昨今のサウナブームの影響を受け、集客を見込んでサウナの導入を検討する施設が増えています。
サウナが注目されている背景として、主に3つの理由があります。
・健康意識の高まり
・メディアやSNS・YouTubeの影響
・クローズドカルチャーを好む若年層でのブーム
サウナは健康に良いというイメージが浸透し、健康意識の高まりとマッチしたことが理由のひとつです。
加えて有名人などがSNSやYouTubeをはじめとしたメディアで発信するようになり、より多くの人にサウナの良さが認識されるようになりました。
１．サウナ事業が注目される背景
ここ数年、日本における「サウナブーム」は一過性の流行ではなく、生活文化の一部として定着しつつある。かつては中高年男性が銭湯や健康ランドで楽しむものであったサウナが、近年は若者・女性・カップル・ビジネス層などへと裾野を広げ、「サ活（サウナ活動）」という言葉まで誕生した。
背景にはいくつかの要因がある。
- ストレス社会の拡大：長時間労働やリモートワークによる孤独感など、現代人のメンタル疲労が増大し、「整う」というリセット体験が求められるようになった。
- メディア・SNSの影響：「サ道」などのドラマやYouTube・Instagramでの発信により、サウナの健康・リラックス効果が可視化された。
- 観光・地域創生との親和性：地方の温泉地や宿泊施設が「サウナ×自然」「サウナ×食」などを軸に再ブランディングし、地域の新たな集客資源になっている。
つまり、サウナは単なる入浴施設ではなく、「体験型ウェルネスビジネス」として再評価されているのだ。
２．サウナ事業の魅力
(1) 参入の幅広さ
サウナは大規模な温浴施設だけでなく、小規模ホテル・飲食店・キャンプ場・民泊・オフィスビルなど、多様な業態で導入可能な点が魅力である。
特に近年では以下のような形態が人気だ。
- 貸切プライベートサウナ（1〜4名程度の個室型）
- アウトドアサウナ（キャンプ場・グランピング施設など）
- サウナ併設カフェ・バー（サウナ後に飲食を提供）
- 宿泊型サウナリゾート（宿泊・水風呂・自然景観をセット販売）
この柔軟性は、従来の温浴施設よりも小資本・短期間での立ち上げを可能にし、新規参入のハードルを下げている。
(2) 高い顧客リピート率
サウナの魅力は「習慣化」にある。多くの利用者が週1〜2回ペースで訪れ、「整う」感覚を求めて継続的に利用する。
加えて、コミュニティ形成力が強く、「常連文化」や「SNSでのシェア」が自然に生まれる。これは、飲食業やフィットネス業と同じく、固定客化がしやすい業態といえる。
(3) 感情価値が高い
サウナは理屈ではなく「感覚」で体験するビジネスである。
発汗→冷却→休憩のサイクルで生じる「自律神経のリセット」「幸福感の上昇」は、科学的にも実証されつつあり、単なるリラクゼーションを超えて“心のデトックス空間”としてのブランド価値を持つ。
これにより、価格競争になりにくく、体験価値（UX）を中心とした高単価設定が可能になる。
３．サウナ市場の現状と今後の動向
(1) 市場規模の拡大
日本サウナ総研の調査によると、2024年時点で国内サウナ市場は約4000億円規模と推定されており、コロナ禍以降、年率10〜15％の成長を続けている。
また、全国の温浴施設約1万店のうち、サウナ設備を持つ店舗は約7割に達する。特筆すべきは、「単独型」サウナ施設が急増している点で、特に都市部では「1〜2人用個室サウナ」「予約制プレミアムサウナ」がブームになっている。
(2) 女性・若年層市場の拡大
以前は男性中心だったが、現在は女性利用者が全体の3割を超え、20〜30代が急増中。女性専用フロアやアメニティ特化型など、デザイン・空間演出を重視した店舗が成功している。
この動きは、「美容・健康・リラックス」を切り口に、サウナが新しいライフスタイルの一部として受け入れられている証拠である。
(3) 海外トレンドの影響
北欧・バルト三国などのサウナ文化を日本流に再構築した「ロウリュ」「アウフグース」演出が定着した今、次のトレンドは**“体験の深化”と“地域連携”**である。
- 自然と融合する「リトリート型」
- 地元木材や温泉を活かした「地域素材サウナ」
- 食・音楽・アートと融合した「複合エンタメ型」
今後は単なる“熱と水の施設”ではなく、「五感で楽しむ総合ウェルネス空間」へと進化していくと予測される。
４．運営の実際と成功のポイント
(1) 立地とターゲット設定
サウナ事業は「どこに・誰向けに」設計するかで大きく収益性が変わる。
- 都市型（会社員・カップル向け）：駅近・アクセス重視。価格は1時間2,000〜4,000円。高稼働率がカギ。
- 郊外型（地域コミュニティ・ファミリー向け）：大型駐車場・温浴との複合。入浴＋飲食・物販で客単価を上げる。
- 観光地型（宿泊・体験型）：自然環境と融合した「非日常体験」を売りにする。SNS映えや外国人観光客にも強い。
(2) 初期投資と収益モデル
- 小型プライベートサウナ（2室程度）
初期投資：約1,000〜2,000万円
月間売上：約150〜300万円（稼働率60〜80％）
利益率：約20〜30％ - 中規模サウナ＆カフェ型
初期投資：3,000〜5,000万円
月間売上：300〜600万円
飲食・物販・イベントなど複合収益モデルが有効。 - 宿泊・アウトドア型サウナリゾート
初期投資：5,000万〜1億円超
宿泊・食事・体験型プランにより客単価2〜4万円。リピーター中心。
いずれの形態も、**「サウナ単体ではなく体験全体で収益化する設計」**が成功の鍵になる。
(3) 運営上の注意点
- 温度・衛生管理の徹底
サウナ室温、湿度、水質、タオル交換などの管理は厳格に。衛生トラブルは即クレームや炎上につながる。 - 顧客体験設計（UX）
照明・音楽・香り・導線・休憩スペースの設計は、「整う」体験を支える最重要要素。 - ブランドストーリーの構築
「このサウナでしか味わえない物語」を伝えることが、差別化の最大ポイント。素材（薪・水・木材）や地域性を物語化する。 - 人材育成とファン化戦略
“サウナの伝道師”となるスタッフ（アウフギーサー）の存在は集客力を左右する。
また、SNS運用・コミュニティ形成を通じてファン化を促すことが重要だ。
５．今後の展望と可能性
(1) ウェルネス産業との融合
世界的に健康意識が高まる中で、サウナはフィットネス・ヨガ・メディテーション・CBD製品などと親和性が高い。
「整う」概念がグローバルで共通言語化すれば、日本式サウナも輸出ビジネスとして成長が期待できる。
(2) 企業・オフィス導入の増加
福利厚生やメンタルヘルス対策の一環として、企業がオフィス内や社員寮にサウナを設置する事例も増加中。
サウナは生産性向上・離職防止・健康経営のツールとして注目されている。
(3) 地域創生・観光資源化
地方では「地域材を使ったサウナ」「川・湖畔サウナ」「酒蔵サウナ」など、地元資源を活かした事例が続々登場している。
観光庁も「サウナツーリズム」を支援しており、地域経済にとっても新たな柱となりつつある。
(4) AI・IoTによる進化
IoTサウナストーブによる温度制御、スマートバンドでの体調管理、予約アプリ・サブスクモデルなど、デジタル技術との融合も進む。
“健康データ連携型ウェルネスサウナ”が次世代モデルとして注目されている。
まとめ
サウナ事業は、単なる「お風呂ビジネス」ではなく、人々の心身を整える体験産業である。
少子高齢化・ストレス社会・観光回復という時代背景の中で、サウナは“癒し”と“再生”の象徴として確実に成長を続けている。
成功のポイントは、
- 誰に・どんな「整い体験」を提供するのか明確にすること
- サウナ単体ではなく、飲食・宿泊・地域体験と一体化させること
- 感覚的価値とストーリー性でファンを生むこと
つまり、これからのサウナ事業は「熱と水の空間」から、「心と身体を再生するブランド体験」へと進化していく。
そこには、新しい“癒しの経済圏”が確実に広がっている。
