皆さんは1日に果物をどのくらい食べていますか?
日本人が果物を食べる量は以前に比べて少なくなっています。果実類の摂取量は1975年がピークで、1人当たりの1日の摂取量は約200gでしたが、近年はその6割程度にまで落ち込んでいます。
「皮をむくなど食べるのに手間がかかる」「値段が高い」といったこともあるようですが、肉や魚・野菜・乳製品などに比べ、果物は嗜好品という意識がまだ強いことがいちばんの理由のようです。
- 日本人が食べる果物の量は足りていない
- 果物を賢く食べて健康体を維持
- 認知機能の低下予防に野菜や果物が有効
- ミカンやリンゴには脂質代謝を改善する成分が含まれる
- 果物を食べても糖尿病リスクは上昇しない
- ただし食べ過ぎには注意が必要
- 果物で気をつけるポイント
- 健康を目指すなら果物は避けなきゃいけない!?
- 果物を適量食べる程度なら問題なし
- 果物を食べるメリット
- ミックスベリーな朝食ボウル
- ドライマンゴーヨーグルト
日本人が食べる果物の量は足りていない
厚生労働省・農林水産省が作成した「食事バランスガイド」では、1日に野菜を350g、果物を200g摂取することが目標とされている。しかし、日本人は実際にはこれより少ない量しか食べていない。
「健康日本21(第2次)」では、果物の摂取量が1日100g未満の人を30%に減らすことを目標としているが、現状は日本人の60%以上で果物が不足しており、とくに20~40歳代で摂取量が少ないことが分かっている。
野菜と果物はがんの発症リスクを低下させることが、日本人を対象とした大規模調査でも明らかになっている。国立がん研究センターなどが実施している約20万人の日本人を対象とした調査で、野菜と果物を多く食べている人では、胃がんや肺がん、乳がんなどの発症リスクが低下することが分かった。
果物を賢く食べて健康体を維持
パパイア、パインアップル、キウイフルーツは、肉と一緒に食べると消化を助ける働きもあります。
果物は生で食べるほか、ジャムやコンポートにしたり、すりおろしてシャーベットにしても美味。旬のものを食べるのが栄養的に優れていますが、年中、手軽に食べられるドライフルーツもおすすめです。
毎日の生活に果物を摂り入れることは健康への鍵。いつまでも健康で若々しく、美しくありたいと願う人にとって、果物は欠かせない食べ物なのです。食卓で積極的にいただきましょう。
認知機能の低下予防に野菜や果物が有効
野菜や果物を十分に食べることは、認知機能の低下を防ぐためにも良いようだ。米国のハーバード大学公衆衛生大学院の研究では、野菜や果物を多く摂取している人は、認知機能の低下が少ないことが分かった。
毎日の食事で葉物野菜や、黄色や赤色の野菜、ベリー類、オレンジなどの果物を十分に食べている男性は、まったく食べない男性に比べ、齢をとってからの認知機能の低下が34%少ないことが、約2万8,000人の医療従事者を20年間にわたり追跡した研究で明らかになった。
果物や緑黄色野菜にはビタミンA(βカロテン)やビタミンC、カリウムなどのミネラル、ポリフェノールが多く含まれる。これらには抗酸化作用があり、動脈硬化を予防する効果があると考えられている。
果物に含まれる抗酸化物質は、活性酸素を取り除き、酸化の働きを抑える。活性酸素が大量に生成されると、動脈硬化・がん・老化・免疫機能の低下などを引き起こされるが、抗酸化物質には活性酸素の発生やその働きを抑制したり、取り除く作用がある。
果物に含まれる抗酸化物質として、カロテノイドやポリフェノールなどがある。果物や緑黄色野菜に含まれるβカロテンやリコピン、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン、大豆に含まれるイソフラボンやサポニンなどが注目されている。
果糖は、糖の中で最も甘味が強く、果物の他にはハチミツなどに含まれています。実は、果糖は日頃果物をあまり食べない人にとっても身近なもの。ジュースなどに使われる「異性化糖」にも、果糖が含まれているのです。
※異性化糖とは…とうもろこし・じゃがいも・さつまいもなどのデンプンを、酵素を用いてブドウ糖や果糖に分解して作られた甘味料のこと。
ミカンやリンゴには脂質代謝を改善する成分が含まれる
たとえば、温州ミカンに含まれる「βクリプトキサンチン」には強力な抗酸化作用がある。ヘスペリジン研究会によると、温州ミカンなど柑橘類の果実の皮や袋に含まれる「へスペリジン」という成分には、中性脂肪を低下させたり、血液循環を改善するなどの作用がある。
また、フロリダ州立大学の研究によると、リンゴには「リンゴポリフェノール」や「ペクチン」が含まれていて、脂質代謝を改善し、炎症を抑える作用がある。160人を対象とした研究では、乾燥したリンゴを1日に75g、1年間摂取した女性では、摂取しなかった女性に比べ、悪玉のLDLコレステロールが23%減少し、体重も減少することが分かった。
果物は食物繊維の供給源にもなる。食物繊維は消化・吸収されることがなく、糖質の吸収をゆるやかにし、脂質やコレステロールなどの吸収を抑える。食物繊維が多いと、満腹感が得られやすくなり、食べすぎを防いで肥満予防にもつながる。
果物を食べても糖尿病リスクは上昇しない
日本人5万人を5年間追跡した「JPHC研究」で、果物を多く食べる人では、2型糖尿病のリスクが上昇しないことが分かった。この研究は、日本人を対象に、食事などの生活習慣とがん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。
野菜と果物を十分に食べている人では2型糖尿病の発症リスクが低下した。野菜と果物に含まれる抗酸化ビタミンやカロテノイドなどが、血糖を下げるインスリンの感受性を高めていると考えられている。果物を多く食べる人は、あまり食べない人と比べ、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが低下することも分かっている。
ただし食べ過ぎには注意が必要
一方で、果物には糖質もそこそこ含まれている。中ぐらいの温州ミカン(120g)には炭水化物が14.3g含まれていて、カロリーは54kcal。4個を食べると、コンビニのおにぎり1個のカロリーにほぼ等しい。
果物にはブドウ糖・果糖・ショ糖という糖質が含まれている。糖質の組成は果物の種類によって異なるが、糖質は原則として「1g=4kcal」のエネルギー源になる。
とくに最近の果物は甘いものが多い。果物に含まれる果糖が直接に血糖値を上げることはないが、肝臓での糖新生によりブドウ糖に変換される。そのため、食べ過ぎると糖代謝の悪化や中性脂肪の増加につながるおそれもある。食べ過ぎには注意が必要だ。
果物に含まれる単糖類は、短時間でエネルギーになるため、夜よりも朝食・昼食時に摂ることが勧められる。また、シロップ漬けになっている缶詰の果物やドライフルーツはとくに糖質が多いので、なるべく控えた方が良い。フルーツジュースも果糖などを加えて甘くしたものがある。
イチゴ、キウイ、オレンジ、桃、ブルーベリーなどは、比較的エネルギーが少なめで食物繊維も多い。温州ミカン、柿、ブドウ、バナナなどは糖質が比較的多く含まれるので、食べ過ぎには注意が必要だ。
果物は、糖尿病リスクを減らし、がんや動脈硬化なども抑制してくれる強い味方だ。健康や美容にも役立つ。過度に敬遠することなく、上手にとりいれたい。
果物で気をつけるポイント
果物はビタミンCやカリウム、食物繊維、水分が補えますが、摂り過ぎると糖分も摂り過ぎてしまいます。果物の目標摂取量は1日200gとされているので、2つ(SV)が適量です。果物が食事の時に摂れない方は間食で補うと取り入れやすくなります。果物の酸味は食欲増進や消化吸収を助けてくれます。
100%のジュースはコップ1杯で1つ(SV)は補えますが、糖分が多く、加工の際に食物繊維やビタミンが減ってしまいます。果汁100%のジュースは果物でカウントされますが、生の果物の代替にはならないので、なるべく生の果物がおすすめです。
健康を目指すなら果物は避けなきゃいけない!?
近年、食後に血糖値が急上昇すると肥満や糖尿病の原因になることが問題視されています。果糖は、そのほとんどが肝臓で代謝されることから、血糖値を上げないため、肥満を防げる甘味料だと考えられていました。
しかし最近では、果糖の摂取では食後のブドウ糖が上昇しない代わりに満腹感が得られないことと、それゆえに摂りすぎると皮下や内臓の脂肪が増えて太る原因になりえることなどが指摘されています。
果糖に限らず、体内に糖が増えすぎるとさまざまな健康への影響が懸念されるため、ぜひ気をつけたいところです。
果物を適量食べる程度なら問題なし
果物は適量であれば体に良い働きを期待できますが、食べ過ぎるとかえって体に悪い影響を及ぼしてしまう恐れがあります。果物を摂取するときは、大体1日200g程度を目安にするとよいでしょう。りんごなら3分の2個、バナナなら2本程度が目安です。
果物を食べるメリット
果物を食べることでさまざまなメリットがあります。ここでは3つのメリットを紹介します。
ビタミンやミネラルを摂取できる
いちごやキウイ、柑橘類など、ビタミンCが豊富に含まれる果物は多数あります。ビタミンCにはメラニン色素の生成を抑える働きがあるため、日焼けが気になる季節にもぴったり。食べることで水分も補えるため、夏のデザートにおすすめです。
また、果物には正常な血圧を保つ働きをするカリウムや、目や皮膚の粘膜を健やかに保つビタミンAなどが含まれるものもあります。ジューシーな甘味を楽しみながら、ビタミンやミネラルを手軽に摂取できる果物は、日々の食生活に積極的に取り入れたいですね。
食物繊維が豊富
熟れた果実には水溶性食物繊維も含まれます。水溶性食物繊維は、体の中からスッキリを促す作用があるとされています。また、水溶性食物繊維は善玉菌のエサになるため、菌活とも相性が良いというメリットもあります。
腸内細菌をサポートし、体の調子を整える手助けをしてくれます。腸の働きを刺激する不溶性食物繊維も、あわせて摂取したいもののひとつです。不溶性食物繊維は、大豆や穀物、きのこなどに多く含まれます。かりんやラズベリー、栗など、不溶性食物繊維を含む果物もあるため、手軽に食べやすい食材を選んでください。
お菓子と比べて低カロリー
果物は脂質をほとんど含まず、一般的なお菓子と比べてとても低カロリーです。クッキーのカロリーが1食分(5枚)で240kcalなのに対し、りんごは丸ごと1個食べても138kcal。普段のおやつをお菓子から果物に置き換えるだけで、カロリーコントロールに役立ちます。
ミックスベリーな朝食ボウル
【材料(1人分)】
(A)無糖ヨーグルト(または無糖ココナッツヨーグルト) 200g
(A)アボカド(種をとり皮をむく) 1/2個
(A)冷凍ラズベリー 80g
(A)米酢またはりんご酢 小さじ1
(A)ココナッツオイル 大さじ4
(A)チアシード 大さじ2
トーストしたココナッツ 10g
ラズベリー
【作り方】
1. フードプロセッサーに(A)を入れ、なめらかになるまで攪拌します。
2. 2.1を器に盛りつけ、ラズベリーと軽く炒ったココナッツをお好みでトッピングします。
ドライマンゴーヨーグルト
【材料(1人分)】
ドライマンゴー 6~8枚(60g)
プレーンヨーグルト 1/2カップ
【作り方】
1. プレーンヨーグルトにドライマンゴーを漬けて、冷蔵庫でひと晩おきます。
2. マンゴーがヨーグルトの水分を吸って、全体が馴染んだら完成です。器に盛りつけていただきます。
果物にはビタミン、ミネラルや食物繊維など、健康や美容に嬉しい成分が豊富に含まれています。また、食物繊維は腸内細菌のエサにもなるため、菌活にもぴったりです。
ただし、果物に含まれる果糖は、摂りすぎると皮下や内臓の脂肪が増えて太る原因になります。果物は適量であれば体に良い働きを期待できますが、食べ過ぎると体に負担がかかってしまいます。大体1日200g程度を目安に、食べ過ぎにはくれぐれも注意しましょう。