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japan-eat’s blog

食に関する事や飲食店の運営に関する内容を記載してます。

意思表示とは何か ―人と人、組織と社会をつなぐ「約束」の起点―

意思表示と責任は、意思表示が法律効果を生み出すための前提であり、意思表示の不備が責任問題につながるという関係にあります。意思表示とは、法律効果の発生を目的とする意思を外部に示す行為で、契約成立などの法律関係を形成します。意思表示が真意と異なったり、錯誤や強迫によって行われたりした場合には、無効や取消しといった責任問題が生じ、表意者の保護や相手方との公平性を考慮した法的なルールが適用されます。

1. 意思表示の基本的な意味

「意思表示(いしひょうじ)」とは、ある法律上の効果を発生させようとする意思を外部に表現する行為のことである。
つまり、「自分の内心の考え(意思)」を、言葉や態度などで他人に伝える行為を指す。

たとえば、

  • 商品を「買います」と言う(→売買契約の申込み)
  • 「売ります」と答える(→売買契約の承諾)
  • 「辞めます」「退職します」と言う(→労働契約の解約申入れ)

これらはいずれも、法律上の効果(契約の成立・終了など)を生じさせるための「意思表示」である。
民法の世界では、この意思表示を基礎として「契約」「贈与」「遺言」「解除」など、あらゆる法律関係が成り立つ。

 

2. 意思表示の3要素 ― 内心と外部表現の関係

意思表示は、次の3つの要素から成り立つとされる。

  1. 効果意思:一定の法律効果を生じさせようとする意思
     (例)「この商品を買うことで所有権を移転させたい」
  2. 表示意思:自分の意思を外部に表そうとする意思
     (例)口頭や書面で相手に伝えようとする気持ち
  3. 表示行為:実際に言葉や態度で表現する行為
     (例)「買います」と発言する、サインする、挙手するなど

つまり、内心の意思と外部への表示が一致して初めて「有効な意思表示」となる。
この「内心と表示の一致」が崩れると、後述する“錯誤”“虚偽表示”“詐欺・強迫”などの問題が生じる。

 

3. 意思表示の種類

意思表示には、さまざまな形がある。主に次の3つに分類できる。

(1)単独行為

一人の意思表示だけで法律効果が生じるもの。
例:遺言、契約の解除、辞任、採用の内定取消など。

(2)契約(双務行為)

当事者双方の意思表示の合致(申込みと承諾)によって成立するもの。
例:売買契約、雇用契約、賃貸借契約など。

(3)合同行為

複数の人が同じ目的で共同して行う意思表示。
例:会社設立時の発起人の同意、株主総会の決議など。

このように、意思表示は社会生活のあらゆる局面で行われている。
私たちは日常の中で、気づかぬうちに無数の意思表示をしているのである。

 

4. 意思表示の効力発生時期 ― 到達主義

民法では、意思表示の効力がいつ発生するかについて明確なルールがある。

(1)原則:到達主義

相手方のある意思表示(たとえば契約の申込み・承諾)は、
相手方に到達した時点で効力を生じる(民法97条1項)。

「到達」とは、相手が現実に知ったかどうかではなく、
通常知ることができる状態になった時点(郵便が届いた・メールが受信フォルダに入った等)を指す。

(2)例外:発信主義

民法改正(平成29年)により、電子メールなどでは一定の例外が生まれたが、
原則は依然として「到達」して初めて有効となる。
たとえば「辞表を出したが、会社が受け取っていない」場合、
原則として到達していなければ効力は発生しない。

 

5. 無効や取り消しとなる意思表示

意思表示が常に有効とは限らない。
内心の意思と外部の表示にずれが生じた場合、一定の条件で「無効」や「取り消し」となる。

(1)錯誤(民法95条)

思い違いによってした意思表示。
たとえば「この土地がA市にあると思って買ったが、実際はB市だった」という場合。
要件を満たせば無効とされる。
ただし、単なる計算ミスや軽い不注意では無効とはならない。

(2)虚偽表示(民法94条)

相手方と通じて、真意ではない意思表示を行うこと。
たとえば「売買契約をしたように装って登記だけした」など。
この場合、当事者間では無効となるが、善意の第三者にはその無効を主張できない(第三者保護)。

(3)詐欺・強迫(民法96条)

だまされたり、脅されたりしてした意思表示は「取り消すこと」ができる。
ただし、詐欺については相手方が善意の第三者に権利を譲渡した場合、取消は制限される。

 

6. 意思表示と労働関係の実務

意思表示は労働法の世界でも非常に重要である。
雇用契約の締結、労働条件の変更、退職、解雇――
これらはいずれも、法的には意思表示によって成立・終了する。

(1)雇用契約の成立

求人に応募し、面接で「採用します」「入社します」と双方が合意した時点で契約が成立する。
つまり、内定通知や雇用契約書は「意思表示の確認書」に過ぎない。
実際の契約は“合意の瞬間”に成立している。

(2)退職の意思表示

労働者が「辞めたい」と申し出ることも、解約の意思表示である。
期間の定めのない労働契約では、2週間前に申し出れば退職できる(民法627条1項)。
ただし、会社がその意思表示を「受け取っていない」「無効だ」と主張することもあり、
トラブルを防ぐには、書面やメールで明確に意思表示を残すことが重要だ。

(3)解雇の意思表示

逆に、会社が労働者を辞めさせる(解雇)場合も意思表示が必要である。
この場合は労働基準法20条により、30日前の予告または予告手当の支払いが義務づけられている。
一方的に「明日から来なくていい」というのは、意思表示として不適切であり、無効になる可能性が高い。

 

7. 意思表示と心理 ― 「伝える」ことの難しさ

法的な側面だけでなく、意思表示は心理的にも奥深いテーマである。
人は、必ずしも自分の本心を正確に表現できるわけではない。
とくに日本社会では、曖昧な表現や「察してほしい文化」が根強く、
意思表示の不一致が人間関係の摩擦を生みやすい。

たとえば職場での場面を考えてみよう。
「この仕事、無理そうです」と部下が言ったとき、
上司は「努力すればできるという意味だ」と受け取るかもしれない。
一方、部下は「もう限界」という意思表示のつもりだったかもしれない。
このような“認識のズレ”が、メンタル不調や離職につながるケースもある。

つまり、意思表示は単に言葉を発することではなく、相手に正確に伝わって初めて意味を持つ。
ここに「コミュニケーションの透明性」と「信頼関係」の重要性がある。

 

8. 意思表示と責任 ― 発言には重みがある

法律上の意思表示は、原則として「撤回できない」。
一度「契約します」「退職します」「解約します」と明確に示した場合、
その効果は法的に認められる。
したがって、言葉の使い方には慎重さが求められる。

また、意思表示には「責任」が伴う。
契約社会においては、発言や署名がそのまま権利・義務の発生を意味する。
とくに経営者や管理職の発言は、会社の「意思表示」として扱われることが多い。
軽率な約束やあいまいな返答は、後に法的トラブルの原因になる。

 

9. デジタル時代の意思表示 ― SNS・メール・電子契約

近年は、口頭だけでなく電子的な方法で意思を示す場面が急増している。
電子メール、LINE、Slack、電子契約サービスなどがその典型だ。
これらも「意思表示の手段」として有効とされる。

しかし注意すべきは、“送信しただけでは到達したとは限らない”という点。
相手が確認できる状態(受信・閲覧可能)になって初めて効力が生じる。
したがって、重要な契約や解約通知は、内容証明郵便や電子署名付き契約など、
証拠が残る方法を取ることが望ましい。

 

10. 意思表示の本質 ― 「意志」と「信頼」の交点

意思表示は、単なる法律概念にとどまらない。
それは「自分の意志を外に出し、他者とつながる」行為であり、
社会のあらゆる関係性の基盤である。

言い換えれば、意思表示とは信頼の出発点である。
ビジネスにおいても、人間関係においても、
明確で誠実な意思表示が信頼を生み、あいまいな意思表示が不信を生む。

「言った」「言わない」の争いを避けるには、
・記録を残す(書面・メール)
・確認を取る(再伝達・署名)
・相手の理解を確かめる(フィードバック)
といった工夫が不可欠だ。

 

11. 結論 ― 意思表示は社会の“血流”

意思表示は、社会における「意思の流れ」、すなわち“血流”のようなものである。
企業も、行政も、個人も、すべてこの「意思表示」によって動いている。
もし意思表示がなければ、契約も約束も信頼も成立しない。

現代社会においては、法的知識だけでなく、
「自分の意志を正確に伝える力」「相手の意図を正しく汲み取る力」が問われている。
その両方を高めることが、紛争を防ぎ、豊かな人間関係を築く鍵となる。

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