熱中症とは、高温多湿な環境に長時間さらされることによって、体の水分や塩分(ナトリウム)などのバランスが崩れ、体温の調節機能がうまく働かなくなることで起こる体の不調の総称です。重症化すると、意識障害や多臓器不全など命に関わる危険な状態に陥ることもあり、特に夏季には注意が必要です。
熱中症の原因
人間の体温はおおよそ36〜37℃に保たれていますが、外気温が高くなり、湿度も高くなると、汗によって体温を下げる「発汗作用」がうまく働かなくなります。特に湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体温が下がらずに体内に熱がこもりやすくなります。
また、以下のような要因が重なると熱中症が起こりやすくなります:
- 気温が高い・湿度が高い環境に長時間いる
- 水分補給を怠る
- 体調が悪い、睡眠不足、疲労がたまっている
- 急に暑くなった日(体が暑さに慣れていない)
- 高齢者や子どもなど、体温調整機能が弱い人
熱中症の症状
熱中症は、その重症度によって以下のように段階が分かれています。
◉ 軽度(I度)
- めまい、立ちくらみ
- 筋肉のけいれん(こむら返り)
- 大量の発汗
※この段階ではまだ意識ははっきりしています。
◉ 中等度(II度)
- 頭痛、吐き気、嘔吐
- 倦怠感、虚脱感
- 意識がぼんやりする
※病院での治療が必要とされるレベルです。
◉ 重度(III度)
- 意識がない、反応がにぶい
- けいれん発作
- 体温が40℃を超える
- 呼吸や脈が異常に早い
※命に関わるため、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
熱中症の予防法
熱中症を防ぐには、何よりも「暑さ対策」と「水分補給」が大切です。以下の点を意識しましょう。
1. こまめに水分・塩分を補給する
のどが渇く前に、定期的に水分を摂ることが大切です。大量の汗をかいた場合には、水だけでなくスポーツドリンクや経口補水液などで塩分(ナトリウム)も補給しましょう。
2. 暑い時間帯の外出を避ける
特に日中の11時〜15時の間は気温が高く、熱中症のリスクが高まります。必要があれば朝や夕方の涼しい時間に移動するようにします。
3. 服装に工夫をする
通気性がよく、汗を吸収しやすい素材の服を選びましょう。帽子や日傘も効果的です。
4. エアコンや扇風機を使う
室内でも気温や湿度が高いと熱中症になるため、無理せず冷房を使用しましょう。特に高齢者は我慢しがちなので注意が必要です。
5. 暑さに慣れる(暑熱順化)
急に暑くなる初夏や梅雨明けなどの時期は、体が暑さに慣れておらず熱中症リスクが高まります。軽い運動や湯船につかることで少しずつ汗をかく習慣をつけ、体を慣らしていきましょう。
熱中症になったときの対処法
症状に気づいたら、すぐに以下のような処置をとりましょう。
1. 涼しい場所に移動
まずは風通しの良い日陰や、冷房の効いた室内に移動させます。
2. 衣服を緩める・冷やす
衣服を緩め、首・脇・足の付け根などの太い血管が通っている部分を冷やすことで、体温を下げることができます。
3. 水分・塩分を補給する
意識がはっきりしていれば、冷たい水やスポーツドリンクなどをゆっくり飲ませます。嘔吐がある、または意識がもうろうとしている場合は、無理に飲ませずすぐ救急車を呼びます。
4. 意識がない場合はすぐ119番
自力で水分が摂れない、けいれんがある、反応がにぶいなどの場合は重症の可能性があるため、速やかに救急搬送を要請します。
高齢者と子どもの熱中症に特に注意
● 高齢者の場合
高齢になると体温の調節機能や喉の渇きを感じる機能が低下しているため、知らず知らずのうちに脱水になりやすく、室内での熱中症が多く報告されています。エアコンの使用を我慢せず、定期的な水分補給を意識することが重要です。
● 子どもの場合
子どもは体温調整機能が未熟であり、大人よりも地面に近い位置にいるため、照り返しなどで気温の影響を強く受けます。水分補給の声かけや、遊ぶ場所・時間帯の配慮が必要です。
まとめ
熱中症は、誰にでも起こりうる危険な症状ですが、日頃の予防と注意で十分に防ぐことができます。特に夏場は、「こまめな水分補給」「無理をしない」「涼しい環境づくり」を心がけることが大切です。
また、家族や職場、地域で声をかけ合いながら、熱中症への意識を高め、互いに見守ることも重要です。特に高齢者や子ども、持病のある方が周囲にいる場合は、日常的な気配りが命を守ることにもつながります。
猛暑が続く近年、熱中症は決して他人事ではありません。「体調が少しおかしい」と思ったらすぐに対処する勇気を持ち、自分と大切な人たちの健康を守っていきましょう。