飲食店の閉店は、単なる一店舗の消失にとどまらず、ブランド全体や業態そのものの売上減少に直結することがある。日本では人口減少・人手不足・原材料費高騰・円安・生活者のライフスタイル変化といった要因が重なり、2023〜2025年にかけて外食業界の淘汰が加速している。特に「閉店が続くと売上全体が縮小してしまう業態」が顕著になってきた。以下、その特徴と理由を業態ごとに整理していく。

- 1. ファミリーレストラン業態
- 2. 居酒屋チェーン(大箱型)
- 3. 焼肉チェーン(特に食べ放題モデル)
- 4. ラーメン・定食チェーン(低価格帯)
- 5. カフェチェーン(地方・郊外型)
- 6. フードコート・モール内飲食
- 7. 地域別に見た「閉店=売上減少」が強い場所
- 8. 閉店による「売上低下スパイラル」の構造
- 9. 生き残りのための方向性
- まとめ
1. ファミリーレストラン業態

(1) 閉店が進む背景
ファミレスは1970年代以降、日本の郊外型外食の象徴として成長した。しかし現在は
- 郊外人口減少と少子化
- 若者のファストフード・カフェ志向
- シニア層の健康志向
- 原材料費・人件費高騰
などにより採算が取れず、閉店が相次いでいる。
(2) 閉店が売上減少に直結する理由
ファミレスは「チェーン展開による利便性」がブランド力となっている。店舗網が狭まると、
- 「どこでも同じ味を楽しめる安心感」が失われる
- ドライブ中や出先での「選ばれる確率」が下がる
- CMや広告が届いても「近隣に店がない」ため来店が起きない
結果として、店舗数の減少はそのまま売上の縮小に直結しやすい。
特に郊外ロードサイド店舗の閉店は、地域ごとに顧客を丸ごと失うことを意味し、チェーン全体のブランド力低下を加速させる。
2. 居酒屋チェーン(大箱型)

(1) 閉店が進む背景
居酒屋はコロナ禍で最も打撃を受けた業態の一つ。
- 団体宴会需要が完全には戻らず
- 若者のアルコール離れ
- 終電前帰宅の定着
により、特に100席以上を抱える大箱店は採算が合わなくなっている。
(2) 閉店が売上減少を招く理由
居酒屋チェーンの強みは「多店舗ネットワークと認知度」である。だが閉店が続くと、
- 都市部の主要駅前から看板が消えることで「ブランドの存在感」が薄れる
- 送別会や同窓会の幹事が「近くにあるチェーン」を探せなくなる
- 大箱を持つからこそ受けられた団体予約が消失
→結果として、売上構造を支えてきた「団体需要」がごっそり失われる。
閉店が続くことで「勢いのないチェーン」というイメージも広がり、残存店舗にも影響を及ぼすのが特徴だ。
3. 焼肉チェーン(特に食べ放題モデル)

(1) 閉店が進む背景
- 牛肉価格の高騰(円安+海外需要増)
- 食べ放題モデルの低利益率
- 人材不足とオペレーション負担
が重なり、採算の悪い店舗は整理されている。
(2) 閉店が売上減少を招く理由
焼肉は「家族・グループで行く外食の定番」であり、立地の利便性が来店動機に直結する業態。
- 店舗数が減ると「選択肢から外されやすい」
- 食べ放題モデルは「近いから行く」という需要が強く、遠くなると来店自体がなくなる
- ブランドの大量閉鎖は「肉の質が落ちているのでは?」と不安を生む
つまり、閉店の連鎖は単なる拠点削減ではなく「業態そのものの信頼低下」に結びつく。
4. ラーメン・定食チェーン(低価格帯)

(1) 背景
ラーメンや定食は国民食だが、原価高騰で「ワンコイン・600円台」の価格帯は維持困難。値上げすれば顧客が離れ、値上げできなければ赤字となる。地方ロードサイドや駅ナカの低価格モデルが淘汰されつつある。
(2) 売上減少に直結する理由
低価格業態は「店舗数=売上の規模」であり、閉店がそのまま市場占有率の低下につながる。
- サラリーマンや学生にとって「手軽に立ち寄れる場所」が減る
- 近隣競合(牛丼・コンビニ弁当)に顧客が流れる
- ブランドが「勢いを失った」と見られると他店への移行が加速
つまり閉店は顧客離脱のスピードを早め、売上全体を下げる結果になる。
5. カフェチェーン(地方・郊外型)

(1) 背景
都市部の大手カフェは好調だが、地方や郊外では以下の要因で閉店が進む。
- 人口減少で利用者数が少ない
- 駐車場コストや人件費負担が重い
- 個人経営カフェとの競合
(2) 売上減少との関係
カフェは「日常使い」が中心であり、近隣から姿を消すと利用頻度が大幅に減る。
またカフェチェーンは「どこでもある安心感」に価値があるため、店舗数が減るとブランド全体の売上が縮小してしまう。
6. フードコート・モール内飲食

(1) 背景
ショッピングモール自体の集客力が低下しており、特に地方の中規模モールでは空きテナントが増加している。
(2) 売上減少に直結する理由
フードコート内の飲食は「ついで需要」が大きく、モール自体が衰退すると自動的に飲食売上も下がる。閉店が相次ぐと「このモールは活気がない」という印象が広がり、残存店の売上も落ち込む。
7. 地域別に見た「閉店=売上減少」が強い場所

- 郊外ロードサイド店舗
→ 車社会で「近場の選択肢」が減ると、来店そのものが消える。 - 都市繁華街の大箱店
→ 旗艦店閉鎖はブランド全体の存在感を奪い、他エリアの売上にも波及。 - 観光地
→ 観光動線から外れると一気に来客が減り、他地域店舗にもマイナスイメージが広がる。
8. 閉店による「売上低下スパイラル」の構造

飲食店において閉店は単なる撤退ではなく、以下の負の連鎖を生みやすい。
- 店舗数減少
↓ - 利便性低下・顧客離脱
↓ - 売上全体の縮小
↓ - 広告宣伝効果が弱まる
↓ - ブランド力低下
↓ - さらに閉店が進む
このスパイラルに入ると、資本力の弱い中堅チェーンほど急速に衰退していく。
9. 生き残りのための方向性

閉店が続けば売上減少が避けられない業態こそ、早急な戦略転換が必要である。
- 小型・省人化モデルへのシフト
→ 大箱から少人数対応へ。セルフオーダーや配膳ロボ導入で人件費削減。 - 地域密着戦略
→ 「近所の常連が通う」店づくりで来店頻度を確保。 - 差別化・高付加価値化
→ 食材やサービスで独自性を出し、値上げを正当化。 - 複線化収益
→ 店内飲食に加え、テイクアウト・デリバリー・ECを併用。 - 旗艦店の死守
→ 繁華街や象徴的立地の店舗はブランド維持のため絶対に守る。
まとめ

閉店が続くことで売上が下がりやすい業態は、ファミレス・居酒屋チェーン・焼肉食べ放題・低価格ラーメン定食チェーン・カフェ(郊外型)・モール内飲食である。これらは「店舗数=利便性=売上」という構造を持つため、閉店がそのままブランド全体の縮小に直結する。
2025年以降、飲食業界は淘汰と再編が一層進むだろう。しかし「閉店=衰退」ではなく、戦略的に整理して効率化・高付加価値化を図れる企業は、新しい成長の波に乗る可能性もある。大切なのは「縮小ではなく転換」と捉えることだ。
