2025年のサンマを巡る状況を「漁況・資源状況」「漁獲量・価格」「味・鮮度・料理」「消費・流通」「直面する課題と今後の展望」の5つの柱で、丁寧に解説いたします。

1. 漁況・資源状況

来遊・海況の見通し
2025年(令和7年度)のサンマについて、 水産庁/ 水産研究・教育機構 が発表した「長期漁海況予報」によれば、8月から12月にかけての道東~常磐海域において、来遊量は「昨年並みの低水準」が見込まれているとしています。
具体的には
- 漁期を通じた来遊量は、昨年とほぼ同じく低水準。特に漁期前半(8月~10月)は昨年を下回る可能性がある。
- 後半(10月以降)にはある程度の回復が期待される。
- 1歳魚(体長29cm以上になるもの)に関しては、割合は昨年並み、体重は昨年を上回る見込み。つまり“魚体が大きめ”という期待が出ています。
- 海況面では、黒潮・親潮の分枝が北偏傾向で推移しており、三陸近海などでは冷水域が形成される可能性も指摘されています。これがサンマの来遊・滞留に影響を与える要素です。
このように、量としては依然厳しいものの、魚体のサイズには多少のプラス要因あり、という状況です。
資源量・漁獲可能量(TAC)

資源管理面でも重要な変化があります。例えば、 北太平洋漁業委員会(NPFC)において、サンマの漁獲制御ルール(HCR)に基づき、2025年は漁獲枠(TAC:総漁獲可能量)が 10%削減 されたという報道があります。
また、国内でも水産政策審議会資源管理分科会が「1997年以降、上限が設定されていた枠が初めて10万トンを下回った」旨を報じています。
たとえば、報道によれば、2025年の漁獲枠は 9万5623トン と、前年からさらに引き下げられたという数字も出ています。
このように、サンマの資源状況は「数・量ともに依然として厳しい」という認識が広がっています。
2. 漁獲量・価格・流通

水揚量の推移
日本国内におけるサンマの年別水揚量を、例えば 全国さんま棒受網漁業協同組合 の統計で見ると、以下のような状況です。
- 2021年:18,291トン
- 2022年:17,910トン
- 2023年:24,433トン
- 2024年:38,695トン
このように、2010年代初期に20万トン前後だった水揚量が、近年激減しており、特に2019年以降は5万トンを切る年もありました。
ただし、2024年には3万8695トンという数値となっており、やや回復傾向が出ています。
2025年については、まだ確定値として公表されていませんが、来遊量などを勘案すると“今年も昨年並み、あるいはやや低め”という見通しです。
価格の動き・消費者目線
漁獲量が少ない時期が続いたことで、サンマの価格はかつての“庶民の魚”とは言えない水準に上昇していました。例えば、2023~24年は一尾数百円を超える例も多く報じられています。
しかし、2025年の報道では「今年のサンマは大ぶり・脂の良さ・水揚げ好調という声がある」ため、価格が前年よりも下がるケースも出ています。たとえば、東京都内の鮮魚店では「北海道産の新サンマが一匹410円ほどで並んでいた」といった報道もあります。
さらに別の店では、「去年の同時期に比べ200円ほど安い」という社長の発言も出ています。
ただし、冒頭に述べた「数量が依然として低水準」という事情から、価格が劇的に下がって“超お買い得”というわけではなく、あくまで“昨年比ではやや改善”という程度です。
流通・市場の特徴
- 漁場が日本近海から遠く、公海・北方域に移動しているため、運搬コスト・鮮度保持などの流通課題が増えています。
- また、台湾・中国などが北太平洋でのサンマ漁獲を大きく占めており、日本国内での漁獲が相対的に少ないという状況も生じています。例えば、24年報道では「最もサンマを漁獲している国・地域は台湾、その次中国、日本は第3位」との記述があります。
- 鮮魚店・小売店では“どれだけ鮮度・魚体の大きさ・脂のり”を訴求できるかがポイントになっており、「今季のサンマは例年以上に良さそう」という声があるのも特徴です。
3. 味・鮮度・料理としての楽しみ方

魚体・脂のりの良さ
2025年のサンマについて、多くの鮮魚店・専門店が「魚体が大きい」「脂が乗っている」「いままで見なかったレベル」という評価をしています。たとえば:
- “170g~200gぐらいのサンマが出ている”との報道。
- 魚屋の店長コメント:「すごくふっくらして脂のってますよ。去年と比べてもかなり安い」
このように、量的には厳しいものの、「質」が向上している面があります。これは、漁獲された魚体が大きめということで、消費者から見れば“サイズが良い=満足度が高い”ということにつながります。鮮度に関しても、「銀色に輝いている」「目が澄んでいる」といった早期水揚げの報道があります。
旬・料理のおすすめ

サンマの旬は一般に「秋」、特に10月~11月と言われますが、2025年は北海道・根室などで8月15日に初水揚げされたという報告もあります。
家庭での楽しみ方としては:
- 塩焼き:定番中の定番。新鮮なサンマをシンプルに塩+大根おろしでいただくのが王道。
- 刺身/たたき:魚体が大きく脂がのっている今年ならではの楽しみ方。サンマの刺身を出す店も増えているようです。
- ご飯もの:サンマご飯、炊き込みご飯、寿司ネタとしてのサンマも人気。特に「身がぎっしり詰まったサンマご飯」が報じられています。
- 保存・加工:時期が早めの水揚げなら、冷蔵保存・一夜干し・塩麹漬けなど、少しひと手間を加えるのも良いでしょう。
鮮度・選び方のポイント
- 目が澄んでいる/体表が銀色に輝いているもの。報道で「氷詰めされ、目が澄んで、体表銀色」との記述あり。
- 魚体が太め/重みがあるもの。2025年は「大きめ」という評価が多いため、サイズチェックは重要です。
- 焼く場合は、内臓を抜かないでそのまま焼く“丸ごと”スタイルが風味をより楽しめます。刺身やたたきにするなら、新鮮なうちに捌くことが大切です。
- 購入時期として、9月前半までは魚体が大きめで価格も比較的抑えめ、10月以降は魚体が小さくなったり価格が上昇したりするという予測もあります。
4. 消費・流通・食文化における位置づけ

家庭・食卓の位置
かつてサンマは「1尾100円前後」で手に入る庶民の食卓の魚でした。ところが近年、漁獲量減少・流通コスト上昇・魚体サイズの小型化などにより「高嶺の花」的な魚になっていました。
2025年には“質”が良くなっているという報道もあり、「久しぶりにサンマを楽しめる/価格もやや落ち着きそうだ」という期待も出ています。消費者視点では、鮮度・サイズ・価格のバランスが鍵になります。
小売・外食の動き
- 鮮魚店・スーパーでは、サンマをメインに“秋の味覚フェア”を展開する店舗が増えています。例えば、「味よし!量よし!値段よし!2025年のサンマが登場!」という鮮魚店ニュースもあります。
- 飲食店でも「サンマの刺身」「サンマの塩焼き定食」「サンマご飯」など、専門メニューを打ち出しており、魚体が大きめ・脂のり良好という今年ならではの訴求がされています。
- 流通側では、魚が遠方の公海域で漁獲されるケースが増えているため、鮮度保持・輸送時間・コスト管理が課題となっています。
食文化・季節感
サンマは「秋の味覚」の代表格のひとつ。読書の秋・食欲の秋・行楽の秋といった季節の中で、秋刀魚の塩焼きが登場する光景は日本の秋の風物詩ともなっています。2025年も、その文化的な位置づけは変わらずですが、魚体・価格・流通といった“裏側”に変化が生まれています。
また、SNS・食べログ・グルメメディアでは「〇〇産サンマ」「初水揚げサンマ」「脂ののったサンマ」といったキーワードが出ており、消費側の“こだわり”も高まっています。
5. 直面する課題と今後の展望

課題
- 資源の低水準:来遊量・水揚量ともに“低水準”が続いており、量による安心感はまだ確保されていません。例えば「今年も来遊量は昨年並み」という予報が出ています。
- 漁場の遠方化・流通コスト:従来であれば日本沿岸でも漁獲されたサンマですが、近年は公海域・北方域での漁場が主流化しており、漁船・燃料・人件費・鮮度管理にかかるコストが増しています。これが価格に反映されやすい側面があります。
- 気候変動・海況変化:海水温の上昇・海流の変化・プランクトン量の変動等がサンマの回遊・来遊に影響を与えています。たとえば、黒潮・親潮の北偏が指摘されており、これは魚群の位置・量を変える要因となります。
- 需要と価格のギャップ:魚体・脂のりが良いという今年の好材料がある一方で、全体量が少ないため“手に入りやすさ”・“価格の安定性”という観点ではまだ安心できる状況ではありません。
- 資源管理・国際協調:サンマは日本だけの資源ではなく、北太平洋を回遊する魚であり、台湾・中国・ロシアなどの漁獲も影響します。国際的な資源管理が十分とはいえず、不透明感が残ります。
今後の展望・注目点
- “質”向上の恩恵:2025年は魚体サイズ・脂のりという“質”的な面で好印象が報じられており、これは消費者・流通・飲食店にとってポジティブな材料です。購入・消費を促す意味でも期待できます。
- 流通・加工技術の進化:遠方漁場からの鮮魚輸送・冷凍保存・加工品化など、流通・加工の仕組みがより重要になるため、技術的改善が鍵となるでしょう。
- 地域・ブランド化:どこで獲れたサンマか(例:北海道・根室産)、いつ水揚げされたか、どのような経路で流通したか、といった“こだわり”が差別化ポイントとなっています。
- 環境・持続可能性の視点:数が少ない中で“来年も楽しめるように”という資源管理意識が高まりつつあり、漁業者・研究者・行政が協調する動きが重要になります。
- 消費者行動の変化:サイズ・鮮度・価格・産地等への関心が高まっており、「今年のサンマは良い」という評判が出ていることで、消費者の“選択眼”がよりシビアになっています。
まとめ

総じて言えば、2025年のサンマは 「量的にはまだ厳しいものの、魚体・脂のりといった質的要素で明るい材料が出てきた年」 と整理できます。
- 来遊・漁獲可能量の見通しは「昨年並みの低水準」。量での安心感はまだ十分ではありません。
- 魚体のサイズ・脂のりという点では「かなり良い」という声が多く、消費者・流通・飲食店ともに注目しています。
- 価格も、昨年ほどの高騰には至っておらず、「少し安め」「手に届きやすくなってきた」といった報道があります。
- ただし、資源管理・漁場環境・流通課題・国際漁業協調など、根本的な課題は依然として存在し、“来年以降も安心して楽しめる”かどうかは予断を許しません。
- 消費者としては、今シーズンのサンマを 「旬・質を楽しむ」 という視点で早めに味わうのがおすすめです。鮮度・サイズ・価格のバランスを見て、お気に入りの産地や調理法を選ぶと良いでしょう。
