スーパーやデパートの精肉コーナーへ行くと、「ばら」や「ロース」、「かた」などさまざまな部位の牛肉が並んでいます。牛肉をメインにした料理を作るために買い物へ行ったものの、その種類の多さにどの部位を買えば良いのか迷ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- 牛肉の部位ごとの特徴
- 煮る時間が短めの煮物料理には
- じっくり煮込む料理には
- 加熱中の肉に起こる変化
- 硬さ
- じっくりコトコトが鉄則!弱火で長時間煮込む
- 香味野菜をプラスして風味豊かな煮込み料理に
- お肉を焼くときは、最初は弱火で焼くと固くならない
- 弱火で3時間は煮る!
- 赤ワインとたまねぎにつけてお肉を柔らかくする
- 水煮・煮込みに向いた部位とお肉の特徴
- 水煮はお肉の本当の味わいを知る調理法
- 水煮・煮込みに向いた部位
- 水煮の作り方
牛肉の部位ごとの特徴
一般的には、よく運動する筋肉の部位は肉質が固めです。逆に、筋肉の運動量が少ない部位は肉質が柔らかくなっています。固い部位は長く煮込めば煮込むほど柔らかくなりますが、一方でもともと柔らかい部位は長時間煮ると逆に固くなってしまうため、料理に応じて使い分けることが重要です。
煮る時間が短めの煮物料理には
調理時間が30分以内の煮物料理には「かたロース」と「ばら」が適しています。煮物を作る際には、ぜひ参考にしてください。
かたロース
かたロースは味が非常に良いのですが、スジや膜が他のロースに比べて多いため、厚切りにして使う料理には不向きです。薄切りにして肉じゃがなどの煮物に用いたり、すき焼きやしゃぶしゃぶに使用したりすると良いでしょう。
バラ肉
じっくり煮込む料理には
かた
かたは肉の味が濃厚な部位であり、薄切りにしてすき焼きやしゃぶしゃぶにしてもおいしくいただけますが、ゼラチン質が多いため煮込み料理に最適です。うま味成分も豊富に含まれているかたは、角切りにしてシチューやスープなどのじっくり煮込む料理に用いると良いでしょう。
バラ
ばらもかたと同様に、薄切りにして煮物料理にも使いますが、角切りであればボルシチなどの長時間煮込む料理に向いています。赤ワイン煮込みにすれば見た目も豪華になるため、おもてなしの場にもおすすめです。和風の味付けがお好みの場合は、牛肉の大和煮にすると良いでしょう。
外もも
「そともも」もカレーやシチューなどによく用いられます。購入する際には、「もも」と間違えることがないように気をつけてください。うま味成分を豊富に含んだそとももは煮込み料理に適していますが、ももは加熱し過ぎると固くなってしまうという性質があります。
加熱中の肉に起こる変化
肉は加熱することで収縮します。厄介なのは、加熱によって収縮する部分と、加熱を続けることによって軟化する部分が混在している点です。
煮込み用の肉として売られているスネ肉なんかは、スジが多いため焼く系の料理に適していません。実際に焼いて食べても硬く、嚙み切れないといったところです。これは筋に含まれるコラーゲンが収縮して硬くなったためです。
コラーゲンは短時間の加熱で収縮しますが、長時間加熱すると徐々に軟化して柔らかくなります。そのためスネ肉や筋の多い部分は煮込むと美味しいと言われています。
一方でコラーゲンの少ない筋肉質のアクチンやミオシンといった赤身のタンパク質は、加熱し続けても軟化しません。
徐々に硬くなり、最後は味が抜け、パサパサした食感になります。以上のことから、加熱調理には、コラーゲンが適度に軟化する時間の加熱が必須であり、赤身肉がパサつかない適度な加熱時間に調理時間を抑える必要があると考えられます。
これは難しい方法で確認する必要はなく、100℃付近で適当な時間加熱して食味の変化を追っかければ加熱時間の目安になります。
硬さ
加熱時間10-40分までは全体的に硬く、煮込み料理としては不十分です。
加熱時間が80分を超えると筋の部分が柔らかくなります。赤みの部分のコラーゲンが軟化して肉がホロホロと呼ばれる状態になるのは240分以上の加熱が必要です。
それから味については、加熱時間でうま味が増すということありません。
加熱時間が長くなると、赤身の部分がパサつき、味が抜けます。これが顕著になるのが240分を超えたところからです。300分ではパサつきや味の抜けが目立ってきます。
80分前後の加熱をするとコラーゲンは柔らかくなり、240分を超えるとホロホロの状態へなります。
240分以上の加熱は、肉がほどけてホロホロの状態になりますが、これを過ぎると味が抜けたり赤身の部分がパサつき始めるので、加熱時間は300分以内にする、デミグラスソースなどの濃くて肉の味がわかりにくい調理をするといった工夫を合わせて行う必要があると考えられます。
じっくりコトコトが鉄則!弱火で長時間煮込む
肉すじや結合組織は、長く煮込めば煮込むほど、とろけるようにやわらかくなるので、 状態を見ながら長時間(最低2時間)煮込むほうがおいしく仕上がります。
火加減は弱火にします。強火だと吹きこぼれたり、鍋底も焦げつきやすくなります。また、内部組織が必要以上に収縮して肉汁の流出量も増えてしまいます。
同じ加熱でも、オーブンによる加熱もあります。
オーブンというと、焼くだけのイメージがありますが、煮込み料理にも使えます。 オーブンの場合は、鍋全体にやわらかい間接的な熱が伝わるので、温度分布のムラがなく、ガスコンロでの加熱のように、鍋底が焦げつく心配はありません。
また、入れっぱなしにしておけるので、長時間の煮込み料理にはたいへん便利です。
香味野菜をプラスして風味豊かな煮込み料理に
ブラウン系のシチューは、たまねぎ、にんじん、セロリー、パセリ、リーキ(ポワロ、ポロねぎ、西洋ねぎともいう)、 にんにく、こしょう、ローリエ、タイム、セージなどを一緒に煮込むと、風味豊かに仕上がります。 ホワイト系のシチューには、たまねぎ、ローリエ、タイム、セージなどが合います。
また、数種の香草を取り合わせてたこ糸で束ねたブーケガルニ(香草の束)を一緒に入れて煮込むことで、風味や香りがプラスされ、 味わい深い料理に仕上げることができます。
お肉を焼くときは、最初は弱火で焼くと固くならない
やってしまいがちなのが、お肉を焼いたときにギュッと締まって固くなりすぎてしまうことではないでしょうか。
お肉が固くなってしまう理由は、いきなり強火で焼いてしまうからです。
お肉を強火にかけると、お肉の細胞が高温によりギュッと収縮して固くなってしまいます。そんな経験をしたことはありませんか?
お肉の細胞が収縮を始めるのは、45~55度の間と言われています。
つまり、45度未満の温度(低めの温度)で焼けば、固くならないのです!
最初は弱火でじっくり焼きましょう。
弱火で3時間は煮る!
ビーフシチューを煮込むときの火加減は弱火。これは覚えておいてください。
お肉に早く火を通そうと強火で煮込むのは、お肉が固くなってしまうので逆効果です。ソースが鍋底にこびりつく原因にもあり、いいことがありません。
お肉が柔らかくなるには、弱火で最低2時間は必要です。
お肉の組織は、弱火で長い時間をかけて煮込むことで、とろけるように柔らかくなります。(煮込み時間は目安です。使用する牛肉の部位によって調整してください)。
また弱火で煮込むと、鍋の底で発生した気泡が上に上がってきます。ふつふつとしたあの泡ですね!この小さな泡がシチューをまろやかにし、弱火の安定した温度がお肉にも伝わって柔らかくしてくれます。
鍋の下の方で発生した気泡を鍋内を対流させたいので、使う鍋はできれば深鍋が好ましいです。
レストランに行くと、深めの鍋でシチューをつくていることを見たことがありませんか?
これにはわけがあったんですね!
あくまであればですので、お手持ちのお鍋でも大丈夫です!
余談ですが、煮込むときはふたをしないようにしましょう。ふたをしてしまうと、材料の匂いが閉じ込められてしまい、臭みの原因にもなります。
赤ワインとたまねぎにつけてお肉を柔らかくする
ビーフシチューのお肉を柔らかくするためには、何よりも時間が必要です。牛肉は豚肉や鶏肉と比べると固く、それだけに柔らかくするには時間が必要なのです。でも煮込む時間がないよ!という方におススメする方法が、お肉を赤ワインとたまねぎに漬けておく方法です。
材料
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赤ワイン・・・・お肉が浸るくらいの量
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たまねぎ・・・・1個
作り方
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お肉を常温に戻しておく。
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たまねぎをすりおろす。
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容器(ジップロックでも可)にお肉と材料をすべて入れる。
🔳ビーフシチューといえば、赤ワインとたまねぎが定番ですが、どちらにもお肉のタンパク質を柔らかくする作用があるのです。また、酢やキウイなど酸が強い食材もお肉を柔らかくしてくれます。
🔳事前に赤ワインとたまねぎにお肉を漬けておき、できれば一晩(時間がない方は3時間くらい)冷蔵庫でお肉を漬けてみてください。
🔳キッチンペーパーで水気を軽く拭い、あとは科学1と2の手順でお肉を焼いてくださいね!間違っても、いきなり強火で焼かないようにしてください!
◽️この方法を使うと、1時間半〜2時間ほどでお肉がとろとろになりました。
煮込む時間がない方は、お肉を料理する前に漬け込む方法も試してみてください!
水煮・煮込みに向いた部位とお肉の特徴
水煮・煮込みに向いた部位は、一般的な牛、豚、鶏を例として以下の通り。
- 牛……肩、肩ロース、モモ・外モモ、スネ、タン、テール等
- 豚……肩、肩ロース、モモ・外モモ、ウデ、タン、豚足等
- 鶏……手羽、胸肉、モモ肉等
筋張っていたり、肉質が硬かったりする部位、赤身が中心であって旨味が強い部位が向いています。
水煮はお肉の本当の味わいを知る調理法
例えばとても上質のお肉が手に入った場合、最高に美味しく食べたいと思うと、思い浮かぶのはステーキや焼肉が一般的かと思います。しかし、肉通と呼ばれるような人たちに聞くと、「お肉は水煮にするのが一番美味い」と言われます。
水煮とはつまり、お肉をシンプルに茹でること。お肉を適切な温度でじっくりと茹でることで、とろけるようにやわらかく、こっくりとしたお肉本来の味わいが染みわたるように感じ、焼き調理で味わえるガツンとした肉感ではなく、あたたかな家庭料理らしい味わいになるのです。
とても珍しい調理法のように思えますが、ヨーロッパでは一般的。肉のやわらかさよりもしっかりした旨味を重視する海外では、筋張っていたり硬いお肉を思い思いの煮込みで味わいます。
お肉を水煮にすることによって得られるメリットは以下の通り。
- 1、硬いお肉をやわらかにして食べることが出来る
- 2、お肉本来の味が最もよく分かる
水煮・煮込みに向いた部位
水煮やその他煮込みには、筋張った部位など、肉質が硬めの部位が向きます。そのような部位は長時間煮ても煮崩れがしにくいですし、硬めではあるものの赤身が中心であるなど、旨味が濃い部位でもあります。
一般的な牛・豚・鶏を例として、水煮・煮込みに向いた部位は以下の通りです。
豚……肩、肩ロース、モモ・外モモ、ウデ、タン、豚足等
鶏……手羽、胸肉、モモ肉等
水煮の作り方
- 解凍したお肉を5~15%の塩水に入れて1~2時間つける
- 赤くなった水を取り替える
- ①~②をお肉が白っぽくなるまで繰り返す