Web Analytics Made Easy - Statcounter
View My Stats

japan-eat’s blog

食に関する事や飲食店の運営に関する内容を記載してます。

5年?10年?15年?老舗?「いつから」から?名乗る?名乗らない?

「老舗」という言葉には、心をくすぐられてしまうのですが、「創業20年の老舗ラーメン店」と言われて、アレっ、老舗ってもっと古いんじゃないの?と思うことも……。実際、創業何年くらいで「老舗」と言えるのでしょう。

 

辞書では?

まず辞書で「老舗=しにせ」の意味をおさらいしましょう。

 

①先祖代々の業を守りつぐこと。
②先祖代々から続いて繁昌している店。また、それによって得た顧客の信用・愛顧。(「広辞苑第6版」)

……創業してからの年数については触れていません。文字通りの「古い店」というだけの意味で使われることはほとんどないようです。

もう少し詳しく書いてある「日本国語大辞典」では、

①父祖の家業を守り継ぐこと。
②商売・経営をして信用を得ること。
③伝統、格式、信用があり、繁昌している店。
④守りつづけている方針や主義。また、その人の持ち前や得意としていること。

これらの辞書を見ると、「信用」や「繁昌」というのがキーワードとして浮かびます。

「信用」。私は老舗の伝統、知名度のようなものにひかれているのだと思うので、納得です。「繁昌」は老舗の条件としてあまり意識したことはなかったのですが、創業100年といっても今にも潰れそうなお店には、確かに「老舗」というプラスのイメージがある言葉は似合いませんね。。。

 

語源は?

「しにせ」は、サ行下一段活用の動詞「為似せる・仕似せる」(しにせる)の連用形の名詞化だそうです。

「しにせる」
①似せてする。まねる。
②家業を絶やさず続ける。先祖代々の家業を守り継ぐ。
③長い期間商売をしていて店の信用もでき、資産をつくる。
④仕事を覚える。長年そのことをし馴れて年季を入れる。(「日本国語大辞典」)

世阿弥の能楽論書「風姿花伝」(1400年頃・室町前期)に「かようの万物の品々を、よくしにせたらんは」、井原西鶴の浮世草子「日本永代蔵」(1688年・江戸中期)に「仕にせおかれし商売」の用例が見られます。似せる、まねするのが仕事の基本で、そこから家業が発展していくのかな、と想像できます。

また、「老舗」を音読みで「ろうほ」とも読みます。「老」→経験があるさま、「舗」→店、の意味があるので、「仕似せ(為似せ)」の意味とぴったり、ということで「しにせ」の読みで使われるようになったと考えられます。

朝日新聞の紙面では、創刊時の1879年、餅屋について「長く老舗し商売にて…」という表現が見られます。名詞で使うことがほとんどの今の用法とは少し違っていますね。当時の紙面広告でも「老舗」だとアピールする文字が多く見られます。

 

創業○年から?

ここまで見てきて、年数や何代続くかということについて、はっきりとした定義はわかりません。「創業○年だから老舗」とすっきり片付けられる問題ではなく、人によって創業何年以上を老舗と感じるのか、誤差があって当然かも。でも「代々」というのだから1代目で老舗とはいわないのでは、という気はします。

目安になるものはないでしょうか。そこで、企業の信用調査をする会社や、「老舗」が集まって作る団体ではどんな基準を設けているのか、チェックしました。

・帝国データバンク→創業100年以上を「長寿企業」と呼ぶ。倒産企業の統計では「老舗」として創業30年以上の企業をカウント

・東京商工リサーチ→創業30年以上を「老舗」と定義

・日本老舗サイト→100年以上、または3代以上

・東都のれん会→東京で3代・100年以上

・エノキアン協会(1981年設立の老舗企業の国際組織。本部・パリ。現在39企業が加盟)→創業200年以上、創業者の子孫が現在でも経営者もしくは役員であること、家族が会社のオーナーもしくは筆頭株主であること、現在でも健全経営を維持していることが入会基準。

1980年代には「企業の寿命30年」説がいわれ、近年の世界的な金融危機では「100年に一度の不況」のフレーズがよく使われました。企業にとって、30年や100年のラインが発展を阻むひとまずの壁になるのかもしれません。老舗ってだいたいこんな感じ?というのがつかめたでしょうか。

帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」によると、収録されている約125万社のうち、創業100年以上の企業は2万2219社(2010年8月時点)。明治以前に創業した企業がこんなにたくさんあるのですね。そういえば今年、山梨県の「西山温泉 慶雲館」(西暦705年に創業)が「世界でもっとも古い旅館・ホテル」としてギネス世界記録に認定されたというニュースを見て、驚いた記憶があります。創業1300年を超す旅館です!

日本には、創業時期が100~200年前の企業が2万1028社、201~300年前が586社、301~400年前が414社、401~500年前が152社、500年超前が39社あるそうです(帝国データバンク調べ、2010年8月時点)。

日本、というより世界でも最も古い、とされているのは大阪市天王寺区にある寺社仏閣建築の「金剛組」。西暦578年の創業で、飛鳥時代(聖徳太子が活躍した頃です)から続いていることになります。朝鮮半島の百済から招かれた宮大工が四天王寺を建立したのが始まりだとか。

2000年代に経営危機に陥りますが、高松建設(本社・大阪市)の支援を受け、債務を切り離した新会社を設立するなどして存続し、1400年以上の歴史は守られました。

 

老舗はしなやかに

「TANAKAのゴールド」でおなじみの田中貴金属工業が、極小の金の粒を使い前立腺がんの診断キットを開発したときいて、医療分野でも活躍していることに驚きました。
「田中貴金属グループ」は1885年に両替商として創業した老舗。老舗というと、保守的、割高などのイメージを持たれることもありますが、長く続いてきた企業を見ると、時代のニーズに応えて発展してきたことがわかります。老舗は古くて新しいのです。

「老舗」と名乗るために必要なのは創業○○年、の数字ではなく、培ってきた「信用」などの数字に表せない部分なのでしょう。「ネット広告の老舗 創業9期目で黒字転換」という記事見出しをみたことがあります。明らかに若い会社でも、その業界では信頼を得ている、古株だという意味合いを強調したい時に「老舗」という。そういう使い方はアリ、なのかもしれません。

 

世界の「shinise」へ?

「老舗」について改めて調べてみると、この「老舗」という言葉一つで、信用、技術力、ブランド、伝統など、はっきりとは伝えにくい多くのことを表せる。日本らしい味わい深い言葉だと思います。「老舗」がますます好きになりました。

創業何年以上が老舗なの?という疑問に決着はつきませんでしたが、今や「世界語」のsake(酒)、futon(布団)、karaoke(カラオケ)、mottainai(もったいない)……などに続き、「日本発」の言葉として「shinise」も世界に羽ばたいてほしいなと思います。

 

創業100年以上の老舗は全国で3万社以上

東京商工リサーチの「全国老舗企業調査」によると、2017年に創業100年以上となった老舗企業は、全国で3万3,069社あるという。2012年8月の前回調査より5,628社(20.5%)増加した。
最古の企業は上記の金剛組だが、2位は華道「池坊」の一般財団法人池坊華道会(京都府、587年創業) 、次いで武田信玄や徳川家康も訪れたとされる旅館業の西山温泉慶雲館(山梨県、705年創業)と続く。業歴1000年以上(創業1017年以前)は7社あった。
業種別では、「清酒製造業」(850社)、「貸事務所業」(694社)、「旅館,ホテル」・「酒小売業」(それぞれ693社)がトップ3。地域別では、全国で企業数に占める老舗企業の割合(老舗率)のトップは北陸。

加賀藩前田家の城下町として発展した金沢のほか、古くから温泉地として栄えた地も多く、漁業や眼鏡フレームの製造、薬売りなどの地場産業が今なお盛んなのが強みのよう。
老舗企業の売上高トップは、日本生命保険(1889年創業)で7兆7,448億円。

次いで、JXエネルギー(1888年創業)が6兆3,695億円、丸紅(1858年創業)が6兆1,277億円)となっている。売上げ規模では、「1千万円以上1億円未満」が1万853社(構成比32.8%)と最も多い。

スポンサーリンク