私たちは普段食事をする中で、いろいろな味を感じており、この感覚が「味覚」です。味覚は、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の5つの基本味で構成されています。
- 5つの基本味は
- 味覚はどうやって発達していくのか?
- 濃い味と味覚の関係
- 子どもの味覚の発達に大切なうま味
- 味覚の種類
- その他の味覚
- 風味
- 第6の味覚
- 甘味と健康の関係
- うま味と健康の関係
- 塩味と健康の関係
5つの基本味は
「体に必要なものを教えてくれる味」と「体に危険なものを教えてくれる味」に分けられます。「体に必要なものを教えてくれる味」は「甘味」「塩味」「うま味」で、人が本能的に好む味といわれています。一方「体に危険なものを教えてくれる味」は「酸味」と「苦味」で、これらは人が本能的に避ける味といわれています。
これら5つの基本味には、それぞれ役割もあります。
甘味:エネルギー源となる糖の存在を教える役割
塩味:ミネラルの存在を教える役割
うま味:たんぱく質の存在を教える役割
酸味:腐敗していることを教える役割
苦味:毒があるかもしれないと教える役割
味覚はどうやって発達していくのか?
生後5~6カ月になり離乳食が始まると
味覚の発達のピークは3~4歳と考えられており、10歳頃までの味の記憶がその後の味覚の基礎になるともいわれています。そのため、子どものうちにたくさんの味を経験し、味覚の幅を広げておくことが味覚の発達につながります。
濃い味と味覚の関係
小さい頃から日常的に濃い味付けのものに慣れてしまうと、食材本来の味や薄味の料理がおいしく感じられなくなり、濃い味のものばかりを好むようになってしまいます。
濃い味付けが当たり前になると、知らず知らずのうちに塩分や糖分を摂り過ぎてしまい、生活習慣病になるリスクも高まります。そうならないためにも、特に乳幼児期は薄味を心がけましょう。
子どもの味覚の発達に大切なうま味
味覚の発達には、食べ物を口に入れ「どんな味がするのか」「風味や後味はどうか」と感じ、考えることも大切です。そのためには、子ども自身が食材本来の味を感じ取れるようにすることが大事です。そこで重要なのが「うま味」。
うま味はそれだけでもおいしさを感じますが、他の食材のおいしさも引き立たせてくれます。うま味を上手に使い、食材本来の味に対する感受性を高め、子どもの味覚を育てていきましょう。
味覚の種類
以前は、基本的な味の種類は甘味・酸味・塩味・苦味の4種類であり、舌の上でそれぞれの味を感じる領域が分かれているといわれていました。しかし現在この考え方は否定されていて、舌の全体でいろいろな味を複合的に感じ取っています。
味覚の種類には基本五味と呼ばれる5つの味があります。
・甘味:主な呈味成分として、ショ糖、果糖、ブドウ糖などがあります。
・塩味:主な呈味成分として、食塩があります。
・酸味:主な呈味成分として、酢酸、クエン酸、乳酸などがあります。
・苦味:主な呈味成分としてカフェインがあります。
・うま味:主な呈味成分としてグルタミン酸(昆布)、イノシン酸(かつお節)、グアニル酸(キノコ類)などがあります。
うま味は4つの基本味では説明ができず、日本では1908年にうま味物質のグルタミン酸ナトリウム塩が発見されて以降うま味も基本味であるという認識がありましたが、欧米でうま味が認められたのはごく最近のことです。
現在は生理学的な実験で他の味とは独立した味覚であることが証明されており、英単語として「umami」が使用されています。
その他の味覚
基本五味以外に、化学的刺激や物理的刺激によって得られる味覚もあります。これらは基本味と合わせて総合的に、より複雑な味覚を形成します。しかし現在でも、全ての味覚について、神経に伝達されるまでのメカニズムが解明されているわけではありません。
・辛味:唐辛子に含まれるカプサイシン、黒コショウなどに含まれるピペリンなどは高温を痛みとして感じる受容体(TRPV1)を刺激することで、灼熱感を伴う辛味として感じられます。またワサビなどに含まれるアリルイソチオシアネートは冷刺激の受容体(TRPA1)を刺激することで、ツンとした辛味を感じます。この受容体(TRPV1、TRPA1)は、口腔内だけではなく、体、特に粘膜に存在するため、カプサイシンなどを体に塗りつけてもほぼ同じ感覚が発生します。そのためこれらは味蕾で感じる味とは感じ方が異なるため「痛覚刺激」であると説明されることがあります。
・渋味:お茶に含まれるタンニンや渋柿のシブオールなどが舌に吸着するような感覚で、口腔内が収れん作用をおこすことで渋味を感じます。
風味
味覚は単独の刺激だけではなく、嗅覚や視覚、それまでの食経験などによっても影響を受けるといわれます。例えば目隠しをして食べたり、鼻腔を塞いで匂いがわからないようにして食べたりすると、同じものでも異なる味を感じたり、実際に食べた食品とは違うものに感じることがあります。
また成分は同一の食品であっても、個人の特別な食経験によって異なる味に認識されることもあります。このような知覚心理学的な意味を含む味覚を「風味」と呼ぶことがあります。
第6の味覚
大学の研究で脂肪の味を感じる受容体があることがわかり、「脂肪味」が第6番目の味覚となる可能性が出てきました。この脂肪味の感じ方には個人差が大きく、脂肪味を感じにくい人は脂肪を摂り過ぎる危険があり、肥満やその他の病気につながるリスクが大きいと指摘されています。
脂肪味は油脂を継続して摂ることで鈍化すると考えられています。しかし味蕾は10日前後で入れ替わることから、10日間脂肪の少ない食事を心がけることで、脂肪味の感じ方が改善する可能性があります。
甘味と健康の関係
甘味は生きるために必要なエネルギー源を示す味として本能的に好まれると考えられます。甘味を感じると、β-エンドルフィンやセロトニンといったリラックス効果があるといわれる物質が分泌されます。甘いものを食べた人の脳波を測定すると、リラックスした状態であることが証明されています。
食べることでインスリンの刺激を受けて、脂肪細胞からレプチンというホルモンが分泌されます。レプチンには視床下部にある満腹中枢に作用して食欲を抑制する働きがあります。また交感神経を活性化して脂肪を燃やし、エネルギー消費を促す働きがあります。
しかしレプチン濃度が高くなりすぎると、甘味感受性が低下するといわれています。つまり、脂肪細胞が多いとレプチンが分泌過剰となり、甘味が感じにくくなる可能性があるということです。
うま味と健康の関係
食前にうま味成分のひとつであるグルタミン酸ナトリウムを添加したスープを飲むと、食欲が抑制されて食事量を減らすことができたという実験結果があるそうです。脳波を測定しながらビュッフェ形式の食事を摂る実験では、うま味に富むスープを摂取した後では、自己抑制に関連のある脳の領域に活性化がみられたといいます。
塩味と健康の関係
塩というと、高血圧などの生活習慣病の原因といわれ減塩が重要視されがちですが、人に体にとって必要不可欠なものでもあります。
塩は体内では血液や消化液、リンパ液などの中にイオンの状態で溶けていて、カリウムとのバランスを保って細胞内外の浸透圧を調整しています。また、脳が体の各器官に送る電気信号を伝えるのに、ナトリウムイオンは欠かせません。
熱中症は、急激に大量の汗をかいたときに水分と同時に体内の塩分が失われることでおこります。塩は、摂り過ぎると病気の原因となりますが、適量の塩は体にとって不可欠なものです。