「笑顔で対応している」「言葉遣いも丁寧」「クレームもない」——それなのに、なぜかリピーターが増えない。こんな悩みを抱える飲食店は少なくありません。
実は、飲食店コンサルタントとして200店舗以上を見てきた経験から言えることがあります。それは、常連客が少ない店ほど、「ちゃんとした接客」をしているという逆説的な事実です。
「ちゃんとした接客」とは、マニュアル通りの丁寧な言葉遣い、型通りの笑顔、完璧なサービス。一見すると何の問題もないように見えます。しかし、そこには「人間味」がなく、「記憶に残らない」のです。
一方、常連客で溢れる店の接客は、時に「ちゃんとしていない」ように見えます。言葉遣いがフランクだったり、時には雑談が長かったり。でも、お客様は「また来たい」と思う。
本記事では、なぜ「ちゃんとした接客」が常連を遠ざけるのか、そして本当に常連を増やす接客とは何かを、具体例とともに解説します。

- 「ちゃんとした接客」の何が問題なのか
- 常連が多い店の接客は「ちゃんとしていない」
- 「ちゃんとした接客」が常連を遠ざける5つの理由
- 常連を増やす接客の5つの原則
- 「ちゃんとした接客」から脱却する5ステップ
- 「ちゃんとしすぎない」接客の成功事例
- 「丁寧さ」と「人間味」のバランス
- まとめ:接客は「正しさ」より「温かさ」
「ちゃんとした接客」の何が問題なのか
まず、多くの飲食店が信じている「正しい接客」を見てみましょう。
マニュアル接客の典型例
来店時 「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
注文時 「ご注文はお決まりでしょうか」 「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
料理提供時 「お待たせいたしました。〇〇でございます。ごゆっくりどうぞ」
会計時 「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
これ、完璧ですよね。丁寧で、礼儀正しく、何の問題もない。
でも、何も印象に残りません。
なぜ記憶に残らないのか
人間の脳は、「普通」を記憶しません。記憶するのは、「感情が動いた瞬間」だけです。
- 嬉しかった
- 驚いた
- 笑った
- 感動した
- ちょっとムッとした
こうした感情の揺れがない限り、その体験は記憶に残らず、「また行きたい」とも思いません。
マニュアル通りの接客は、確かに「悪くない」。でも、「良い」でもない。つまり、無味無臭で、記憶に残らないのです。
コンビニとの差別化ができない
セルフレジ、無人店舗が増える中、「丁寧だけど機械的な接客」は、もはや人間がやる意味がありません。
お客様が飲食店に求めているのは、「人間にしかできない、温かみのある接触」なのです。
常連が多い店の接客は「ちゃんとしていない」
では、常連客で溢れる店の接客を見てみましょう。
実例1:新橋の焼き鳥屋「とり吉」
平日の夜、常連客で満席のこの店。店主の接客はこうです。
常連客が入ってくる 店主:「おう、山田さん!今日も来たか!」 客:「来ちゃったよ(笑)」 店主:「いつもの?」 客:「うん、頼むわ」 店主:「あ、今日は肝が良いの入ってるから、それも焼いとくわ」
注文 客:「あと、ハイボールもう一杯」 店主:「はいよー」(言葉だけで、振り向きもしない)
会計時 客:「ごちそうさん」 店主:「おう、また来いよ。気をつけて帰れよ」
実例2:下北沢のカフェ「まどか」
20代女性客が多いこの店。店員の接客は:
常連客が入る 店員:「あ、〇〇さん!お久しぶりです〜」 客:「あ、こんにちは。2週間ぶりかな」 店員:「そうですね!前回、就活の話してましたよね。どうでした?」 客:「実は内定もらって…」 店員:「えー!おめでとうございます!じゃあ今日はお祝いに、新作のケーキサービスしちゃいます!」
料理提供時 店員:「これ、サービスです。内定おめでとうございます」 客:「えっ、いいんですか!ありがとうございます!」 店員:「いえいえ、私も嬉しいです。良かったですね〜」
これらの接客の共通点
一見すると、「ちゃんとしていない」ように見えます。
- 言葉遣いが崩れている
- マニュアルにない対応
- プライベートな会話
- サービスの統一性がない
でも、お客様は確実に「また来たい」と思います。なぜか?
人間対人間の関係性があるからです。
