接客は、正しいポイントを押さえることで印象が大きく変わります。本記事では、正しい接客の基本やマニュアル化の際に押さえておきたいポイントを解説します。
- 接客とは
- 接遇との違い
- 接客の心得
- 接客が上手い人の特徴
- 接客の質を上げる5つの要素
- 接客のコツをマニュアルに落とし込む
- 接客マニュアルの目的
- 8大接客用語を浸透させる
- 飲食店の接客は「接遇」の視点が重要
接客とは
接客とは、訪ねてきたお客様をもてなすことです。お客様が快適に目的を達成するために、どのようなお手伝いができるか考えることが、サービスのクオリティ向上につながります。
接客のクオリティを維持するためには、マニュアル化が大切です。接客マニュアルを作っておけば、スタッフが自身の接客に迷いを感じたときの道しるべとなり、接客の品質を一定に保つことができるでしょう。
接遇との違い
接客と似た言葉に、接遇があります。接客はお客様に必要なサービスを提供することを表しますが、接遇はお客様に特別なおもてなしを提供することです。お客様に不快感を与えないよう最低限のサービスを提供するのが接客、一歩踏み込み特別感を提供することでお客様に満足してもらうのが接遇と言い換えることもできます。。
例えば、飲食店で注文された料理をお客様のもとへ運び、「お待たせいたしました」と言って提供するのは接客です。一方、料理を提供する接客の流れに加え、お客様の目を見ながら笑顔で「ごゆっくりお楽しみください」とつけ加えることは、特別感を感じさせる接遇になります。
多くの小売店や多店舗展開している企業では、マニュアルを意識するあまりサービスが接遇ではなく接客レベルにとどまってしまいがちです。お客様に満足してもらうためには、接客から一歩踏み込んだ接遇をスタッフに浸透させることが求められます。
接客の心得
接客では、最低限のマナーを押さえたうえでお客様一人ひとりに適した対応をすることが必要です。しかし、接客する側の立場が変われば、意識すべき接客の心得も変わってきます。以下の2つの立場それぞれに必要な接客の心得を紹介します。
■オーナーの心得
■従業員の心得
オーナーの心得
オーナーは、店舗のスタッフ全員の接客を統括する役割を担います。店舗全体の接客クオリティを高めるために、適宜指導を行うなどオペレーション管理が必要です。特定の従業員だけが良い接客をできるといった“接客の属人化”を防ぎ、店舗全体、ひいてはグループ店、チェーン店全体に教育を波及させましょう。
また、店舗の規模によってはオーナー自身が接客を行うケースもあります。そのため、オーナーは店舗全体をきちんと見渡して接客のクオリティ向上に努めるだけでなく、自身もスタッフのお手本となる接客ができなければなりません。店舗を回すための管理能力のほか、自身の接客スキルも磨くようにしましょう。
従業員の心得
従業員は、店舗の忙しさにかかわらずいつでも接客のクオリティを維持することが大切です。例えばランチやディナー時の飲食店など、絶えず来客があり忙しくなってしまうと、接客の質は落ちてしまいがちです。しかし、たとえ忙しい時間帯であっても、お客様一人ひとりに対し丁寧な対応をすることで、満足度の向上やリピーターの獲得につながります。
忙しさを理由とせず、いつでも適切な接客をするべきだとスタッフを教育しましょう。
接客が上手い人の特徴
スタッフの接客クオリティを高めるためには、接客がうまい人の特徴を明確にしたうえでそれを提示する必要があります。前提として、接客がうまい人には笑顔や言葉遣い、あいさつなど接客の基礎がきちんと身についています。このような接客のマナーを押さえることでさらに行動や動作が洗練されていくので、基礎を大切にすることが重要です。
また、常に周りを見て行動し、お客様一人ひとりに合わせた接客ができるのも、接客がうまい人の特徴です。さらに、接客がうまいスタッフには、傾聴力が高くお客様の話をきちんと聞きながら接客を楽しめるという共通点もあります。
これらの要素をスタッフに周知し、教育に役立てることが大切です。
接客の質を上げる5つの要素
接客の質を上げるためには、以下の5つの要素が重要です。
1、表情
2、言葉遣い
3、距離感
4、同調
5、身だしなみ
これら5つは、接客の基本要素とされています。接客はこの基本要素によって構成され、それぞれのクオリティを高めていくことで、接客のレベルが接遇へと近づいていくでしょう。
表情
まず、表情は接客において重要なポイントです。お客様をお迎えするときには明るく爽やかな笑顔、真剣なお願いをされているときには真剣な表情など、シーンに合わせた表情で感情をきちんと伝えることでお客様の信頼を得ることができます。
店舗にお客様が訪れたとき、「いらっしゃいませ」というあいさつとともに明るい笑顔を向けることは、好印象を与える基本的なテクニックです。無理やり笑顔を作るとお客様にも伝わってしまうので、自然な笑顔を心がけるよう指導を徹底しましょう。
言葉遣い
丁寧な言葉遣いは、接客の基本です。普段から丁寧な言葉遣いを意識していなければ、とっさに出てこない場合があるため、注意しなくてはいけません。
敬語についても、スタッフには正しい知識を身につけてもらいたいもの。自分では正しい敬語を使えていると思っていても、実は間違えているという人は意外に多いです。細かいことですが、言葉遣いひとつでお客様の満足度を低下させてしまうこともあります。丁寧で正しい言葉遣いをスタッフ一人ひとりに覚えてもらいましょう。
距離感
適切な距離感でお客様に接することも、接客において重要なポイントです。このとき、親しみやすさとなれなれしさを履き違えてはいけません。特に接客に慣れてきたスタッフは、お客様との距離が近くなりすぎてしまうことがあります。あまりになれなれしく接してしまうと、お客様はパーソナルスペースに踏み込まれて不快に感じてしまうでしょう。適度な距離感を保ちながら丁寧に接することが大切です。
同調
お客様に合わせる同調の態度は、お客様に好印象を与える接客テクニックのひとつです。これはミラーリング効果と呼ばれ、「自分と同じ仕草や表情の相手に好感を持つ」という心理学のテクニックを活用したもの。ミラーリング効果をうまく活用すれば、お客様への行為や尊敬を無意識に伝えることができるずです。
お客様の話すスピードや声のトーン、しぐさなどを細かくチェックして自然と合わせられるよう、スタッフに周知しておきましょう。
身だしなみ
身だしなみは、お客様が接客スタッフに抱く印象に大きく影響するものです。特に飲食店をはじめとする小売業では、身だしなみがお店の印象をも左右します。
接客スタッフの身だしなみは、清潔感があって誰からも受け入れられやすいものである必要があります。細かい部分は店舗の雰囲気やルールなどにもよるので、適切な身だしなみとはどのようなものか、スタッフとすり合わせをしておくと安心です。
接客のコツをマニュアルに落とし込む
接客の質を高める要素を押さえ、よりハイレベルな接客オペレーションを店舗に浸透させるためには、マニュアル作成が効果的です。マニュアルを作成することで「良い接客」の基準が明確になるため、、スタッフ全員の接客クオリティが高まります。
接客マニュアルの作成によって得られる効果やマニュアルに落とし込みたい大切な接客用語について、詳しく確認していきましょう。
接客マニュアルの目的
接客マニュアルを作る目的には、主に以下の4つが挙げられます。
・新人スタッフの教育
接客業務をマニュアル化しておくと、新人教育に役立ちます。新人スタッフは覚えることがたくさんあるので、迷ったときにいつでも読み返せるマニュアルを用意しておくことで、自力で接客の基本を確認したり対応を予習したりすることができるのです。
・おもてなし意識の醸成
接客スタッフには、おもてなしの意識が求められます。接客マニュアルに業務の流れだけでなく、接客をする目的や大事なポイントなどを記載することにより、スタッフのおもてなし意識を醸成できます。
・基本的なビジネスマナーの徹底
覚えておくべき基本的なビジネスマナーをマニュアルに記載しておくと、スタッフが迷ったときにいつでも見返すことができます。何度も繰り返し読み返せるように明文化しておけば、オーナーが何度も繰り返し言わなくてもスタッフにビジネスマナーを徹底させることができるでしょう。
・サービスレベルの均一化
参考にすべきマニュアルがあると、接客のサービスレベルを一定に保つことが可能です。接客はスタッフの経験や性格によって属人的な対応になってしまいがちですが、このようなときはこう対処するとあらかじめマニュアルに定めておけば、スタッフごとに対応が変わるという事態も避けられます。
8大接客用語を浸透させる
接客業務のマニュアルには、覚えておきたい8大接客用語を落とし込みましょう。覚えておきたい8つの接客用語は、以下のとおりです。
少々お待ちください
お待たせいたしました
かしこまりました
申し訳ございません
恐れ入ります
失礼いたします
ありがとうございました
「いらっしゃいませ」は、お客様を迎え入れる最初のあいさつです。きちんとお客様のほうを向き、自然な笑顔で言いましょう。「少々お待ちください」と「お待たせいたしました」は、その場を離れてお客様を待たせる前後に必ず言うべき言葉です。
「かしこまりました」は、「わかりました」や「了解しました」と同じ意味ですが、謙譲語です。お客様へ敬意を示すことができるため、「かしこまりました」を使うようにしてください。「申し訳ございません」は、お客様に何か不便や迷惑をかけてしまったときの謝罪の言葉です。「申し訳ありません」よりも、「申し訳ございません」のほうが丁寧です。
「恐れ入ります」は、感謝とともに恐縮の意味を込めることができます。お客様の気分を害さないためのクッション言葉としても使えるため、スタッフにも使うよう周知しておくと良いでしょう。「失礼いたします」は、お客様のもとへ行ったときに使える言葉です。そして「ありがとうございました」を、お客様が帰るときにきちんと伝えましょう。
飲食店の接客は「接遇」の視点が重要
小売店のなかでも特に飲食店は、急なメニュー変更や想定外の団体客の訪問など、臨機応変な対応が求められる場面が多くあります。突発的な状況でもお客様に満足してもらえるように、単なる接客にとどまらない接遇の視点が欠かせません。接遇レベルのサービス提供を目指して、マニュアルの整備やスタッフの教育などを進めていきましょう。