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japan-eat’s blog

食に関する事や飲食店の運営に関する内容を記載してます。

クラフトビールは本当に流行っているのか?

クラフトビールとは、一般的に「小規模で独立した醸造所が、伝統や革新を重視しながら丁寧に造るビール」と定義されます。大手ビールメーカーによる大量生産のビールに対して、地域性や独自性、風味の多様性などを重視したビールがクラフトビールと呼ばれています。特にアメリカでは、1990年代からクラフトビール文化が根付き始め、日本でも2000年代後半から注目されるようになりました。

 

1. 国内市場の動向と統計

クラフトビールの流行を定量的に把握するには、消費量や醸造所の数、売上規模といった指標が有効です。

醸造所の増加

日本におけるクラフトビール醸造所(小規模ブルワリー)の数は、近年増加傾向にあります。2010年頃には200〜300程度だったブルワリーの数は、2020年代に入ると500を超え、2024年末には600以上に達したと見られています。都心部だけでなく、地方都市や観光地でも地ビールを展開する醸造所が増加し、地域振興とも連動しています。

売上規模と市場シェア

ビール市場全体に占めるクラフトビールの割合は依然として小さく、2024年時点で5〜6%程度とされています。ただし、ビール類全体の消費が右肩下がりの中、クラフトビールは唯一微増を続けており、「成長市場」としての注目度は高いです。

大手メーカーの参入

アサヒ、サントリー、キリン、サッポロといった大手ビール会社も、クラフトビールブランドの開発やクラフトブルワリーの買収に力を入れています。
例えば、キリンの「SPRING VALLEY」やアサヒの「TOKYO隅田川ブルーイング」は、クラフトビールのような個性を打ち出しつつ、大手の流通網で展開されており、一般消費者にも広がりやすくなっています。

 

2. 消費者の意識と嗜好の変化

多様化する消費者ニーズ

若年層やミレニアル世代・Z世代の一部において、「大量生産品よりも個性や物語性を重視する」傾向が強まっています。この世代は食や飲み物に対しても「背景」や「哲学」を求める傾向があり、クラフトビールのようなローカルでユニークな商品との相性が良いとされます。

飲酒スタイルの変化

ビールの「とりあえず一杯」という文化は徐々に薄れ、ゆったりと楽しむ嗜好品としての飲み方に変わってきています。クラフトビールはフルーティーで香り高いIPAや、黒くて濃厚なスタウト、スパイシーなセゾンなど種類が豊富で、ワインやコーヒーのように「選ぶ楽しさ」や「味わう楽しさ」があります。

インバウンドと観光需要

日本を訪れる外国人観光客が地方のクラフトビールに注目し、SNSなどで拡散する事例も増えています。観光地では地ビールが土産や体験の一部として定着し、地域ブランドの形成に寄与しています。

 

3. 流行の「熱狂」と「定着」の違い

クラフトビールは確かにメディアやSNSで取り上げられることが多く、専門イベントやフェスも全国各地で開催されています。しかし「流行っている」といっても、一時のブームではなく、次第に文化として定着しつつあるという見方が強いです。

  • 熱狂期(2015〜2020年頃):都市部を中心にクラフトビール専門店が急増。SNS映えや海外トレンドの影響も大きかった。
  • 安定期(2020年代中盤〜):淘汰が進み、品質重視・ストーリー重視のブルワリーが生き残る。日常消費への浸透が進行中。

このように、「派手な流行」というよりは「静かな定着」が今のクラフトビールの特徴だと言えるでしょう。

 

4. 課題と限界

クラフトビールが本格的に定着するには、まだいくつかの課題があります。

価格の高さ

クラフトビールは原材料や製造工程、流通コストの都合上、一般的なビールに比べて高価です。350ml缶で500〜800円という商品も珍しくありません。これが日常的な選択肢になりにくい要因の一つです。

流通と保存の難しさ

生産量が少ないクラフトビールは、品質管理や流通に手間がかかります。温度管理が必要な商品も多く、スーパーなどでの取り扱いに限界があるため、普及スピードにブレーキがかかっています。

ビール離れの中での戦い

そもそもビール全体の消費量は減少しています。若年層を中心に「お酒を飲まない」層が増えており、その中でクラフトビールというジャンルがどれほど生き残れるかは、業界全体の工夫にかかっています。

 

5. 今後の展望

クラフトビールの未来は「量」ではなく「質」によって測られる時代になりつつあります。今後は以下のような動きが予想されます。

地域共創のブランド化

クラフトビールはその土地の特産品(柚子、米、ハーブなど)と掛け合わせることで、ユニークなローカルブランドを形成できます。地域おこし協力隊や自治体と連携したブルワリーが増加しており、「その土地に行かないと飲めない」特別感が観光と結びついていくでしょう。

ノンアル・低アルの展開

健康志向や飲酒規制の強化もあり、クラフトビールのジャンル内でも低アルコールやノンアルコールクラフトの開発が進んでいます。飲めない人にも「クラフトの味わい」を楽しんでもらうという方向性です。

フードペアリング文化の深化

ワインのように、料理とクラフトビールのマリアージュ(ペアリング)を楽しむ文化も進んでいます。チーズや肉料理はもちろん、和食やスイーツとの相性を提案するブルワリーも現れており、食文化との融合が期待されています。

 

クラフトビールは「静かに流行し、文化として根付いている」

「クラフトビールは本当に流行っているのか?」という問いに対する答えは、**「熱狂的な一過性のブームではないが、確実に文化として定着し、静かに拡がっている」**というものです。

消費者の嗜好の多様化、地元志向、食体験の深化という大きな時代の潮流とともに、クラフトビールはその位置づけを確立しつつあります。決して「爆発的に売れている」わけではないものの、「質」にこだわる人々に選ばれる嗜好品として、今後も着実に成長していくジャンルであることは間違いありません。

 

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