資格取得を目指す理由は人によって様々です。なりたい職業に就けるよう資格取得を目指す方もいれば、転職・就職に有利に進めることや隙間時間を活用したキャリアアップなどの目的で資格取得を目指す方もいます。しかし、せっかく資格を取得しても十分に活かせないケースも少なくないため、資格の特徴や取得するメリットについてはしっかりと検討しておくことが重要です。
資格を取得する理由とメリット
資格の取得を目指す人はそれぞれに異なる理由があり、取得することで得られるメリットも様々です。まずは、よく挙げられる資格取得の主な理由と資格を取得することによって得られるメリットについて確認してみましょう。
- 資格がないと働けない仕事がある
- 就職先で求められている
- キャリアアップにつながる
- 努力をアピールできる
資格がないと働けない仕事がある
資格の中にはその資格がなければ関連する業務自体ができないものが存在します。例えば、弁護士や司法書士、公認会計士、税理士、行政書士、宅建士などの資格が該当し、有資格者以外のものがこれらの業務を行うことは法律で禁止されています。独占業務と言われる仕事を行うためには資格の取得が前提条件となります。
業務独占資格を取得するメリットは、限られた有資格者にしかできない独占業務を行えるため、労働市場での価値が高いという点です。資格を持っているだけで一生食べていけるほど楽というわけではないですが、独占業務のある業界では資格が就職や転職の際に有利に働きます。
就職先で求められている
就職先で求められている資格の取得を目指す人もいます。就職先の企業が従業員などに資格を求める理由は主に2つあり、一つ目は、特定の事業を営む際に法律で設置が義務付けられている有資格者を確保するためです。
例えば、不動産業を営むためには事務所の規模や業務従事者の数などに応じて一定割合以上の専任の宅建士を置かなければならないと法律で定められています。このような資格を設置義務資格と言い、事業のためには必要不可欠な資格となるため、労働市場において価値の高い資格であることが、取得するメリットです。
二つ目は、従業員や採用予定者の基礎能力などを確認するため、企業が資格取得を条件とするケースです。例えば、事務系の仕事では簿記やMOSなどの資格が応募条件となることもあります。これは、基礎的な会計処理能力やIT技能を有していることを確認するためであり、資格も取得することによって労働市場での価値が上がり、就職や転職を有利に進めることができます。
キャリアアップにつながる
キャリアアップを目的として資格取得を目指す人が増えています。キャリアアップと聞くと独立開業や転職などのイメージが強いですが、キャリアの強化や自身の可能性を広げることもキャリアアップの一環です。
例えば、ビジネスパーソンにとって必須の資格とも言われている簿記資格の取得を営業職の人が目指すこともありますが、簿記は取引先の業績把握やコスト感覚を養う点でも活用できる知識のため、営業としてのスキルアップにつながります。
このようなキャリアアップのための資格取得は転職や独立に役立つだけでなく、勤務先での労働条件や待遇アップにも繋がることもあります。
努力をアピールできる
資格取得を目指す人の中には、「就職に有利そうだから」「空き時間を有効活用したいから」などの漠然とした理由を挙げる人もいます。このような目的であっても資格を取得したら自己アピールにつながる点はメリットの一つです。
本来、資格は特定の技能を有していることを証明するものですが、それ以外にも過去に努力して取り組んだことの証となります。就職や転職の際には履歴書に取得した資格を記載することで、過去の自身の取り組みや努力をアピールすることができます。
資格取得の注意点
資格を取得すると様々なメリットはありますが、メリットばかりに目を向けていると思わぬ落とし穴が潜んでいることもあります。ここでは資格取得の際に気をつけたい注意点について確認してみましょう。
- 関係のない資格はマイナス評価
- 実務経験が求められる仕事もある
- 希少性のない資格はメリットが少ない
- 難関資格が必ずしもプラス評価になるとは限らない
関係のない資格はマイナス評価
資格は過去に努力したことの証明ですが、行き過ぎたアピールはマイナス評価となることもあるので注意が必要です。例えば、就職や転職の際に応募する企業の業務に関わる資格であれば高い評価を受けることもありますが、業務に関係のない資格を記載してもプラス評価に繋がるとは限りません。
特に、複数の資格を持っている場合、不要な資格ばかりを記載すると「これだけ資格を持っているのになぜこの会社に応募するのか?」や「資格ばかり取っているけど実務能力はどうか?」などの疑念を持たれる可能性があります。就職や転職のために資格取得を考えている方はなるべく就職先や転職先で活用できる資格の取得を検討するのがおすすめです。
実務経験が求められる仕事もある
資格の取得を考える場合、試験に合格するだけでは取得できない資格もあるため、注意が必要です。例えば、税理士は試験に合格するだけでは税理士資格を取得することができず、別途2年間の実務経験が必要になります。
また、宅建士も税理士と同様に宅地建物取引に関する2年間の実務経験を求められますが、宅建士は登録実務講習を受講すると2年間の実務経験を持つ人と同等以上の能力を有すると認められるため、その後に宅建士登録が可能です。
このように、試験に合格するだけでは資格取得者とならない資格試験もあるので、試験合格後の研修制度の有無などについても確認しておくことが重要です。
希少性のない資格はメリットが少ない
希少性のない資格はメリットが少ない場合もあるので注意しましょう。この場合の希少性とは、「資格保持者が少なく労働市場での価値がある」という意味ですが、労働市場の需要と供給の観点からも供給の少ない希少性のある資格は価値が上がります。
例えば、一級建築士などは様々な建築関係の業務に必要な資格ですが、一級建築士の人数自体が少ないため、引く手あまたの資格です。しかし、希少性が高くても需要の少ない資格もあるので、需要の見込める業界や職種で希少性の高い資格をセレクトできると、就職や転職の際に有利に働きます。
難関資格が必ずしもプラス評価になるとは限らない
資格の取得を検討するときは試験の難易度が資格選択の大きなポイントになります。しかし、難しい資格だからといって今後の仕事に役立つ資格でなければ就職や転職の際にプラス評価には繋がらないでしょう。
また、国家試験などの難関資格は試験勉強のために資格スクールを活用することなども多くなるため、取得費用が高くなったり、時間も余計にかかったりします。このような資格取得のコストパフォーマンスも考慮した上で、本当に必要な資格を選ぶことが重要です。
資格が役立たない事例3つ
「資格取得は意味ない」に該当する具体的な事例が気になる方も多いでしょう。
そこで本章では、資格が役に立たないケースを3つ紹介します。
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仕事と関係のない資格
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資格よりも実務経験が求められる場合
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希少性がない資格
仕事と関係のない資格
応募先の企業が必要としていない資格を持っていても、実務で使うことがないため採用される確率が上がることはあまりないでしょう。
資格を取得したという努力面を評価されることや、入社後に部署異動や業務内容の変更で使える場合はあるかもしれません。
ただしこれらは例外に過ぎないので、まずは入社に必要な資格を取得するべきです。
応募先の企業の業務を把握して、ミスマッチが起こらないように注意してください。
資格よりも実務経験が求められる場合
資格よりも実務経験を重要視して採用を行っている企業もあります。
その場合、実務経験がなければ資格や知識があっても採用には至りません。
即戦力が欲しい企業の多くは、「実務経験はないが資格は持っている人」よりも「実務経験豊富だが資格は持っていない人」の方が欲しい人材です。
もっとも、30歳以上で転職する方は、即戦力を募集しているかどうかに関わらず、実務経験を重要視される傾向が強め。
希少性がない資格
一夜漬けで勉強すれば誰でも取れる資格は、取得難易度が低く役に立ちづらいです。
例えば医療系の資格講座を紹介しているテレビCMなどで「全国どこでも使える資格」と紹介したからといって、必ずしも就職できるという訳ではありません。
これは通信講座で教材を売ったり生徒を集めたい会社が、利益目的で人気のある資格を紹介しているだけといった場合もあります。
実際、プラスにならない検定試験のようなものも多いため、本当に必要な資格であるかどうか冷静に判断できるようにしましょう。
実務経験の方が重要視されている
「実務経験しか見ない」という考えの方もいるため、資格は意味がないとされることも。
確かに実務経験は採用の判断基準において重要です。
同じくらい実務経験のある2人がいて、1人は転職先の企業で役立つ資格を持っているとすれば、「実務経験+資格取得」の方が有利であることは間違いありません。
もっとも、資格の必要ない仕事において実務経験は資格以上に重要であるという考え自体に間違いはないでしょう。
しかし「だから資格は意味がない」と決定づけるのは、安易で極端な認識といえます。
資格を活用できなかった人や挫折した人の主張
努力して資格を取ったのに就職活動に活用できなかった人や、勉強に挫折してしまった人が、「あれだけ苦労したのに資格は意味がなかった」と悔しさや嫉妬から吹聴していることも。
これらはあくまで「主観的な意見」に過ぎず、資格をうまく活用している人も同じように存在するという事実を無視しています。真に受けないように気をつけるべきです。