2025年に入ってから、派遣会社の倒産が急増しており、「働いていた派遣会社が突然なくなる」というリスクが誰にでも起こり得る時代になっているようです。今こそ雇用のあり方を考え直すタイミングかもしれません。
規模別の特徴としては、小規模な倒産(負債5000万円未満)が32件(全体の約54.2%)と半数以上を占めています。負債1億円以上の倒産も16件(約27.1%)あり、中堅規模の派遣会社でも経営が厳しくなっている状況であるといえるでしょう。
地域的にも関東(東京都含む)が23件で最多、近畿が13件、九州6件、東北4件と、地方でも倒産増加の兆しがあります。特に近畿はこれまでの最多件数と同数となっており、地方企業のリスクも高まってきています。

- 最近の動き:倒産件数が急増している
- 背景・要因 — なぜ倒産が増えているのか
- 派遣会社倒産のリスク — 働く人にとって何が起きうるか
- なぜ“人手不足”なのに“派遣”が苦しいのか — 逆説の構造
- 今後の見通しと注意点
最近の動き:倒産件数が急増している

- 2024年度(2024年4月〜2025年2月)の「職業紹介業・労働者派遣業」の倒産件数は 92件 に達し、過去10年で最多となりました。前年の91件を超えています。
- さらに 2025年1〜3月だけで、派遣会社の倒産は 29件。この期間としては1997年以降で最多です。
- 2025年初頭は倒産件数のペースがさらに加速しており、1月から5月で累計53件と、前年同期比で約2倍以上に増加しています。
これら数字は、「派遣会社=需要が高い」というイメージが強い中で、 想像を超えるペースで“淘汰(とうた)”されている ことを示しています。
背景・要因 — なぜ倒産が増えているのか

倒産増加の背景には、以下のような構造的・環境的な要因があります。
・“人手不足”/“人材の流動化”の激化
- 日本全体で深刻な人手不足が続いており、それは派遣会社にとってもダブルで影響しています。なぜなら「派遣スタッフを確保する側」も人手を確保できず、 派遣元の会社自体が人材難に陥る からです。
- また、近年は「待遇の改善を求めて転職する人」「正社員を目指す人」が増えており、派遣→正規などへの流動が活発です。派遣会社に残るスタッフが減ると、経営の基盤が揺らぎやすい。
・競争の激化・“需給ギャップ”の拡大
- 求人市場全体は活発ですが、 “高待遇を出せる企業”と“そうでない中小の派遣会社” のギャップが広がっており、大手や待遇の良い企業に人が流れ、中小の派遣会社は人を集めづらくなっています。
- また、派遣会社を通さずに「企業が直接雇用で人を採る」動きも強まり、 従来型の派遣ビジネスの価値が相対的に下がってきている という指摘もあります。
・経営体力の弱さ(特に中小・零細企業)
- 倒産した派遣会社の多くは小規模、中小 — 資金力やバックアップの余力が乏しい会社が多く、 少しの売上低迷や人材流出で経営が成り立たなくなる。
- また、派遣会社が自らスタッフを確保・管理・教育する「人材プール維持コスト」が低賃金では見合わず、 人件費や管理コストの上昇が収益を圧迫 する構造もあるようです。
・“人手不足倒産”全体の増加の余波
- 実は「人材派遣会社に限らず」、 人手不足を原因とする倒産(従業員退職や採用難、人件費高騰など)が、建設業・物流業・サービス業など幅広く増えており、2024年・2025年は過去最多レベル。
- このように労働力をコントロール・仲介する立場の派遣会社も “人手不足のあおり” を受けており、 全体の構造変化 のなかで倒産が相次いでいると見る専門家もいます。
派遣会社倒産のリスク — 働く人にとって何が起きうるか

派遣会社が倒産することで、次のようなリスク・影響があります。
- 給与や手当などの未払い:実際、派遣会社の破産で 給与未払い になった事例も報告されています。
- 派遣先との契約消失、雇用の不安定化:派遣元がなくなると、派遣先で働いていたスタッフは契約を失う可能性があります。
- 次の就職先探しの煩雑さ:倒産後にすぐ別の派遣会社や正社員を探すとなると、条件や待遇が一時的に悪くなる可能性があります。
- 派遣会社全体の信頼低下:倒産リスクを考慮して、「派遣は不安定」「直接雇用を優先したい」という企業の流れが加速する。
なぜ“人手不足”なのに“派遣”が苦しいのか — 逆説の構造

普通、「人手不足=派遣会社のニーズ拡大」と考えがちですが、現在起きているのは その逆 です。理由は、以下のような「逆説的構造」にあります。
- 人材が不足 → 企業は待遇の良いところに人を集める → 中小派遣会社は人材を確保できず → 派遣元が機能しなくなる。
- 派遣会社を使わず「直接雇用」や「スキマバイト」、「副業」で人を確保する企業が増えており、派遣会社の“中間役”としての存在価値が相対的に低下。
- 人手不足で人件費が高騰 → 派遣会社もコスト高になるが、賃上げして待遇を良くすれば収益を圧迫 → 経営が成り立たなくなる — 特に資金力の弱い会社ほど負荷が重い。
つまり、労働市場の“売り手有利(働き手優位)”が強まる中で、「安く人を提供する派遣会社」というビジネスモデルそのものが 構造的に弱くなっている のです
今後の見通しと注意点

- 倒産ペースは依然として高く、年内に 過去最多更新 の可能性が高い、との見方があります。
- 一方で、大手・資金力のある派遣会社や、待遇・管理体制が整っている会社は、相対的に安定。また、「スキルのある人材の派遣」「専門職・高度人材の仲介」など付加価値の高いサービスに特化する会社には一定の需要が残る可能性があります。
- 派遣で働く/使う際には、「会社の規模・実績」「給与支払いの信頼性」「契約内容の透明性」などを慎重に確認することが、今後ますます重要になってきます。
