一汁三菜は、5大栄養素である炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルがすべて含まれており、健康に必要な栄養素をバランスよく取れるため、現代の日本人の食事において理想的な献立です。
一汁三菜の献立の内訳
一汁
「一汁」は汁物を指します。これは文字通り汁気の多い料理で、たとえば味噌汁やスープ類などです。
三菜
「三菜」は汁物以外のおかずを指します。「主菜」1点と「副菜」2点、あわせて3点のおかずで「三菜」といいます。
主菜
「主菜」とは肉、魚、卵や大豆などがメインのおかずです。ハンバーグや焼き魚、冷ややっこやオムレツも主菜です。
副菜
「副菜」とは野菜や海藻がメインのおかずです。サラダや野菜炒め、酢の物、煮物などです。
・白ごはん
・かぶの味噌汁
・厚焼き卵
・焼き鮭
・ほうれん草としめじの和え物
(デザート:フルーツ)
日中に活動するためのエネルギーや栄養素は、1日の始まりに食べる朝ごはんで賄います。今回ご紹介した和食の朝ごはんでは、エネルギー源となる白ごはん、栄養満点の味噌汁と卵、低脂質・高たんぱくの焼き魚、鉄分や食物繊維を補うキノコ類を一挙にカバーできます。朝ごはんから十分な栄養を摂取して、毎日をいきいきと元気に活動しましょう。
栄養バランスのとれた一汁三菜
一汁三菜は栄養素のバランスが取れているという点で、現代日本人の食事において理想的な献立とされています。
主食のごはんからは「炭水化物」を、主菜の肉、魚、卵、大豆からは「タンパク質」「脂質」を、「副菜」の野菜、海藻から「ビタミン」「ミネラル」を摂ることができます。また、汁物は水分を多く摂る役割があり、栄養は使用する具材によって異なります。
2013年には「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたほどです。
一汁三菜以外の献立
一汁三菜が栄養バランスのとれた理想的な献立であることを理解いただきましたが、それ以外にも数字を使ってあらわされる献立に「一汁一菜」「一汁二菜」「一汁五菜」「二汁五菜」というものがあります。
一汁一菜
「一汁一菜」は食べすぎを防止するために理想的な献立とされます。
一汁は汁物、一菜はおかずのことを表し、注意すべきは適度な量にすることと、栄養バランスの取れる内容にすることです。
一汁三菜にくらべておかずの数が少ないので大盛にしがちですが、そこを控えることで食べすぎの防止という利点が生まれます。
特に朝ごはんは、眠った脳や体内の器官を目覚めさせると同時に、一日のエネルギーを得るための大切な食事です。
まずは朝ごはんから一汁三菜をはじめてみましょう。
一汁二菜
「一汁二菜」は一汁三菜よりもふるまう側の負担が少なく栄養バランスにも優れた献立とされます。
二菜が主菜と副菜1点ずつなので一汁三菜にくらべて野菜や海藻類からとれるビタミン・ミネラル分が不足することが考えられます。
汁物や副菜等にそれらを意識して多く取り入れることで、栄養バランスが良い献立となります。利点として、品数が少ないことによる、ふるまう側の負担の軽減があります。献立を考えること、調理すること、洗い物・・・と1点減ることによる利点は様々な場面で影響します。
一汁五菜、二汁五菜、それ以上
「一汁五菜」「二汁五菜」は本膳料理で一般的に用いられている献立です。
「本膳料理」とは室町時代に確立された饗宴の席の料理で、現代でも本膳料理を提供するお店があります。
その本膳料理でふるまわれる献立に一汁五菜や二汁五菜がありますが、その献立の内訳は主菜、副菜といったものではなく「なます」「煮物2点」「焼き物」「和え物」で五菜とそれぞれ調理法が決まっております。
・白ごはん
・豚肉の生姜焼き(付け合わせ:マカロニサラダ)
・里芋の含め煮
・和風野菜サラダ
・豆腐の味噌汁
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の両方をバランスよく含んだ一汁三菜の一例です。主菜に動物性たんぱく質を、副菜に多くの野菜類を取り入れ、汁物に植物性たんぱく質が組み入れられています。主菜にやや脂質が多いぶん、副菜や汁物は脂質を少なめにしてあるのがポイントです。
一汁三菜の配置方法
一汁三菜の献立は、配置方法に決まりがあります。
一汁三菜 配置
図のように、
「主食」は左手前
「汁物」は右手前
「主菜」は右奥
「副菜」のうちボリュームのあるものが左奥
「副菜」のうちボリュームの少ないものが真ん中
「漬物」がある場合は手前
となります。
これが基本的な並べ方ですが、ここで重要なのは主食が左、汁物が右ということです。主菜、副菜については並べ方が多少違っても問題ありません。
ごはんを左側に置く理由は、重要なものを左側に置くという日本古来の考え方が配膳の作法にも影響しているからです。
一汁三菜を正しく食べる順番
一汁三菜の献立は皿の数が多くなり、どういう順番で食べていいか迷ってしまうかもしれません。
以下の2点の食べる順番を覚えておきましょう。
1、まず汁物から食べる
これは汁物で箸を濡らすことでお箸にごはん等がくっつきにくくなります。
2、三角食べをする
「三角食べ」とは、「主食」「汁物」「おかず」を交互に食べていくことです。
図のように、
「汁物」➡「おかず」➡「主食」➡「汁物」➡「おかず」➡「主食」でも
「汁物」➡「主食」➡「おかず」➡「汁物」➡「主食」➡「おかず」でも
どちらでも三角食べとなります。
また、正確な三角でなくとも「おかず」➡「主食」➡「おかず」でもかまいません。重要なことはそれぞれ交互にバランスよく食べていくことです。
味のうすいご飯とおかずを口の中で混ぜ合わせる「口内調味」の効果や汁物で飲み込みづらい食べ物を流す効果があります。
「本膳料理」の一汁三菜
一汁三菜は「本膳料理」を発祥としております。
「本膳料理」とは室町時代に確立された武家の饗宴の席の料理のことです。食事ではありますが、礼儀作法とともにその献立にも決まりがあり、そこで「一汁三菜」という献立が生まれました。
「本膳料理」における一汁三菜の献立は、
飯、汁、香の物(漬物)、なます、平(ひら、煮物)、焼物
です。
本膳料理では、「三菜」とはなます、煮物、焼物と調理法が決まっております。また香の物は「三菜」に数えません。
これは、古来日本では奇数がめでたい数字とされ、反対に偶数を使うことは避けられ、特に四は「死」を連想するため嫌われていたために数えないようになったとされます。
現代の一汁三菜でも漬物を「三菜」に含まないというのはその名残です。
また、本膳料理における一汁三菜の配膳は以下のようになります。
本膳料理においては主菜の「焼物」のみ別のお膳で提供されます。
また、本膳料理には一汁三菜以外にも一汁五菜や三汁七菜などの献立があり、その中で「一汁三菜」は品目の少ない簡素なものとされております。
「懐石料理」の一汁三菜
懐石料理での一汁三菜とは、茶の湯の席の前にふるまわれる料理です。それは刺激の強い「お茶」を空腹のまま飲むことを避けるためにふるまわれた、メインの「お茶」のための前菜のような扱いとなっています。
懐石料理の献立は本膳料理と同じものとなり飯、汁、香の物(漬物)、なます、煮物、焼物ですが、配膳に違いがあります。
懐石料理は「温かいものは温かいうちに、冷たいものはより涼やかに」というおもてなしの心から、料理は複数回に分けて出されます。
同じ一汁三菜の献立でも、飯と汁のおかわりや、煮物、焼物を順番に出していくところに懐石料理の特徴があります。
また、焼物は大皿から取り分けることとなり、取り皿には空いた「なます」のお皿や煮物のふたを使う場合もあります。そして最後に漬物が出される場合もあります。
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