「アレルギーとは何か?」をしっかり理解することは、飲食店の対応にも、日常の安全にも直結します。
- 食物アレルギーとは?
- 知識と教育の不足
- 人手不足・忙しさ
- コストの問題
- 法的な責任への不安
- ニーズの把握不足
- じゃあ、どうすれば変わるのか?
- アレルギー対応の難しさ:5つの本質
- じゃあどうすれば?
- なぜ微量でも危ないのか?
- よくある誤解も整理
食物アレルギーとは?
その中でも特に「食べ物が原因になる」アレルギー。子ども〜大人まで広く見られます。
主な症状
皮膚:かゆみ、じんましん、湿疹
呼吸器:咳、ぜんそく、息苦しさ
消化器:嘔吐、下痢、腹痛
全身:血圧低下、意識障害(=アナフィラキシーショック)
命に関わる重篤な症状になることもあるので、甘く見てはいけません。
知識と教育の不足
・「アレルギー=卵・乳・小麦だけ」くらいの理解しかない場合も。
・交差接触(コンタミネーション)の概念が知られていない。
・専門的な知識がないまま、対応してトラブルになるのを恐れて「対応不可」としてしまうケースも多い。
人手不足・忙しさ
・小規模店舗では厨房に余裕がなく、除去・別調理の手間が対応できない。
・混雑時に従業員が原材料やレシピを細かく把握できていない。
・「アレルギー表示に責任を持つのが怖い」という心理もある。
コストの問題
・アレルギー専用の調理器具や調理スペースの確保にはコストがかかる。
・別調理や除去に対応するとオペレーションが複雑になり、ミスのリスクが上がる。
法的な責任への不安
・「対応して食中毒やアナフィラキシーが出たら責任問題になる」と考えて「やらないほうが安全」と判断する店も。
・特に日本ではアレルギー対応は“努力義務”扱いが多く、義務ではないため、対応しない選択肢が存在してしまう。
ニーズの把握不足
・アレルギー客は「食べられないから外食しない」と諦めがちなので、表面的には需要が少なく見える。
・本当は「行ける店があれば行きたい人」は多いのに、店舗側がその声を拾えていない。
じゃあ、どうすれば変わるのか?
・まずは基本的な食物アレルギーの教育:どの食材が重篤で、何が危険なのかの理解。
・メニュー表記の工夫:「原材料一覧」「○○を含む可能性があります」などの表記を丁寧に。
・できる範囲での宣言:「完全除去ではないが、できる限り対応します」「コンタミあり」といった正直なスタンスの提示。
・スタッフへの研修:少人数でも、対応手順のマニュアルがあるだけで事故は減る。
実際、アレルギーに真摯に向き合っている店は信頼を得やすいです。そして、それがリピーターや口コミにもつながっていく。
逆にいうと、アレルギー対応を軽視していると、「食の安心安全」を求めるお客さんにとっては選択肢から外される時代になってきています。
アレルギー対応の難しさ:5つの本質
1. 交差接触(コンタミ)を防ぐ難しさ
・同じまな板・包丁・フライパンを使うと、微量のアレルゲンが残ってしまう可能性。
・換気扇・油・トングなど「目に見えないところ」も汚染源になりうる。
・完全に分けるには、別の器具・ゾーン・動線が必要=小規模店ではほぼ無理。
例:「卵アレルギー対応のパンケーキ」を鉄板で焼いたが、直前に目玉焼きを焼いていた→事故リスク。
2. 原材料の情報が複雑すぎる
・業務用の加工食材(ソース、調味料など)は、成分表に全部書かれていないこともある。
・仕入れ先が変わると、知らないうちにアレルゲンが変わっているケースも。
・店員がそれを「毎回確認して正確に説明」するのは難易度が高い。
例:ある日のドレッシングにだけ「乳化剤(乳由来)」が入っていた、など。
3. スタッフ教育と伝達が難しい
・常連スタッフは理解していても、新人・バイト・繁忙時は情報が伝わらない。
・「このメニューは〇〇が入ってます」と言っても、調理担当が聞いてなかったら意味がない。
・伝言ミス1つで命に関わる可能性がある、というプレッシャー。
例:「乳アレルギー」と伝えたが、調理側が「卵」と勘違いして対応した。
4. ルールを“形だけ”にしがち
・マニュアルがあっても、実際はオペレーションに組み込まれていない。
・「アレルギー対応は厨房に伝えてますか?」→「はい(実は伝えてない)」
・安易な「できるだけ対応します」は逆に危険。
例:現場では“やったふり”になり、管理者が事故を把握していないことも。
5.「対応する」と言う責任の重さ
・万が一、事故が起きたら**「店の対応に問題があった」とされやすい**。
・だから怖くて、「できません」と断る店もある。
・本来「不完全な対応」はしない方がいいが、客の期待と板挟みになりやすい。
例:「除去対応します」と言ったのに、微量混入で発症 → 法的リスクに。
じゃあどうすれば?
・「できること/できないこと」を明確にする宣言
→ たとえば「〇〇は除去できますが、調理器具は共通です」など。
・1人だけでも“アレルギー理解者”を店舗に育てる
→ 専任でなくても、リーダー的存在がいるだけで伝達精度が大きく変わる。
・仕入れ・調理・接客フローに“点検ポイント”を設ける
→ 「盛り付け直前に再確認」「仕入れ変更時に表示チェック」など。
現場に寄り添う対応って、やっぱり“できないことを正直に伝える勇気”も大事です。
無理に「全部対応する」より、「安心して断れる・相談できる雰囲気」づくりが信頼への近道。
なぜ微量でも危ないのか?
アレルギーは「体質によってはごく微量でも反応する」ことがあります。
- 同じフライヤーで揚げただけでアウト(そば・小麦など)
- 同じトングやまな板での調理でも危険(乳・卵など)
➡だから「コンタミ(交差接触)」が命取りになるんです。
よくある誤解も整理
誤解 | 実際は… |
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「ちょっとなら平気でしょ」 | 少量でも重篤な症状になる人もいる |
「加熱すれば大丈夫」 | アレルゲンは加熱しても無害にはならないことが多い |
「症状が軽いなら出しても大丈夫」 | 繰り返すことで症状が悪化することも |