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japan-eat’s blog

食に関する事や飲食店の運営に関する内容を記載してます。

DEAN & DELUCAは1977年、ニューヨーク・ソーホーでGiorgio DeLuca(ジョルジオ・デルーカ)とJoel B. Dean(ジョエル・ディーン)によって創業

創業当初から「見せる食品店/食の文化を届ける場」として、輸入食材・チーズ・調味料やデリをセレクトして並べる“食の百貨店”的な位置づけを作り、ニューヨークのグルメ層や文化的消費者に支持されました。店舗デザインや陳列の美しさもブランドの重要要素です。

その後1980〜2000年代にかけて、旗艦店の拡張、海外ライセンス展開(特にアジア市場)などで規模拡大を図ります。ブランドは「プレミアムな日常(=ちょっと贅沢な食卓)」を日常消費に取り込む提案で成功しました。

 

日本での展開と“成功の奇妙さ”

DEAN & DELUCAは日本市場に早期に進出(2000年代)し、伊藤忠などのパートナーによるライセンス展開で多店舗化しました。日本では銀座・丸の内・代官山・中目黒など、立地とインテリアの“映える”要素が相性良く、カフェ兼食材店として都市部の富裕層・感度の高い若年層に広まりました。日本のライセンス事業者はブランド管理や商品調達で工夫し、米本国の経営問題とは独立して強い収益性を保つケースも多く見られます。

※興味深い点として、米国本体が苦境に陥っても、日本のフランチャイズ/ライセンス運営は健在に見える(少なくとも2019年当時は)という“分離した成功”の事例になっています。

 

ブランドのポジショニング — なぜ人々は惹かれるのか

  1. キュレーション力(品揃えの差別化): 世界中から“ちょっと特別”な食材を選んでくる目利き力。一般スーパーでは見ない調味料・チーズ・輸入食材・焼き菓子などが並ぶことで「見て回る楽しさ」を提供します。
  2. デザイン性と“写真映え”: 店舗内装・パッケージ・陳列が洗練されており、SNS時代にマッチする“映える”ビジュアルを持っています。これは購買前の探索行動を促し、ブランド体験を拡張します。
  3. ライフスタイル提案: 単なる食材販売ではなく「ホームパーティー」「ギフト」「朝食利用」など生活シーンごとの提案が明確で、消費の理由(誰かに贈る、自分のご褒美など)を作れます。
  4. プレミアム・プレイス性: 都市の商業エリアや文化的ハブに出店することで、来店のステータス性を作り出しています(=“行くだけで嬉しい”空間)。

これらが複合して「デイリーに使えるけど特別感のあるブランド」として消費者の支持を得ているのです。

 

事業モデルの変化と経営課題

ブランドの人気とは別に、ここ20年で経営面には複数の問題が露呈しました。

  • 多国展開のライセンス依存:海外展開はライセンスモデルが中心で、現地事業者の運営品質に依存する構造。成果は地域差が大きい。
  • 過剰拡張と資本構造の負荷:世界的な出店と運営資金の調達で負債が積み上がったこと、所有権の入れ替わりが多かったことなどでガバナンスが複雑化しました。これが経営危機の一因に。
  • 2019〜2020年の縮小と破綻手続き:米国本体は2019年以降多くの直営店を閉鎖し、2020年にはチャプター11(米国の会社更生)を申請。2021年に再建計画を通じて再編が行われましたが、米国での直営プレゼンスは大きく後退しました。

 

再構築・リブランディングの動き(近年の取り組み)

  • コンセプトの再設計:従来の大型“食の百貨”から、より洗練された“カフェ+厳選プロダクト”へと軸足を移す試み(店舗フォーマットの多様化、シェフ主導のファストカジュアルなど)。Architectural Digest等で紹介された「Stage」など、新しい体験型店舗の提案もその一つです。
  • ローカルパートナー重視:各国のライセンシーやパートナーに運営を任せる形で、地域に合った品揃えやサービスを打ち出す戦略が続いています(日本の成功が好例)。
  • デジタル/ギフト需要の活用:eコマースやギフト需要(ホリデーギフト/法人ギフトなど)を伸ばす取り組みも増えています。

 

消費トレンドと相性(人気が続く理由)

  • 体験消費・パーソナルギフト化:ものより経験・質を重視する消費傾向はDEAN & DELUCAの“選ぶ楽しさ”と親和性が高い。
  • 都市部の単身・小世帯増加:少量で高品質な食材を求める層のニーズに合致。
  • SNS時代の視覚的訴求:パッケージと陳列がそのままマーケティングになるため、自然に発信されやすい。

 

課題と今後の注目点

  1. ブランド一貫性の維持:多拠点・多オーナー体制で「DEAN & DELUCAらしさ」をどう守るか。
  2. 価格感と訴求のバランス:プレミアム価格が常態化すると日常利用が遠のくため、エントリー商品と高付加価値商品の棲み分けが鍵。
  3. 店舗体験の最適化:大規模旗艦と小型カフェなどフォーマットの最適配置。Stageのような体験型店舗は試金石。
  4. サステナビリティと透明性:食の安全・調達の可視化は、プレミアム層の信頼獲得に直結する。

 

まとめ

DEAN & DELUCAは「食を文化として提示する」という明快なブランドアイデンティティと、都市生活者の“ちょっとした非日常”を提供する店舗体験で広く受け入れられました。一方で、拡張と資本関係の複雑化が経営リスクを高め、米国本体は再編を余儀なくされています。

しかし地域ごとのライセンス展開(特に日本)や、新たな店舗フォーマット、ギフト/デジタル戦略などにより「ブランドを活かす道」は残っており、今後は“規模”よりも“体験と選択(curation)”の質をどう高めるかが成功の分岐点になるでしょう。

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