立春から数えて88日目にあたる八十八夜。昔は茶摘みを行う目安とされ、「八十八夜に摘んだお茶を飲むと長生きする」といわれてきました。その一方で「お祝いの席に緑茶はタブー」とする風習もあります。
結納や婚礼の席で緑茶はタブー?
地域によっては「芽出たい」
現代では気にしない人が多いかもしれませんが、結納や婚礼といったお祝いの席に「緑茶を出してはいけない」といわれることがあります。
理由は「お茶を濁す」や「茶々を入れる」といった言葉に通じることにあるようです。めでたいことがその場しのぎでごまかされたり、邪魔が入ったりすることがないようにとの思いから、そのような言い伝えが生まれたといわれています。
そのため、今でも多くの地域では、お祝いの席に緑茶ではなく桜湯(桜茶)や昆布茶が出されることが一般的。桜湯は、塩漬けの桜の花びらを茶碗に入れてお湯を注いだもので、縁起が良く華やかな見た目です。また、昆布茶は「喜ぶ」に通じることから、めでたい席に好まれています。
お茶にまつわる慣用句には、朝に飲む習慣をすすめるものが多くあることがわかります。
○朝茶はその日の難逃れ
朝にお茶を飲むと、その日一日災いから逃れて元気に過ごせるという意味。
○朝茶は福が増す
朝のお茶は難を逃れるだけでなく、幸せなことが増えるという意味。
○朝茶は七里帰っても飲め
朝茶を飲むのを忘れて出かけたら、たとえ七里(約28キロ)の距離まで来ていても、戻ってお茶を飲むべきという意味。朝のお茶が体に良いことのたとえ。
○朝茶に別れるな
お茶は体に良いので毎朝飲もうという意味。飲み忘れると縁起が悪いとも。
今でこそ、さまざまな分析や研究が進み、カテキンやテアニンなど緑茶に含まれる健康成分が注目されていますが、昔の人は経験上、体に良いと知っていたのですね。
古くから日本人に親しまれてきたお茶にまつわる言い伝えは、ほかもたくさんあります。知れば知るほど、普段なにげなく飲んでいるお茶に新たな発見があるかもしれません。今年も新茶の季節を楽しみましょう。
桜は江戸時代の初頭まで
逆に縁起が悪いものとされていたとの説もあります。
桜の花は咲いたらすぐ散って、色褪せてしまうことから「散り急ぐ」や「心変わり」を連想させることが理由だったとか。
そのため、桜の季節には結納や婚礼自体を避ける風習があったようです。
お祝いの席に避けるところがある一方で
地域によっては、結納茶としてお祝いの席に欠かせない縁起物とするところもあります。お茶の木は、摘んでも何度でも芽が出るので「芽出たい」と縁起の良いもの。
また、痩せた土地でも成長できることから、困難な中でもたくましく生きていくといった願いを込めて出されることもあります。
お茶を贈答品にしてもいいの?
出産祝いや結婚祝いに向いているか
お中元やお歳暮などで贈答品に選ばれやすいのが日本茶です。しかしお茶は、一般的に弔辞の際に利用されることが多い品です。
そのため「縁起が悪いもの」「お葬式をイメージしてしまう」という印象を持つ方が多く、お祝い事の贈答品には不適切と考えている方がいるのです。
また、お茶は日本のほとんどの家庭にごく普通にあるものになります。そのため、お茶を贈答することは「急で準備ができていなかった」という意味合いになってしまうことがあるのです。お葬式など弔辞の準備を事前に行うのは、不謹慎であり失礼だという考え方もあります。さらに高齢の方はお茶が好きな方が多いため、還暦のお祝いの贈答品として選ぶこともあるでしょう。
しかし、お茶は香典返しに使われることから、お葬式を連想させるため還暦のお祝いでは好まれないこともあるのです。このように、お茶はお祝い事との贈答品としてはNGとされることがあります。
しかし地域によって考え方は異なりますし、お祝い事では縁起が良いという考え方も広く根付いているのです。そのため、お祝い事の内容によって、またよく知った間柄の方への贈答品として選ばれることが多くなります。
結婚祝いや出産祝いなどでは、お茶は良い意味にとらえられることが多いので、贈答品として選ばれやすい商品でもあるのです。
お茶は出産祝いや結婚祝いなどにもおすすめ!その理由と選び方
お茶の木は植え替えが難しいので、お嫁さんが嫁いだ家に根付くことで一生を添い遂げて欲しいという意味と願いが込められています。
また、長寿を祝う「茶寿」という言葉があります。茶という漢字をバラバラにしてみると、「十」と「八」でなっていることがわかるでしょう。
また「10」と「10」、「88」という数字を足すと「108」になります。茶寿は「108歳のお祝い」とされているので、親しい方がお茶を贈答品として贈ることがあるのです。
このように、お茶には今後の願いやおめでたいという意味合い、長寿を願う意味も込められています。