焼肉業界は、コスト増と消費者行動の変化という「攻めと守りの板挟み」にある状況です。中小規模店は特に、「地域密着の価値」や「体験価値」での差別化が急務となっています。
そこで今回は少し頭を使って考えてみた。
- 焼肉業界が苦戦している主な理由
- 焼肉チェーン店が苦戦している理由
- 一方で、勝ち残っているチェーンの特徴
- 焼肉店の宅配・テイクアウトが伸び悩む主な理由
- それでも「売れる宅配焼肉」の工夫と成功例
- 焼肉宅配の可能性を活かすには?
焼肉業界が苦戦している主な理由
1. 物価高騰と原材料費の高止まり
- 牛肉・豚肉などの仕入価格が上昇(特に和牛)
- 輸入コストの増加(円安や国際情勢による影響)
- 光熱費・炭代・タレや野菜など付帯食材の価格も上昇
なぜ牛肉価格は高騰したのか!
焼肉店は原価率が40%程度と、居酒屋などほかの飲食店と比べて割高なのが特徴。
輸入牛肉の高騰は痛手でした。2024年度の輸入牛肉の人気部位は2020年度比で1.8倍程度にまで上がっています。人気のタンは一時2倍近く上昇するなど、焼肉店の頭を悩ませてきました。牛はもともと鶏や豚などと比べて育成期間が長く、価格は高くなりがちでした。
そこに、世界最大の生産地の一つであるアメリカで干ばつが頻発。牧草が慢性的に不足し、畜産農家が生産頭数を減らしたのです。そして日本ではインバウンドも相まって、牛肉の需要が急増しました。
特に希少部位であるタンは日本だけでなく中国でも人気となり、取り合いとも言える状況になりました。さらに円安による購買力の低下も価格高騰に拍車をかける結果となったのです。
2. 人手不足・人件費高騰
- 焼肉店は専門性のあるオペレーションが多く、教育コストも高い
- 深夜営業を行う店が多く、働き手の確保が難しい
- 特に地方や中小規模店では、人材流出が顕著
そもそも今まで通りに募集をかけても応募すら来ない。そこで企業は苦肉の策で時給を上げることとなる。しかしその時給に合ったスキルを持たないスタッフ!それでもいないよりはマシ。っということで採用するしかない。社員も同様で、スキルがなくても給料を上げ、地位を与える。ある意味いいことなのかもしれないが、そこにスキルアップは存在しないのである。
(そもそもスキルを持たないから教える人がいない。)
3. 消費者の外食離れ・節約志向
- 家計防衛意識が強まり「焼肉は贅沢」というイメージが再燃
- グループ客・家族連れの外食頻度が低下
- 若年層は「価格が高い・煙やにおいが嫌」という声も
日々の買い物が高値になり、どこを削るかというと外食が真っ先に思い浮かぶところ。外食で3,000円使用した際その3,000円で食材が山のように買え、数日分となったら、迷うことはないだろう。
4. 競争激化・差別化の難しさ
- 焼肉チェーン・無人焼肉店・高級店など業態が細分化
- 価格競争では中小店が不利
- 「どの店も似ている」と感じられやすく、リピートに結びつかない
差別化。これはどの企業も目指しているところではあるが、そもそも考える頭がない。そこで誰でも考えられることとしたら『価格』なのである。その結果『価格競争』が始まり、その『価格競争』に負ければ廃業となるところもある。現にとあるチェーン店のピザ屋は50店舗ほど縮小している。価格を下げれば粗利も下がる。やってはいけないことをどんどんやっている飲食業界である。クーポンも同じ!
5. 衛生・安全面への不安
- 過去の食中毒事件やBSE問題の記憶が根強い
- 焼き加減の個人差があり、クレームや不安に繋がりやすい
本部は『衛生管理』と口を酸っぱくなるほど行っているが、現場ではそんな余裕すらない。なぜなら、人がいないからである。そこまで真剣に考えていないのである。
6. DX・SNS対応の遅れ
- デジタルマーケティングが不得手な個人店が多い
- 予約・注文の自動化が進まず、利便性で後れを取る
- SNSで映える工夫が少なく、若年層の集客に苦戦
どこも同じ内容のSNSすでに若者は飽きてきている傾向がある。ってことはターゲットを変えるべきなのである。今の若者はニュース、テレビをあまりみない傾向がある。であればもっとSNSに力を入れるのも面白いかもしれにが未来が怖い気もする。
焼肉チェーン店が苦戦している理由
1. 大量仕入れのメリットが薄れた
- 円安や海外需給のひっ迫で、大量仕入れによる価格優位性が低下
- 安さだけで勝負するのが難しくなっている
2. 人件費と人材教育コストの爆増
- 店舗数が多く、スタッフの採用・教育・維持コストが高騰
- 人手不足で「サービス品質のばらつき」が増え、ブランド力が低下
3. 差別化の難しさ(均一化の弊害)
- チェーンは基本的に「同じ味・同じ空間」を売りにするため、個性や地域性での勝負がしづらい
- 特に若者層は「映え」や「体験」を重視し、均質な焼肉店は飽きられやすい
4. 業態転換の遅れ
- 昨今のトレンドである「無人焼肉」「一人焼肉」などに柔軟に対応できていない企業も多い
- 大規模な業態変更には時間とコストがかかるため後手に回りやすい
5. インフレ下の価格改定に苦しむ
- 値上げをすれば客離れ、据え置けば利益が減るという「ジレンマ」
- 定食系・食べ放題系は特に粗利率が低下しており、利益構造が崩れやすい
一方で、勝ち残っているチェーンの特徴
- 低価格×回転率重視型(例:焼肉ライク)
- 一人焼肉・セルフオペレーション化で人件費削減
- デジタル対応(モバイルオーダー・アプリ予約)を積極展開
- コンセプト特化型ブランド(熟成肉、黒毛和牛専門など)への転換
焼肉店の宅配・テイクアウトが伸び悩む主な理由
焼肉店における「宅配・テイクアウト」は、コロナ禍を契機に一時的に注目されましたが、焼肉業態特有のハードルが多く、継続的な成功には工夫が必要です。
1. 焼肉の「体験価値」が失われる
- 焼肉は「自分で焼く楽しさ」「仲間と囲む一体感」が主な魅力
- 調理済みで届くと、“焼肉を食べた感”が薄くなる
2. 品質保持が難しい
- 焼きたての美味しさが命 → 時間が経つと肉が硬くなる・脂が冷える
- タレ・におい・煙なども自宅では再現しづらい
3. におい・片付けのハードル(自宅調理型)
- ホットプレートで焼くセットを宅配しても、においや煙を気にする人が多い
- 炭火や無煙ロースターが使えないため、満足度が下がる
それでも「売れる宅配焼肉」の工夫と成功例
1. 「焼かない焼肉弁当」型で勝負
- 例:厚切り牛タン弁当、黒毛和牛ステーキ弁当など
- 焼肉屋の強み(肉の質、タレ、炊き立てご飯)を活かせる
- 高単価(1,500円〜2,000円)でも満足感を演出しやすい
2. 「自宅焼肉セット」型(ミールキット)
- 下味付き肉+カット野菜+タレなどをセット販売
- 家族やパーティー需要にマッチ(週末・イベント向き)
- 例:「週末焼肉パーティーセット」「家族で和牛祭り」など
3. デリバリーアプリ連携+ブランド特化
- ウーバーイーツ等と連携し、専用メニュー開発(例:焼肉丼・カルビ重)
- 「店舗の味を家庭でも」を訴求し、テイクアウト限定ブランドを立ち上げるケースも増加
焼肉宅配の可能性を活かすには?
- 「焼肉=焼く体験」ではなく、「焼肉=肉とタレの贅沢感」を打ち出す
- 弁当型/セット型/ハレの日需要に特化
- パッケージング・温度保持・盛り付けの工夫でブランド価値を担保