万一の災害に備え、食品の備蓄をしていますか。大きな災害が起きると、物流が止まり、スーパーやコンビニでも食品が手に入りにくくなります。しかし「備蓄」ときくと、何から始めたらいいのかわからなくて難しく感じるかもしれません。そこで、何をどれだけ、どういう方法で備蓄するのか。
なぜ、食品の家庭備蓄が必要なの?
災害などで食料が手に入りにくくなったときに備えるため
いつ起こるかわからない台風や地震、豪雨などの大きな災害。いざ災害が発生すると、電気、ガス、水道などのライフラインが使えなくなったり、道路ががれきで塞がれたり水没したりして、物流が機能しなくなったりするおそれがあります。
過去の例によれば、災害発生からライフラインの復旧まで1週間以上かかるケースがほとんどです。また、災害支援物資が届かないことや、スーパーやコンビニで食品が手に入らないことが想定されます。
このため、最低でも3日分、できれば1週間分くらいの食品を家庭で備蓄しておくことが重要です。万が一、日常生活とかけ離れた事態が起こったとしても、いつもと変わらない、温かく栄養バランスのとれた食事があれば、心と体が満たされ、前向きな思考と元気に活動するためのエネルギーが湧いてきます。
何をどれだけ備蓄すればいいの?
水、カセットコンロは必需品。食品は栄養バランスを考えて1人1週間分の備蓄を
家庭にある食品をチェックし、栄養バランスを考え、家庭の人数や好みに応じた備蓄内容や量を検討しましょう。
大人2人、1週間分の家庭備蓄の例は、次のとおりです。
必需品
発災後は、ライフラインが停止する可能性があります。水とカセットコンロなどの熱源は必需品です。
水は、飲料水と調理用水として1人1日おおよそ3L程度必要です。
水道水は、塩素による消毒効果があり、3日程度は飲料水として使えます。保存するときは、清潔な容器に口いっぱい入れ、しっかりフタをして涼しい場所に置きましょう。
そのほか、ペットボトルや缶入りのお茶や清涼飲料水などもあると便利です。
カセットボンベは、1人/1週間あたり約6本必要です。お湯を沸かしたり、レトルト食品を温めたり、カップ麺などを食べられます。温かい食事は身体も温まり、緊張感や不安も和らげてくれます。
- 大人2人分の場合
- 水 2L×6本×4箱(1人1日3L程度)
- カセットコンロ、ボンベ×12本(1人1日1本弱程度)
主菜
災害直後は、炭水化物ばかりになりがちで、栄養バランスが崩れ体調不良や病気になる可能性があります。そこで、手軽にタンパク質をとれる上に長期保存できる缶詰を備えておきましょう。ツナ、サバ、イワシ、サンマなど魚介の缶詰や、コンビーフ、牛肉の大和煮、焼き鳥などの肉類の缶詰がおすすめです。また、肉や魚を使ったレトルト食品もおすすめです。
【例】大人2人分の場合
- 肉・野菜・豆などの缶詰×18缶
- 牛丼の素やカレーの素などのレトルト食品×18個
- パスタソースなどのレトルト食品×6個
主食
ごはん・パン・そば・うどんは、エネルギー源になります。
【例】大人2人分の場合 米2kg×2袋
- カップ麺類×6個
- パックご飯×6個
- 乾麺(そうめん300g×2袋、パスタ600g×2袋)
副菜と果物
野菜不足からビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素がとれず、便秘・口内炎などに悩んだという声もあります。そこで、ビタミン、ミネラル、食物繊維をとるために野菜を常備しておきましょう。じゃがいも、たまねぎ、かぼちゃなどの日持ちする野菜を多めに買い置きし、野菜ジュースやドライフルーツなども、あるといいでしょう。
【例】
- 梅干し、漬物、日持ちする野菜類
- 野菜の缶詰、野菜ジュース
- りんごやみかん、柿など日持ちのする果物
- 果物の缶詰
- 果物のジュース
- ドライフルーツ
その他
あめ、羊羹、チョコレート、ビスケット、せんべい、スナック類の菓子・嗜好品
みそ、しょうゆ、塩、砂糖、酢、食用油、マヨネーズ、ケチャップなどの調味料
インスタントみそ汁や即席スープ
食品の備蓄を始めるには?
普段食べているものを消費しながらストックする「ローリングストック法」がおすすめ
食品の備蓄は簡単に、誰でも無理なく始められます。普段食べているカップめんや缶詰、インスタント味噌汁など少し多めに買い置きし、賞味期限の古いものから消費し、食べたらその分を補充していくだけです。
備蓄のコツは、3つです。
- まずは、普段食べている食材を多めに買って、備える
- 普段の食事で食べる
- 食べたら買い足して、補充する
蓄える→食べる→補充することを繰り返しながら一定量の食品が備蓄されている状態を保つので、ローリングストック法とよばれます。
また、キャンプや山登りなどのアウトドアでも使える食品もありますので、ローリングストック法を日常生活の一部に取り入れてみましょう。
乳幼児や高齢者、持病・アレルギーのある方は?
それぞれの人に合った食品を最低2週間分、備蓄することが重要
災害時には、乳幼児や高齢者、食べる機能(かむこと・飲み込むこと)が弱くなった方、慢性疾患の方、食物アレルギーの方などへの配慮が必要です。災害時だからこそ、このような方たちの食事は大切になりますので、できるだけ普段の状態に近い食事がとれるように備えておきましょう。普段から備えをしておくと、いざという時の安心感が違います。
東日本大震災では、鶏卵・牛乳・小麦を除去したアレルギー対応食品を、1か月以上入手できなかった方がいます。それぞれの状況にあわせ、少なくとも2週間分の備蓄が必要です。
乳幼児の備え
◆ミルクの備え
どうしても母乳で足りない分は、粉ミルクを活用することもできます。そのため、粉ミルクと哺乳ビン、紙コップや使い捨てのスプーンを備えておくと安心です。
◆離乳食の備え
びん詰やレトルトの離乳食を多めにストックしておきましょう。またレトルトの離乳食は普段から食べ慣れておくことも大事です。
◆好きな食品や飲み物
子供が日ごろから好きな食品や飲み物を備えておくと、災害時でもリラックスしたり安心したりできます。
高齢者の備え
一般の家庭の備えとそれほど大きな違いはありません。ただ、体力が落ちたときや食欲がなくなったときなどに備え、レトルトのおかゆやインスタントの味噌汁などがあると安心です。体が弱ったときにどんなものが食べたくなるかを想像し、備えましょう。
食べる機能が弱くなった方の備え
かむことや飲み込むことなど食べる機能が弱くなった人や、栄養状態がよくない人を対象にした介護食品(スマイルケア食)を活用しましょう。レトルトの介護食品やとろみ調整食品など食べる機能に応じて様々なスマイルケア食があり、ドラッグストアで購入できます。
慢性疾患の方の備え
慢性疾患の方は、災害時に症状が悪化しがちです。日ごろから、栄養バランスの良い食事を心がけ、食塩やアルコールを控え、肥満に気を付けておきましょう。
また、医師が処方した食事療法を普段と同じように継続できるよう、備蓄する食品の内容を工夫しましょう。缶詰やインスタント食品、レトルト食品などは塩分が多いため注意が必要です。
食物アレルギーの方の備え
アレルギーの原因食物(アレルゲン)は、人によって異なります。利用される方のアレルゲンが含まれていない食品を選びましょう。
また、アレルギー対応食品は、災害時には特に手に入りにくくなるので注意が必要です。
例えば、アレルギー対応の粉ミルクアレルギー対応の離乳食、レトルトなどのおかゆやごはん、缶詰・レトルト食品・フリーズドライ食品、好物の食品、飲み物を備蓄しておきましょう。
前回の記事