この1年半ほどよく耳にするようになった「コロナ太り」という言葉。ステイホームやテレワークで家にいる時間が長くなると、どうしても運動不足になったり、外出自粛などのストレスで食べすぎたりしがちです。みなさんのなかにも「最近太ってきたからダイエットしなきゃ!」と思っている人は多いのではないでしょうか。
そんなダイエットや健康づくりに欠かせないのが「食事制限」と「運動」です。実はこの2つ、どちらか一方だけでは不十分なのです。食事制限と運動を「両立」することで初めて真価を発揮します。
- 肥満はなぜ悪いのか?
- 骨づくりに欠かせない3つの栄養素
- 骨密度を低下させない食事療法
- 骨を強くする運動
- 開眼片脚立ち(ダイナミック・フラミンゴ体操)
- ふくらはぎとアキレス腱のストレッチ
- 献立に役立つ食品の栄養知識
- プラス「オイル」で吸収効率がアップ
肥満はなぜ悪いのか?
肥満は脂肪がつく場所によって、大きく「皮下脂肪型」と「内臓脂肪型」にわかれます。このなかでとくに注意が必要なのが内臓脂肪型です。内臓脂肪型肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症・痛風、心筋梗塞、脳梗塞、脂肪肝、月経異常・不妊など生活習慣病をはじめとするさまざまな病気のもとになることがわかっています。
肥満のタイプ
診断するにはCT検査などを行う必要がありますが、自分自身で判断する場合は、腹囲がひとつの目安になります。一般的に成人男性であれば85cm以上、成人女性の場合は90cm以上で内臓脂肪型肥満の可能性が高いと考えられます。
皮下脂肪型肥満
重篤な病気になる危険性の少ない肥満です。しかし、肥満状態が長期間続くと、足の関節や股関節に負担がかかり炎症などの原因になり、睡眠時無呼吸症候群や月経異常・不妊、乳がんなどの病気になる可能性も高まるといわれています。
肥満は
見た目が悪くなるだけでなく、健康に重大な悪影響を与えます。食べすぎや運動不足の人は、今日から生活習慣を改めましょう。
骨づくりに欠かせない3つの栄養素
将来にわたり健やかな日々を送るためには健康な骨が欠かせません。骨づくりを怠れば骨粗しょう症になり、将来、要介護リスクが高まります。骨粗しょう症を他人ごとと思っている男性や若い女性を見かけますが、高齢化社会で長生きする人が増え、男性患者も増加傾向にあります。「骨粗しょう症になるリスクは誰もが持っている」と心得えるべきでしょう。
骨をつくるために欠かせない主な栄養素は、
①カルシウム(骨の材料)
②ビタミンD(カルシウムの腸管からの吸収を助ける)
③ビタミンK(体内に取り込んだカルシウムの骨沈着の際に必要)の3つ。
カルシウムは腸管からの吸収率があまりよくないため、ビタミンDやビタミンKなども併せて摂ることが健康的な骨づくりの秘訣です。
骨密度を低下させない食事療法
カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成に役立つ栄養素を積極的に摂りましょう。 カルシウムとビタミンDを同時に摂ることで、腸管でのカルシウム吸収率がよくなります。
また、高齢になると、食の好みが変わったり、小食になったりしてタンパク質の摂取量は不足する傾向があります。 タンパク質の摂取量が少ないと骨密度低下を助長しますので、意識して摂取しましょう。
栄養やカロリーのバランスがよい食事を規則的に摂るのが、食事療法の基本です。
♦カルシウム
牛乳・乳製品、小魚、干しエビ、小松菜、チンゲン菜、大豆製品など
※ 骨粗しょう症や骨折予防のためのカルシウムの摂取推奨量は、1日700~800㎎です。
♦ビタミンD
サケ、ウナギ、サンマ、メカジキ、イサキ、カレイ、シイタケ、キクラゲ、卵など
♦ビタミンK
納豆、ホウレン草、小松菜、ニラ、ブロッコリー、サニーレタス、キャベツなど
♦控えめにしたい食品、避けたい嗜好品など
スナック菓子、インスタント食品の頻繁な摂取
アルコールの多飲
カフェインを多く含むコーヒーの多飲
タバコ
冬であれば30分~1時間程度散歩に出かけたり、夏であれば暑さを避けて木陰で30分程度過ごすだけで十分です。 屋内で過ごす時間が長い高齢者や、美容のために過度な紫外線対策を行っている人では、ビタミンD不足が心配されます。運動をかねて積極的に外出する機会をつくって、上手に紫外線と付き合っていきましょう。
骨を強くする運動
骨は、負荷がかかるほど骨をつくる細胞が活発になり、強くなる性質があります。 散歩を日課にしたり、階段の上り下りを取り入れるなど、日常生活のなかでできるだけ運動量を増やしましょう。
骨折予防に有効な運動は、ウォーキング、ジョギング、エアロビクスなどがありますが、ご自身の体の状態にあわせて無理なく続けることが大切です。骨粗しょう症治療中の方や膝に痛みがある方は、運動を開始する前に医師に相談してください。
開眼片脚立ち(ダイナミック・フラミンゴ体操)
フラミンゴのように片脚で立ちます。不安な方は壁やテーブルにつかまりながら行ってもかまいません。体重を片脚に乗せることで、両脚立ちの倍の負荷を与えることができ、骨を強くする効果があります。バランス感覚が鍛えられるので転倒予防にもなります。
ふくらはぎとアキレス腱のストレッチ
壁に手をついて、体を支えながらふくらはぎとアキレス腱を伸ばします。
- 前に出した方の脚の膝を曲げて体重をかけていき、後ろの方の脚のふくらはぎを伸ばします。
- 後ろの方の脚の膝を曲げ、アキレス腱を伸ばします。片脚30~40秒ずつを左右交互に行いましょう。
若い人にとってはなんでもない僅かな段差も、高齢者にとってはつまづきの原因となることがあります。
骨粗しょう症の方は治療を受けることはもちろんですが、骨折のきっかけをつくらないことも重要です。 改めて身の回りをチェックして、転倒リスクを下げる環境づくりに取り組んでみましょう。
献立に役立つ食品の栄養知識
カルシウムは、乳製品や小魚、水菜や木綿豆腐などに豊富です。これまでに、乳製品のカルシウムは魚や野菜よりも吸収効率が高いことが国内の研究で明らかにされています。
また、海外の研究では、大豆食品中のカルシウムの吸収率が乳製品とほぼ同じであることを報告しています。乳製品や大豆食品は一緒に摂った食品中のカルシウムの吸収率アップに役立つので、野菜のように吸収率の低い食品は乳製品や大豆食品と一緒に摂ると良いでしょう。
また骨付きの肉類は酢を加えて煮ると骨からカルシウムが煮汁に溶け出すので、煮汁が口に入れば、その分、カルシウムの摂取に役立ちます。
ビタミンDは、シラス干し、サケ・サンマなどの魚に豊富です。また、キノコは日光に当てると、紫外線の作用でビタミンDが合成されるので増えます。
ヒトも日光(紫外線)を浴びると皮膚でビタミンDが合成されます。ただし、紫外線対策で日焼け止めを塗ったりすると、皮膚でのビタミンD合成はあまり期待できないでしょう。
日焼け止めを使う人、日照時間の短い冬場、紫外線量の少ない地域住民、屋内で過ごす時間が長い高齢者などは、ビタミンDを食事から積極的に取り入れましょう。
ビタミンKは、近年、丈夫な骨づくりに欠かせない栄養素として注目されています。ビタミンKは緑葉野菜、納豆などに多く含まれています。
プラス「オイル」で吸収効率がアップ
食事で摂る際に意識したいことは、「ビタミンDとビタミンKは油脂に溶け込むことで効率よく腸管から吸収される」という点です。
炒め物や揚げ物にしたり、ニンジンジュースやトマトジュースを飲む時に、コップ1杯に対し小さじ1杯程度のオイルを入れたり、味噌汁の具材が青菜なら、オイルをちょっと足したりする工夫で、ビタミンDやビタミンKの吸収率がかなり良くなります。
カロリーの過剰摂取はダメですが、油を目の敵にする必要はありません。質の良い適量の油は髪や肌のツヤにもつながるなど、美容にも良いのです。
骨づくりのためには栄養バランスの整った食事はもちろんのこと、「カルシウム+ビタミンD+ビタミンK+油脂」を心掛けたいものです。