「昔は先輩の背中を見て覚えた」
「仕事は見て盗むものだ」
「俺なんて誰にも教えてもらえなかった」
飲食店経営の現場でも、こうした言葉を耳にすることがあります。
実際、一昔前まではこの考え方でもある程度通用しました。
先輩の仕事を見ながら覚える。
失敗しながら学ぶ。
厳しい環境の中で成長する。
そうした時代が確かに存在していました。
しかし現在、多くの店舗で同じ考え方が通用しなくなっています。
それどころか、人材育成を妨げ、離職率を高め、売上改善の足を引っ張る原因になっているケースさえあります。
なぜ「俺の背中を見ろ」が通用しなくなったのでしょうか。
今回は飲食店コンサルの視点から、その理由について考えていきます。

- 昔と今では働く環境がまったく違う
- 見て覚えろでは何を見ればいいか分からない
- 「教えない」は教育ではなく放置
- 人材不足の時代に合わなくなった
- 優秀な人ほど辞めていく
- 教えることと甘やかすことは違う
- 売上改善できる店長は説明が上手い
- 時代が求める店長像は変わった
- まとめ
昔と今では働く環境がまったく違う
まず理解しなければならないのは、働く環境そのものが変化していることです。
昔の飲食店は比較的シンプルでした。
メニュー数も少ない。
接客ルールも少ない。
レジも単純。
予約管理も紙。
覚えることが限られていました。
しかし現在は違います。
タブレット注文。
キャッシュレス決済。
SNS対応。
デリバリー。
ネット予約。
アレルギー対応。
衛生管理。
昔と比べて業務量が大幅に増えています。
つまり、見て覚えるだけでは限界があるのです。
店長は毎日当たり前にやっているため簡単に見えるかもしれません。
しかし新人スタッフからすれば情報量が多すぎます。
教えなければ分からないことが圧倒的に増えているのです。
見て覚えろでは何を見ればいいか分からない
店長は、
「見ていれば分かるだろ」
と思っているかもしれません。
しかし新人スタッフからすると、
「何を見ればいいのか分からない」
という状態です。
例えば接客一つとってもそうです。
店長は笑顔で接客しています。
しかし新人には、
なぜそのタイミングで声を掛けたのか。
なぜその言葉を選んだのか。
なぜその動きをしたのか。
そこまでは分かりません。
結果だけを見ても理由は見えないのです。
野球でも料理でも同じです。
プロの動きを見ても初心者は理解できません。
解説があるから理解できるのです。
飲食店経営も同じです。
育成とは説明することです。
ただ見せることではありません。
「教えない」は教育ではなく放置
現場で時々見かけるのが、
「自分で考えさせるために教えない」
という考え方です。
しかし実際には教育ではなく放置になっていることがあります。
考えるためには基礎知識が必要です。
知識がない状態では考えることすらできません。
例えば地図を持たずに目的地へ行けと言われても困るでしょう。
最低限の情報があって初めて考えられるのです。
スタッフ育成も同じです。
基礎を教える。
理由を説明する。
その上で考えさせる。
これが本来の教育です。
何も教えずに、
「自分で考えろ」
は育成ではありません。
人材不足の時代に合わなくなった
飲食店経営において現在最も深刻な課題の一つが人材不足です。
昔であれば、
「辞めたら次を採用すればいい」
という考え方もできました。
しかし今は違います。
募集しても応募が来ない。
採用しても定着しない。
教育が追い付かない。
そんな店舗が増えています。
その中で、
「俺の背中を見ろ」
だけで済ませているとどうなるでしょうか。
新人は不安になります。
質問しづらくなります。
ミスが増えます。
怒られます。
そして辞めます。
結果として店長はさらに忙しくなります。
つまり教えないことによって最も苦しむのは店長自身なのです。
優秀な人ほど辞めていく
意外かもしれませんが、背中を見ろ型の職場で最初に辞めるのは優秀な人材です。
成長意欲が高い人ほど、
「もっと学びたい」
「もっと成長したい」
と思っています。
しかし何も教えてもらえない。
質問しても曖昧。
理由を説明してもらえない。
そんな環境では将来が見えません。
その結果、成長できる職場へ移っていきます。
逆に残るのは受け身の人材ばかりになります。
すると店舗全体のレベルが下がります。
サービス品質も下がります。
リピート率も下がります。
客単価向上も難しくなります。
最終的には売上改善まで遠のいてしまうのです。
教えることと甘やかすことは違う
ここで勘違いしてはいけないことがあります。
それは教えることと甘やかすことは違うということです。
最近は丁寧に教えることを、
「甘やかしだ」
と言う人もいます。
しかしそうではありません。
教えるとは成長のために必要な情報を渡すことです。
甘やかすとは責任を持たせないことです。
全く別の話です。
優秀な店長ほど教えます。
理由も伝えます。
そして最後は本人に任せます。
だから人が育つのです。
売上改善できる店長は説明が上手い
売上改善が進んでいる店舗には共通点があります。
それは説明が多いことです。
なぜこの接客をするのか。
なぜこの商品をおすすめするのか。
なぜこの掃除が必要なのか。
なぜこのルールがあるのか。
理由が分かると人は動きます。
意味が分からないと人は動きません。
だから成長しません。
店舗改善も進みません。
飲食店コンサルとして現場を見ると、業績の良い店舗ほど「教える文化」が根付いています。
逆に業績が低迷している店舗ほど「察しろ文化」が残っています。
この差は非常に大きいのです。
時代が求める店長像は変わった
昔の店長は自分が一番働く人でした。
誰よりも動く。
誰よりも頑張る。
それで成立していました。
しかし現在求められているのは違います。
人を育てる店長です。
自分が頑張るだけでは店舗は成長しません。
スタッフが成長して初めて店舗が成長します。
だから今の店長に必要なのは、
背中を見せることではなく、
言葉で伝えることです。
もちろん背中を見せることも大切です。
しかし背中だけでは足りません。
背中と説明。
背中と対話。
背中と教育。
これが現代のマネジメントなのです。
まとめ
「俺の背中を見ろ」が通用しなくなった理由は、若い世代が弱くなったからではありません。
時代が変わったからです。
業務が複雑になった。
人材不足になった。
働く価値観が変わった。
その中で昔と同じ育成方法を続けても成果は出ません。
飲食店経営で成果を出し、売上改善や集客施策、客単価向上、リピート率向上、店舗改善を実現するためには、人材育成の考え方を変える必要があります。
背中を見せるだけの店長ではなく、理由を伝え、成長を支える店長になることが求められているのです。
あなたの職場には「俺の背中を見ろ」タイプの上司はいますか?
また、そのやり方で成長できましたか?
それとも苦労しましたか?
ぜひコメントで教えてください。

