焼酎の魅力をより楽しむためには、甲乙の違いや原料の種類について知っておくことが大切です。焼酎を最近嗜み始めた方などに向けて、より美味しく味わえるように焼酎の種類について。早速、焼酎の世界を掘り下げていきましょう。
焼酎の甲乙とは
焼酎は、その蒸留方法の違いによって「甲類焼酎」と「乙類焼酎」に分けられます。
蒸留とは、沸点の違いを利用してアルコールの度数を上げる工程のことです。
水の沸点は100度、飲用アルコールの沸点は78.3度なので、水とアルコールが混じった液体を100度以下で熱すると、沸点の低いアルコールが先に蒸発します。
この蒸発したアルコールを冷やして液体に戻すことで、よりアルコール度数の高い液体が抽出できる仕組みです。
ここからは、甲類焼酎と乙類焼酎がそれぞれどのような蒸留方法で作られるのか解説していきます。
甲類焼酎の特徴
甲類焼酎には「連続式蒸留」という明治時代の末期ごろにイギリスから導入された蒸留方法が用いられます。
連続式蒸留は1つの蒸留機の中で何度も蒸留を繰り返すので、効率よくアルコールとそれ以外の成分を分けられるのが特徴です。
見た目は無色透明で、味はあまりクセがありません。
甲類焼酎に用いられる単式蒸留と比べ、効率よくアルコールを取り出せるので大量生産が可能です。
その分、焼酎の価格も比較的安価となります。
また、甲類焼酎と乙類焼酎の分類は酒税法によっても明確化されており、甲類焼酎は「連続式蒸留で作られたアルコール度数が36度未満の焼酎」と定義されています。
乙類焼酎の特徴
乙類焼酎は、「単式蒸留という方法で蒸留されたアルコール度数45度以下の焼酎」です。
日本で作られてきた焼酎には、古くからこの単式蒸留が用いられてきました。
単式という言葉の通り、1度投入した原料は1度しか蒸留しません。
連続式蒸留と比べると、芋や米、麦などの原料特有の香りや風味が多く抽出されていて、豊かな味わいを楽しめます。
日本語では「甲乙丙丁」という順番でものの優劣を表すため、甲類焼酎の方が高級で乙類焼酎はそれに劣っている、と考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、甲と乙は単なる酒税法上の区分でしかありません。
乙類焼酎は、水以外の添加物を一切使用しないなど、原料や作り方に細かな制限があることから「本格焼酎」とも呼ばれ、中には非常に高価なものもあります。
芋焼酎
数ある中でも、ベーシックな焼酎の1つが芋焼酎です。
原料に使われるサツマイモそのものの糖度が高いため、甘味の強い重厚な香りが感じられます。
芋焼酎はクセが強く、独特の香りがあることから、好き嫌いが分かれやすい焼酎です。
ただし、近年の芋焼酎は、鮮度の良いサツマイモだけを厳選したり、臭いの原因となるヘタや傷んだ部分を取り除いたりと、苦手な方でも飲みやすいようさまざまな工夫が施されています。
麦焼酎
麦焼酎は、主に大麦を原料としています。
芋焼酎よりもクセが少なく、キレのある味わいとフルーティーな香りを持ち、比較的飲みやすい焼酎です。
手頃な価格の銘柄が多いため、焼酎初心者にも人気があります。
「いいちこ」や「吉四六」、「二階堂」といった銘柄は聞いたことがある方も多いでしょう。
麦焼酎の産地としては九州地方が有名で、長崎県の壱岐島や大分県などがその代表です。
米焼酎
日本人が主食とする米は、古くから焼酎の原料としても親しまれてきました。
焼酎の多くは、原料を糖化させるための麹づくりに米が使用されており、この米麹をベースとして芋や麦、といったように種類が分かれていきます。
その中でも米焼酎は、最後まで米にこだわって作られた焼酎です。
伝統的な製法で作った米焼酎は、濃厚な芳香と丸味が特徴です。
一方、最近増えているソフトタイプは、口当たりが軽快でさっぱりとしています。
黒糖焼酎
黒砂糖を原料とする焼酎は、黒糖焼酎です。
黒糖はサトウキビを煮詰めたあと、不純物を除去して固めて作られます。
鹿児島県の奄美諸島のみで製造が認められており、酒蔵も約30軒と限られています。
焼酎特有の強い香りがしないことから、比較的飲みやすい焼酎として知られています。
黒糖由来のコクのあるほのかな甘味と軽い口当たり、爽やかな飲み心地が持ち味です。
そば焼酎
蕎麦の実を原料とするそば焼酎には、独特なコクがあり、柔らかくほんのりした甘味が感じられます。
蕎麦の生産が盛んな長野県や北海道が産地として有名です。
芋や米、麦と比べるとクセが少ないため、あっさりとして飲みやすく、さまざまな料理との相性が良いといわれています。
焼酎の初心者や女性に人気があり、カロリーが低めなことから健康志向の方にも好まれているようです。
オーソドックスにロックや水割りで楽しむのもよいですが、蕎麦湯で割って飲むと焼酎と蕎麦の旨味が混ざり合い、よりまろやかになります。
泡盛
泡盛は沖縄特産の焼酎で、インディカ種と呼ばれるタイ米を原料としています。
通常、焼酎には白麹を使うのに対し、泡盛には黒麹を使うのが特徴です。
日本最古の蒸留酒といわれ、500年以上前、現在のタイにあたるシャムという国から伝わったとされています。
泡盛のアルコール度数は高いとイメージされがちですが、平均は25度程度で、最も高いものが43度です。
アルコール度数が高いため焼酎の味が強いイメージがありますが、実際の飲み口は爽やかで、芳醇な香りと深いコクを楽しめます。
3年以上寝かせた泡盛は古酒(クース)と呼ばれ、よりまろやかな味わいになります。