寒い季節には、ちゃんこ鍋や寄せ鍋、もつ鍋などの鍋料理が恋しくなりますよね。しかし、そんなさまざまな種類がある鍋料理が、いつから食べられるようになったのか知らない方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、鍋料理の歴史についてです。
- そもそも「鍋料理」ってどういう料理?
- 鍋料理の始まり
- 江戸時代の鍋料理
- 明治時代の鍋料理
- 現在の鍋料理
- 石狩鍋(北海道)
- きりたんぽ鍋(秋田)
- ちゃんこ鍋(東京)
- 土手鍋(広島県)
- 水炊き(福岡)
- 『水炊き』食べる順番に決まりあり!?水炊きのおいしい食べ方
- 『ちゃんこ鍋』お相撲さんの食事といえば…ゲン担ぎが詰まった「ちゃんこ鍋」
- 『モツ鍋』活力の象徴!?「医者いらず」なモツ鍋のチカラ
そもそも「鍋料理」ってどういう料理?
辞書によると、鍋料理とは「食卓上で、野菜・肉・魚介類を鍋で煮ながら食べる料理。」(大辞林 大三版)などと定義されています。鍋で調理する料理は古代からありましたが、ひとつの鍋を大勢で囲んで煮ながら食べる現在のようなスタイルではなく、鍋からそれぞれに取り分けていました。
鍋料理の始まり
鍋料理の始まりは古く、土器が発明された縄文時代と言われています。縄文〜弥生時代には食べ物を入れた土器を火にかけて煮炊きする習慣がありました。食べ物に火を通すことで、そのままでは硬くて食べにくい食材を刻んで煮て消化しやすい形にすることによって、栄養を余すことなく食べていたようです。
ただし、これらの煮炊き料理はほとんどの場合、調理後に取り分けられて各自が自分の膳で食事をするスタイルであったため、現在のように食卓で1つの鍋を囲む鍋料理とは別物でした。
現在のような鍋料理のスタイルが普及したのは、江戸時代から明治時代にかけて「卓袱(しっぽく)」という料理が登場してからと言われています。「卓袱料理」とは、長崎の郷土料理のひとつで、大きな器に料理を盛り付けて、食卓の中央に置いて取り分けて食べる料理のことです。中国から日本に伝わり、日本独自の文化として発達しました。
江戸時代の鍋料理
江戸時代になると都市部では、持ち運びできる七輪の普及によって鍋を「煮込みながら食べる」というスタイルが登場しました。また、当時の鍋料理のメニューはバラエティに富んでおり、現在の湯豆腐のような「湯やっこ」や「どじょう鍋」、帆立貝などの貝殻の上で具材を焼く「貝焼き」など、今聞いても食べてみたいと思わせるような料理がたくさんあります。また、直径20cほどの小さな鍋を少人数、もしくは1人で食べる「小鍋立て」と呼ばれるスタイルもこの頃流行しました。
明治時代の鍋料理
明治時代になると富国強兵政策がとられ、それまで禁止されていた肉食が推奨されるようになりました。そこで登場したのが「牛鍋」です。牛鍋とは、鉄製の鍋で牛肉とネギを煮込んだ料理で、醤油味や味噌味など和風の味付けであり、西洋料理に不慣れな庶民にも受け入れやすかったため、庶民の間で牛鍋ブームが巻き起こりました。また、牛鍋は文学作品の中にもよく登場しており、文明開化の象徴として捉えられることも多いです。
現在の鍋料理
現在ではさまざまな鍋料理が登場し、年々その種類は増え続けています。最近では韓国料理をもとにした「キムチ鍋」や「チゲ鍋」、エスニック料理をベースにした「トムヤム鍋」や「カレー鍋」など、世界各地の料理をベースにした鍋料理も楽しむことができます。
日本全国の鍋料理
石狩鍋(北海道)
鮭をメインに野菜と共に味噌仕立てて煮込んだ鍋料理です。鍋の材料は、ぶつ切りにした鮭の身やアラに、玉ねぎ、長ネギ、豆腐、こんにゃく、キャベツなどを入れます。鮭のアラから良い出汁が出て、さらにそれに山椒をかけるのが本場の味です。
きりたんぽ鍋(秋田)
固めに炊いたご飯をすりつぶして串に巻きつけて焼いたきりたんぽを、舞茸やセリなどを入れた比内地鶏のスープで煮込んで味わう鍋です。しょうゆベースのスッキリとした味わいと、もっちりとしたきりたんぽの食感が楽しい鍋料です。
ちゃんこ鍋(東京)
「ちゃんこ」とは、相撲部屋の力士が作る料理のことすべてを指します。中でも鍋は栄養バランスも良く、手軽に食べられるものとして昔から親しまれています。具材や味付けのバリエーションは、相撲部屋ごとに独自のレシピがあり、力士たちがこだわりの味を引き継いでいます。
土手鍋(広島県)
鍋の内側に味噌を土手のように塗り、広島名物の牡蠣をメインに、野菜や豆腐など好きな具材を入れる鍋です。鍋の内側の味噌を崩しながら、好みの味付けにして食べるのが特長です。
水炊き(福岡)
「博多煮」とも呼ばれる福岡県の郷土料理です。鶏の肉や骨からじっくりうまみを引き出すために、水から煮たことから”水炊き”の名がついたと言われています。また、博多の水炊きは白菜よりもキャベツを使うことが多く、鶏だしのスープを堪能しながらつけだれも楽しむ鍋料理です。
『水炊き』食べる順番に決まりあり!?水炊きのおいしい食べ方
あっさりしつつコクのある「水炊き」は、中国料理の鶏がらスープを使った料理が発祥といわれており、別名「博多煮」とも呼ばれる福岡県の郷土料理です。
鶏がらを水からじっくりと炊き上げた白濁スープが特徴で、このスープで煮た鶏肉や野菜をポン酢や柚子胡椒などでさっぱりといただくのが一般的ですが、実は水炊きの食べ方には順序があります。最初にスープを味わい、次にやわらかく煮込まれた鶏肉を食べ、その後で野菜を入れ、最後のシメとして雑炊やうどん、ちゃんぽん麺などを味わうというのが、水炊きを存分に味わう正式な食べ方なのです。
『ちゃんこ鍋』お相撲さんの食事といえば…ゲン担ぎが詰まった「ちゃんこ鍋」
ちゃんこ鍋の「ちゃんこ」とは鍋以外の食事もさしており、力士が作れば鍋でなくても「ちゃんこ」と呼びます。この名前の由来には諸説あり、師弟が食べるものをあらわしたという説、中華鍋を語源とする説などがあります。ちゃんこが鍋料理を中心とするものになったのは明治時代以降で、栄養があり、なおかつ調理も簡単なためでした。
そんなちゃんこ鍋には鶏がら出汁のものが多く見受けられますが、これは鶏が二本足で立つさまが、土に手をつけないこと、すなわち相撲で負けないことを連想させるため、縁起を担いでいるのです。また、具の肉団子も、白星を想像させる縁起の良いものとして入れられることが多いようです。
『モツ鍋』活力の象徴!?「医者いらず」なモツ鍋のチカラ
九州博多の名物「モツ鍋」は牛(もしくは豚)のホルモンと野菜を煮込んだ鍋料理で、終戦後にアルミ鍋でモツを煮たのが始まりとされています。ニラやキャベツなどの野菜をたっぷり使い、ニンニクや唐辛子が入ったモツ鍋は、スタミナたっぷりの元気が出る鍋物です。そのため、地元では「医者いらず」と呼ばれることもあります。ちなみに、モツとは鳥・豚・牛などの臓物ホルモンを指していますが、モツのことをホルモンと呼ぶのは“体に良いイメージをつけるため、英語のhormoneを語源とした”という説と“大阪弁のほおるもん(捨てるもの)が語源”という説が代表的です。