人が活動的に日常生活を過ごすうえで、重要な役割を占める筋肉や骨。改めて意識することはなかなかありませんが、生きるうえで欠かせない体の機能といえます!
- 筋肉は年齢とともに落ちる
- 更年期を迎えたら気をつけたい骨粗しょう症
- 筋肉量の多い人は骨密度が高いーー筋肉と骨の意外な関係
- アスリートこそ「骨を鍛える」
- アスリートと骨粗しょう症
- 筋肉と骨を守るために筋トレを取り入れよう
- 骨強化には適度な運動が必要
- 骨粗鬆症対策に日光浴と栄養摂取が大切
筋肉は年齢とともに落ちる
人が生きるためには、筋肉が欠かせません。特に歩く際に使うような太もも・お尻・体幹の筋肉は、日常生活を送るために重要な役目を果たす筋肉といえます。
しかし筋肉は日常的に使っていても、年齢とともに徐々に落ちてきてしまいます。そのため医療が進み、栄養環境がよくなって平均寿命が延びている日本では、加齢による筋力低下を指す「サルコペニア」や虚弱状態を指す「フレイル」などが問題視されるようになりました。
個人のためにも社会のためにも自由に動かせる体は大切
せっかく長生きをするなら、体を自由に動かせたほうが人生を楽しむことができます。また一人ひとりが自分で体を動かして生活できることで、介護が必要な人の数が減り、社会全体の負担も軽減されます。
このようなことから、筋肉など体の機能を維持することの重要性に注目が集まっています。
更年期を迎えたら気をつけたい骨粗しょう症
また筋肉と同様に体の機能において重要なのが、骨です。骨も年齢とともに、特に更年期をきっかけにもろくなりやすいことが知られています。
一度骨折などによって日常生活が困難になると、筋肉量の低下にもつながり、寝たきりなどの原因になることもあるため注意が必要です。
女性と男性では更年期の時期が異なる
更年期を迎えるタイミングには、男女差があるといわれています。女性の更年期は50代ころからはじまり、女性ホルモンの分泌が急激に減少することで骨密度の低下が生じやすくなります。
一方で、男性の更年期は70歳以降にはじまることも多く、男性ホルモンの減少によって骨密度の低下がみられます。
このように女性は更年期がより早く訪れることが多いため、骨の健康に注意する期間もそれだけ長くなります。
筋肉量の多い人は骨密度が高いーー筋肉と骨の意外な関係
実は筋肉の量と骨の丈夫さには相関性があることがわかっています。65歳以上の日本人3000人を対象に行った疫学調査によれば、筋肉量の多い人は骨密度も高いことがわかったそうです。
筋肉量と骨密度の直接的な関係についてはまだ詳しくわかっていません。
しかし!考えられることとして
筋肉量が十分あることにより骨に力学的な刺激(メカニカルストレス)が加わりやすいことが挙げられます。筋肉が十分にあると日常生活を活動的に送れるようになり、体を動かすことで骨に力学的な刺激が加わりやすくなります。
これにより骨の形成が促され、骨が丈夫になるのではないかと考えられています。
アスリートこそ「骨を鍛える」
骨は、私たちの身体を支える土台です。建物も土台がしっかりしていないと振動に弱いのと同様、体も骨が脆いと衝撃に耐えられず、折れたり亀裂が生じたりします。ましてや、スポーツ選手であれば、一般の方以上に骨の強さが求められます。
スポーツ時の骨への負担は決して小さなものではありませんが、運動するにあたり、「骨を鍛える」ことは軽視されがちです。
鍛えられていない骨は、筋力不足と同様、ケガやパフォーマンスの低下をもたらします。また、骨折によってボディバランスが崩れ、選手生命が絶たれたアスリートも少なくありません。
アスリートと骨粗しょう症
運動は骨に関係する細胞に刺激を与え、骨を強化する効果があります。しかし、それだけでは不十分です。運動によって骨を鍛えるのと併せて、カルシウムなどの栄養素を補給することが必要です。
ただ、運動で汗を大量にかけば、骨の材料となるカルシウムは流出します。また、疲労による胃腸の吸収力低下や、水分補給による尿量の増加などで、運動時にはカルシウムを失う機会が多くなります。
さらに減量目的で過度な食事制限を行うと、骨に十分な栄養素が行き渡らなくなったり、減量のストレスからホルモンバランスが乱れてエストロゲンの減少を招き、疲労骨折や骨粗しょう症のリスクが増加します。
アスリートは筋肉を鍛えることばかりが重要視されがちですが、骨は目に見えないからこそ、ケアに十分注意を払う必要があります。筋力+骨のダブルケアが、ライバルに差をつける秘訣になるかもしれません。
筋肉と骨を守るために筋トレを取り入れよう
人は年齢を重ねると自然に筋肉や骨が弱くなっていきます。
筋トレを行うことで筋肉が鍛えられることはもちろん、骨に刺激が加わり骨密度の向上も期待できます。
特に女性は、40代くらいから筋トレを取り入れることで、更年期による骨粗しょう症の予防など将来に向けた準備を行うことができます。
いつまでも元気な体を維持するためにも、簡単な筋トレするなどできることからはじめてみてはいかがでしょうか。
骨強化には適度な運動が必要
骨は身体の支持作用があり、骨密度低下は骨量が低下し、骨折のリスクが高まります。骨強化には、筋力強化、適度な日光浴や栄養、そして骨への物理的刺激が必要です。
筋力と骨密度は比例関係にあるといわれています。筋は関節をまたいで腱となり骨に付着します。筋力トレーニングを行うと個人差はありますが、筋が肥大します。
肥大した筋
収縮力が大きくなり、付着する骨も適応する為に強度を高める必要がでてきます。結果、筋力トレーニングにより骨密度が高まるのです。筋力トレーニングには、様々な種目がありますが、その中でもスクワットは骨密度増加に非常に有効な種目であると考えます。
骨強化には
筋力強化の他に骨に物理的刺激を与えることも有効です。
例えば、空手家が正拳や手刀、そして脛などを鍛えるために、硬いものを叩いたりして当てる部位の鍛錬をします。鍛錬することで骨に刺激が加わり、骨強化を行っているのです。
医療機器にも応用
骨折の治癒を早める目的で超音波骨折治療器(オステオトロン)が用いられております。超音波骨折治療器は、骨折部位に超音波による物理的刺激を与えることで、骨形成を促します。
スクワット
立位で行う種目であり、長軸方向への物理的刺激が可能です。
また、身体の多くの筋を動員します。辛い種目ではありますが、たくさんの筋に刺激を与えることが出来ます。
さらに、スクワット動作による下半身強化は、歩行や階段の昇降、そして起居動作が容易になることも期待できます。
スクワットは、骨密度の強化に有効であるスクラクチュラルエクササイズ(背骨に負荷のかかるトレーニング種目)も1つです。
スクラクチュラルエクササイズが骨密度効果に有効である根拠は、文献[1]によると「高重量のウェイトを使った多関節エクササイズを定期的に行っている青年期のトップレベルのウェイトリフターの骨密度は、同年齢のコントロール群と比較してかなり高い値を示す」です。
つまり、適度な運動を定期的に行う事は、筋や骨に刺激を与えて、骨密度低下の抑制に有効であることがいえるのです。
骨粗鬆症対策に日光浴と栄養摂取が大切
適度な日光浴や栄養の摂取も骨強化には大切な要素です。
骨の形成・維持には、カルシウムとビタミンDの摂取が必要です。
カルシウムは、骨の発達や維持に必要な栄養素です。
カルシウムの摂取不足は、骨強度を低下させ、骨粗鬆症のリスクが上昇します。カルシウムは牛乳や魚などに多く含まれているので、なるべく食材から摂取することが望ましいですが、不足分はサプリメントで補うことも必要であると考えます。
また、カルシウムだけでなく、ビタミンDも同時に摂るべきです。ビタミンDは、カルシウムの腸管での吸収を助ける作用があります。
適度な日光浴により、皮膚が紫外線を吸収し、ビタミンDを合成します。キノコ類や魚類にビタミンDが多く含まれており、カルシウムと同様、不足分はサプリメントで補うことも大切です。適度な運動や日光浴、バランスの良い食事は、筋や骨強化に肝要であり、骨粗鬆症の進行を抑制することが期待できます。