下げられませんので、小規模店の「食べ放題」というものは原則的にありえません。一般的に言って、最低規模でも床面積60坪は必要だと思います。

調理領域が狭く、素材をドーンと売っていく外食を、物販型外食と呼びます。こういうビジネス領域は、仕入れ力のある大手外食業が力を発揮します。仕入れ力だけが優劣を決めると言っても、過言ではないでしょう。

こういう世界で大手とまともに戦っても、なかなか勝てるものではありません。そうだとしたら、「食べ放題」のプロに絶対できないことは何か、弱みは何か、を探求して、そこを衝くビジネスを確立したほうがよほど勝ち目があります。

少なくとも、高度で手の込んだ調理技術と、キメ細かいサービスを必要とする業種には手が出せません。

 

 

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