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japan-eat’s blog

食に関する事や飲食店の運営に関する内容を記載してます。

意外と難しい旅館の経営

最初に、営業している旅館軒数の推移について確認しておきましょう。

厚生労働省が行っている調査によると、2017年度末の旅館の営業軒数は38,622軒です。

2012年度末の同データを確認すると44,744軒でしたので、5年間で13.7%も減少している事が解ります。

では、旅館への需要については、どうでしょうか。

旅館への需要に関するデータとして、国土交通省の調査結果による延べ宿泊者数を確認すると、2017年の一年間では100.6百万です。そして、2012年の一年間では105.9百万でした(共に単位は人泊)。

数字だけを見ると、需要が落ち込んでいるように見えるかもしれません。しかし、その分析は間違っています。旅館の数が減少している為、宿泊者数が減少するのは当然なのです。

むしろ、5年間で旅館の数が13.7%も減少しているのにも関わらず、延べ宿泊者数は4.9%しか減少していないという事に気付いて下さい。単純に計算すると、旅館1軒あたりの宿泊者数は増加しているのです。

また、延べ宿泊者数のデータは「実際に宿泊された数」であり、希望する宿泊が出来なかった分は含まれていません。ですから、本来の需要はもっと多いと考えられます。

 

旅館の経営環境をどう捉えるべきか

ですから、旅館業界全体の状況を数字だけで判断するならば、旅館業界の競争環境は「(1軒あたりでみると)増加する需要を、減少する競争相手と分け合う状態にある」と言えます。

旅館の経営環境が悪化していると考えている旅館の経営者は少なくありません。しかし、冷静にデータを確認してみると、競争環境は決して悪くないのです。

もちろん、廃業する旅館が多い事には理由がありますし、放っておいても楽に儲かる業界でない事は確かです。

 

外国人客は一要素に過ぎません

もう一点、経営環境について正確に理解しておいて頂きたい点があります。それが、「外国人(外国からの旅行客)」という要素についてです。

旅館の経営者の中には、「旅館業界は外国人で成り立っている」といった理解をされている方がいらっしゃいます。しかし、「外国人に選ばれない限り、旅館経営は破綻する」という認識は間違いです。

この点についても、データを確認しておきましょう。

先ほど提示した2017年の延べ宿泊者数のデータの内訳を確認すると、外国人による宿泊者数は8.5百万であり、全体の100.6百万の8.4%に過ぎません。旅館需要の圧倒的過半数は「外国人以外」によるものなのです。

ですから、「外国人宿泊客」については、あくまで「経営の一要素」として冷静に捉える事をお勧めします。

 

経営が悪化している旅館がある理由

このように経営環境は悪くないにも関わらず、現実には、経営が悪化している旅館は少なくありません。

表面的な分析を行うと、旅館の経営悪化の原因として、

「従業員やハードウェア(施設など)に関する問題」

が挙がる事があります。しかし、それらは経営を改善する「手段」に関するものであり、ほとんどのケースにおいて、根本的な原因ではありません。

実際には、「顧客ニーズに応えられていない」という事が経営悪化の理由である事がほとんどです。

もちろん、この「顧客ニーズ」とは、「宿泊してくれた顧客の満足度を上げる」というような単純な意味ではありません。

 

経営改善できない旅館が抱える2つの事情

前述の通り、経営状態が悪化している多くの旅館においては、「顧客ニーズに応えられていない」という状態が発生しています。そして、そのような事態に陥ってしまっている背景には、旅館業界が抱える2つの事情があります。

顧客ニーズの変化

旅館経営を取り巻く事情に関して、真っ先に理解しないといけない事は、

「顧客ニーズが大幅に変化した」という事です。

旅館の経営者の中には、未だに「この地域にある○番目の宿なので、宿泊客は来てくれるはず」といった思考で経営をされている方がいらっしゃいます。しかし、こうした考え方で経営が成り立つのは、かなり恵まれたケースだけです。

ほとんどのケースでは、「消費者が自分の旅館を選んでくれる理由」を一から考えなおさなければならないほどの変化が、既に起きているのです。

インターネットの普及以来、消費者が「旅館を探す方法」や「旅館に求めるもの(内容、水準)」は、「完全に」と言って良いほど変化しました。そして、その変化は、今も続いています。

その結果、「代理店が持つ意味」「競争相手として意識すべき相手」「情報を顧客に伝える手段」なども、ほとんど全てが変わってしまいました。

さらに、消費者の多くは、旅館以外のサーヒス業から、日々改善されるサービスを提供されています。この為、顧客のサービス評価基準も変化し続けているのです。

このような変化に対応しない限り、「顧客のニーズに応えている」とは言えないのです。すなわち、貴方の旅館が応えるべき「顧客ニーズ」とは、このように「以前とは大きく変化した顧客ニーズ」なのです。

 

運営側の感度の鈍さ

しかし、ほとんどの旅館の経営者は、「自分の旅館が選ばれる理由」について、以前と同じような考え方から抜けきれていません。

残念ながら、それでは「顧客ニーズの変化」に対応出来ているとは言えず、経営改善の入り口にすら立てていない事になるのです。

もちろん、目先のニーズの変化に対応しようと努力されている旅館は多いですし、それは大切な事です。しかし、「旅館の経営改善」を考える上では、それだけでは足りないのです。

そして、旅館の運営側が顧客ニーズの変化を十分に実感出来ていないのには、2つの理由があります。

1旅館運営の特性からくる理由です

旅館の経営者は忙しく、長期の休みも取り辛い傾向があります。また、地域密着型であり、外部との交流が限定的である所も多いのです。このような特性から、旅館の経営者が「最新の顧客ニーズ」について十分に実感するのは極めて難しいのです。

自分の旅館が「選ばれなかった理由」について知る手段がないという理由です

顧客ニーズの分析の為には、「自分の旅館以外を選んでいる層(自分の旅館が獲得できなかった層)」が持つ考え方を知る事が欠かせません。しかし、多くの旅館では、そうした情報を把握する手段を持っていないのです。

このような理由から、最新の顧客ニーズについて十分に理解している旅館の経営者はほとんどいません。

 

旅館の経営を改善する方法

ここまで、「旅館の経営が悪化している理由」や「旅館の運営悪化の背後にある事情」について解説してきました。ここからは、「どうすれば、旅館の経営を改善できるのか」という点について解説します。

改善の為のステップ

改めて確認しておきますが、旅館への需要は落ち込んでいません。また、業界全体の数字を分析する限り、競争が激化しているという事実もありません。ですから、貴方の旅館が正しくニーズを追えるようにさえなれば、貴方の旅館の運営状態は改善します。

その為に貴方の旅館がするべき事は、「貴方の旅館が狙うニーズ」を正しく定め直す事です。その上で、「そのニーズを満たす為の体制を整える」「そのニーズを持っている潜在顧客層に向けてアピールする」といった対策を行う必要があります。

改善の為の対策が失敗する理由

しかし、多くの旅館の経営改善は、

「狙うニーズの設定段階」

で失敗してしまっています。。

 

失敗する旅館は、「経営改善には結びつかないようなニーズ」を定めてしまったり、「自分の旅館では満たせないようなニーズ」を定めてしまったりします。

言うまでもない事ですが、間違ったニーズを定めて改善活動を開始しても、経営改善は成功しません。

勿論、ニーズについての検討や、それに続く対応策の実行は簡単なものではありません。そして、旅館の経営者の多くは、こうした作業を得意とはしていません。しかし、こうした作業は、旅館の経営改善には不可欠です。大変でも、やり遂げなければなりません。

 

 

Wi-Fiや多言語対応など、インバウンド向け施策を行う

客室のWi-Fi環境を整える、英語を始めとした多言語表記への対応(公式サイト、館内マップ、注意書きなど)、キャッシュレス決済など、外国人観光客がきてもスムースに滞在できる仕組みを整えることが大切です。

これらは外国人が日本に旅行に来て「困った」と答えるランキング上位にくるもの。年々改善されつつありますが、地方の小規模な旅館などでは、まだまだ手が回っていないところも多いようです。

こうした設備に少し手を加えるだけで施設全体の快適性が向上し、施設の魅力がアップします。

 

インターネット予約管理システムを導入する

ひと昔前は、ホテルや旅館の予約といえば旅行代理店を介して行うものでした。しかし近年は、お客が自らインターネットサイトを使って予約するのが主流となっています。

旅館の公式サイトから予約を受け付けるのはもちろん、OTAと呼ばれるインターネット上で予約を受け付けるサイトにも登録しておきましょう。

これから旅行しようと考える人のほとんどが、こうしたOTAを見て複数の宿泊施設を比較しているからです。登録しておくのとしていないのとでは、集客力に大きな違いがあらわれます。

また複数のOTAに登録する場合は、サイトコントローラー(複数のOTAの部屋在庫を一括で管理するシステム)を導入し、ダブルブッキングを防ぎます。

 

口コミサイトからお客のニーズを発掘する

OTAをはじめ、宿泊施設の情報を掲載しているサイトには口コミ機能がついている場合が多いです。実際に施設を利用したお客からの忌憚のない意見は参考になる情報が多いため、目を通して改善に役立てましょう。

また、宿泊後の感想を投稿してくれたお役に対して、お礼のコメントを返すことも忘れずに。こうした小さな対応がリピーターをつくるものです。

 

SNSを活用して情報発信する

ホテルや旅館を探そうと考える人は、何を見るでしょうか。ピンポイントで旅館の公式サイトにやってくるケースは非常に稀で、大抵は知人に直接聞いたり、SNSの投稿をチェックしたりするものです。

SNSは、海を隔てた外国人観光客にもダイレクトに情報を届けられる便利なツールです。旅館からも積極的に情報発信をしていきたいところですね。

例えば地場の素材を使った料理がおすすめの旅館なら、できあがった料理だけでなく、調理中や生産者の顔、育てている様子などの写真や動画を上げてみてはいかがでしょう。

ただ料理の写真だけでは無機質な印象を与えますが、できるまでの過程を見せることで奥行きが生まれます。すると、「もっと知りたい」「食べてみたい」「見てみたい」といった気持ちに働きかけることができるでしょう。

 

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