「入社○年めの自分は、会社のことをよく知っている。だから若い人たちに教えてあげないと」
「自分が受けもっている仕事の量は誰よりも多い。きっと優秀だと見なしてもらえているのだろう」
キャリアを積むと、このような自信がついてくる人もいるはず。しかし場合によっては自信が裏目に出て、まわりの人から「要注意人物」に認定されてしまうことも……。
「仕事ができないのにできると思っている人」の特徴は、次の4つです。
会社や同僚の批評が多い
自信満々にアドバイスする
仕事を一人で抱え込む
なんにでも完璧を求める
「仕事ができないのにできると思っている人」の特徴1:会社や周囲の人を批評している
「あの人は優秀だけど、この人は微妙だよ」といった社内の人への評価を、同僚や部下に話す。
事あるごとに「うちの会社はもっと給料を上げるべきだよ」と批判的な意見を述べる。
これも「仕事ができないのにできると思っている人」の特徴です。
もしあなたが、このように社内の批評をしがちなのであれば、改めたほうがよさそうです。あなたは自分の意見をしっかりもって、まわりを冷静に見ているつもりかもしれません。しかし、本当のところは承認欲求を満たしたいだけ。自分は仕事ができると勘違いしているに過ぎない――。
こう述べるのは、総合テクノロジースクールを運営する株式会社divの代表取締役、真子就有氏です。
自身も学生の頃にアルバイトしていた会社で「社内の批評をする人」に遭遇したと言う真子氏は、そうする人の心理を「すごい人だと思われたがっている」と分析します。真子氏いわく、若手や部下など自分よりも立場の弱い人を相手に社内の批評をするのも、特徴のひとつ。自分よりも下の相手であれば反論してこないので、承認欲求を満たしやすいというわけですね。
しかし、それでは「否定しない人にだけ気を大きくする臆病者」だと真子氏。職場について思うところがあったとしても、口に出すのは控えて、自分がどう行動するかを考えるべきだと言います。
たとえば、批評できるほどまわりを見ているなら、仕事で悩んだり困ったりしている人も見つけられるはず。そういった人の手助けをすれば感謝してもらえますし、自然と承認欲求も満たされるのではないでしょうか。
「仕事ができないのにできると思っている人」の特徴2:自信たっぷりにアドバイスする
「まだ資料ができていないの? 仕方ないなあ。もっとこうすればいいのに」
「先輩、時代はオンラインですよ。常識的に考えて、商談もZoomでやるべきです!」
あなたは親切にアドバイスをしているつもりでも、態度には注意が必要です。自信満々に、つい断定的で命令的なアドバイスをしてしまうと、相手からは「上から目線で偉そう」と思われかねません。
この問題点を指摘するのは、精神科医の西多昌規氏。「自分だけが正解を知っている」といった気持ちが見え隠れする言動は、周囲をげんなりさせると言います。また、その正解に根拠がないと、ますます周囲を失望させる要因になるそう。
西多氏は、上から目線になりやすい人の心理状態を、「自分の実力は平均よりも高い」という思い込みが激しいと分析します。こうした人は、自分の優位性を揺るがすような相手を極端に恐れているため、ダメ出しや皮肉で相手の立場を下げ、自分の立場や尊厳を保とうとするのだそうです。あなた自身は、当てはまっていませんか?
では、仕事の進め方などについて意見やアドバイスを述べたいとき、どう振る舞えば「上から目線で嫌だな」と思われずにすむのでしょう。
心理カウンセラーの高見綾氏は、そもそもアドバイスしないことをすすめています。 アドバイスが欲しいなら「どうしたらいいかな?」と尋ねてくるはず。そうでなければ助言は求められていないので、ただ話を聞くことに徹するだけでよいとのこと。
たとえば「来週までに資料づくりを頼まれていて、忙しいんだよね」と言われたとき。「仕方ないなあ。こうすればいいのに」と言うのではなく、「そうなんだ」「何か手伝おうか?」といった返事で留めるのが無難です。いつもより受け身な姿勢を意識するといいですよ。
「仕事ができないのにできると思っている人」の特徴3:仕事を抱え込んでいる
プレゼンの準備にクライアントの訪問、後輩の指導まで引き受けて毎日残業。同僚が見かねて「手伝うよ」と言っても「大丈夫」の一点張り……。
仕事を頑張るのは決して悪いことではありませんが、なんでも抱え込んでひとりでやろうとするのは危険です。
心理カウンセラーの小高千枝氏は、業務を抱え込むと判断力が低下して優先順位をつけられなくなり、仕事の遅れにつながると指摘しています。これでは、職場の人からあきれられてしまうのも無理はありません。
小高氏によると、仕事を抱え込んでしまうのは、自分の存在価値を仕事に見いだそうとしているから。「職場で認めてもらいたい」「同僚に嫌われたくない」という気持ちから、頼まれたことを断れなくなってしまう――そんな心理背景があるようです。
仕事面で頼られたい気持ちがあるとはいっても、実際問題、請け負う量には限度があるもの。そこで小高氏は、抱えている仕事を書き出して「優先」と「要請」に分類し、両者のバランスをとることをすすめています。優先とは自分にとって必要で、「○○したい」と思う事柄。要請は会社にとって必要で、自分が「○○すべき」と思うことです。
「仕事ができないのにできると思っている人」の特徴4:なんでも完璧にやろうとしている
「簡単でいいから、急いで資料をつくって」と上司に言われたにもかかわらず、入念にリサーチをしたり、細かい言い回しや文書のレイアウトを気にしたり……。
このように何事も妥協せず、自分の理想を追い求める「完璧主義」は、まわりから煙たがられる原因となりえます。完璧主義であることのデメリットが表立って出てしまうからです。
精神科医の岡田尊司氏によれば、完璧主義の意味は次のとおり。
完璧主義とは「あらかじめ期待していたことを、その通りに行わないと、すべてが台無しになったような失望や苦痛を感じる心理的なとらわれ」
岡田氏は、こうしたとらわれをもつ人はモチベーションやパフォーマンスを高く保てる一方で、うまくいかないとむしろストレスを抱えると説明します。ですが、雑な仕上がりがストレスになるからといって時間ばかりかけるようでは、同僚を困らせるのも当然のこと。
また、自分の理想を追い求めるだけでなく他人へも完璧な出来を求めるケースもあるそう。これでは、周囲をうんざりさせてしまいますよね。
そこで、企業研修を行なう株式会社さすがコミュニケーションズ代表の岩田ヘレン氏は、完璧主義を脱するために「小さく始める」ことを提案します。先の資料づくりの例では、次のように改善できるでしょう。