お客様の印象に残る、巧みな接客。それは時に「神対応」と呼ばれ、顧客満足度を高めるものです。神対応はマニュアルにはない、柔軟な対応によって生まれます。もちろん飲食店の接客では、マニュアルは極めて大切です。スムーズにお店を営業するためには欠かせません。
しかしマニュアルだけではスタッフの接客レベルを磨いたり、お客様の満足度を上げたりすることは難しいでしょう。では、どうすればお客様に喜んでいただけるレベルの高い接客術、いわゆる神対応を身につけられるのでしょうか。
今回は、誰でも実践ができるテクニックだけを紹介します。特別な経験やスキルは必要ありません。マニュアルにするのが難しい神対応だからこそ、マニュアル化できるものだけを厳選しました。
●接客スタイルは千差万別
少々大げさな表現ですが、ここでは「マニュアル外」「マニュアル以上」のレベルの高い接客。
しかし、はじめに注意しておきたいポイントがあります。
それは、お店によって接客スタイルは千差万別ということ。
飲食店スタッフによっても、やり方は多種多様です。
例えば、
●完璧な立ち居振る舞いを身につけて気持ちの良い接客をしてくれるお店
●まるで友人のように、家族のように温かくフランクな接客をしてくれるお店
●テーマパークのようにお客様を感動させてくれるお店
あなたのお店はどんな接客スタイルですか?
どういったお店づくりを目指していますか?
いずれにしても飲食店では、お客様に喜んでもらうためにさまざまな接客の工夫を凝らしていています。
したがって、どこでも通用するような接客術の正解はありません。お店ごとのカラーにあわせて、組み立てていく必要があります。
なぜ、お店に合った接客をする必要があるのでしょうか。お客様が「この飲食店に来てよかった」「またここで食事をしたい」と満足して頂くためです。
マニュアル化したい接客術4選
1、その日のおすすめ料理を詳しく説明する
はじめてお店に訪れたお客様に、とても効果的なやり方です。
その日のおすすめ料理を詳しく説明するだけで、好印象を持ってもらえます。
なぜなら、どの料理をオーダーするか迷うお客様は少なくないからです。
「このお店ではどのメニューをまずは食べらたいいんだろう」
「お酒にはどのアテが合うんだろう」
といったことが頭に浮かんで、選ぶのには時間がかかってしまいます。スタッフが、おすすめ料理をご案内すれば、そういった手間が省けます。当日、お店が推したいメニューを紹介すれば、積極的にススメてみましょう。メリットとしては、以下の点があります。
【お客様】
1、メニューを決められないもどかしさから解放される
2、はじめてのお店での緊張がほぐれる
3、お店・スタッフへの信頼度が上がる
【お店側】
1、注文率が高くなる
2、スムーズに注文を受けられる
3、お客様との距離感が近くなる
料理を作る立場にはないホールの方にとって、詳しく説明するのは難しいと感じるかもしれません。そういう場合は、一度料理を試食してみて感想を具体的に説明してみてください。
難しい調理方法や専門用語を使う必要はありません。わかりやすく共感しやすい言葉で伝えてみてください。
また店長や料理長は、その日のおすすめ料理を、ホールスタッフにしっかり共有しておきましょう。沢山あると、勧める側もお客様も迷ってしまうので、1~3品ほどで構いません。
「何が美味しいの?」とお客様から聞かれて、絶対に避けたい回答があります。
「何でも美味しいですよ」
「入ったばかりで、わかりません」
「多分、これです」
こんなこと言うスタッフっているの?と思いますが、意外といます。とくに、まだ慣れていないアルバイトスタッフによく見られる事例です。お客様に対しては、求めている情報が得られないどころか、「接客が行き届いていない店」という印象を与えてしまうでしょう。
従業員を責めたくなりますが、本人だけの問題ではないかもしれません。こういったデメリットを避けるためにも、「その日のおすすめ料理を詳しく説明する」を、マニュアルに取り入れてみるのはいかがでしょうか。
2、マニュアルに、一言だけ添えてみる
お決まりのフレーズでは一辺倒な接客になります。マニュアルに、たった一言添えるだけで、接客力に変化がでてきます。
例えば、ご来店したお客様を迎える際、以下のような一言をアレンジしてみるのはいかがでしょうか。
お寒い中、お越しいただきありがとうございます。」
「土砂降りですね。お足元が悪い中お越しいただきありがとうございます。」
このように季節・天気・状況に合わせて、決まりきった接客用語に変化を加えてみましょう。少しずつパターンを増やしていくことで、さまざまな状況に対応できるようになります。
常連のお客様であれば、前回来店された時に話した話題をテーマにすることも大切です。人間関係を構築できれば、プライベートな話題でも構いません。
今日は同じ酒蔵から新酒が出ていますよ」
「週末、ゴルフに行くとおっしゃってましたが、楽しめましたか?」
など、シチュエーションに合わせた会話ができます。
ここで重要なのは、基本的な接客用語を土台にするということです。基本的なフレーズに、「一言だけ付け加える」というルールにすることで、マニュアル化ができます。、こういったことを自然にしている従業員もいますが、すべてのスタッフが行うことで、接客レベルが総合的に上がります。
3、値段の差を提示する
コース料理を中心に提供しているお店でも、席のみのご予約をされる方は少なくありません。
この場合、単品のアラカルトを注文していただくことになります。ほとんどのお店では飲み放題などが付いたコース料理の方が、単品よりもお得です。
そんな時は、アラカルトとコースの値段差をお客様に説明してみましょう。
このコース料理なら、1,300円ほどお得になります。
〆の雑炊に、デザートも付きますよ。
いかがなさいますか?」
「単品のご注文でよろしいでしょうか?
今、こちらのコースがお得になっています。
お酒を3杯以上飲まれるなら、コースの方がお安くなりますよ」
といった具合です。価格の差を説明することで、お得な方を注文されてしまい、損をしているように思えます。しかし真摯な接客をすることで、このお店はお客様目線だと評価をされて、リピーターを生み出すことができるでしょう。
一方、お会計が終わった後で「コースの方が安かったんじゃないの?」「飲み放題にした方がお得だったのでは?」とお客様から言われれば、悪印象を与えることになります。コース料理を提供しているお店は、ぜひマニュアルとしてやってみてください。
4、イレギュラーに対応する
接客力がもっとも発揮されるのは、イレギュラーなことが起きた時です。
1、開店準備中に、お客様が来店
2、グループの宴会予約で、急な人数変更
3、メニューにはない料理・ドリンクの注文
4、お客様同士の言い争い・トラブル
5、閉店準備をしている時に、団体客が入店
上記はお店にとって不都合で、できれば対応しなくないことです。しかし、今回のテーマでもっとも重要なポイントがココなんです。
イレギュラーこそ、顧客満足度を上げる絶好のチャンス!!!
イレギュラーこそ「顧客満足度アップ」ができるタイミングなんです。通常の営業では、なかなか満足度アップするのは難しくても、こういった時ほど簡単にできます。また無理を聞いてもらえたと、お客様の評価も上がりやすくなります。
「対応できません」と即答する前に、できることがないか考えてみましょう。自分だけで対応できないなら、ほかのスタッフにも相談をしてみてください。
ことです。イレギュラーへの対応は、お店全体で取り組まなければなりません。
なぜなら、イレギュラー=「避けたいこと・面倒なこと」ではなく、「顧客満足度を上げるチャンス」というお店の考え方があるかどうかで、対応が変わるからです。