EPAやDHAはともに、ヒトの体内ではほとんど作ることができない必須脂肪酸の一種で、魚の油に含まれ、イワシやサバなど青魚など脂の乗った魚に豊富に含まれています。よく似ているように見えるEPAとDHAにはどのような違いがあるのでしょうか?
DHA・EPAとは?
DHAとは「ドコサヘキサエン酸」の略称
EPAとは、「エイコサペンタエン酸」の略称
DHA・EPAは、脂肪を構成する要素である脂肪酸に分類されます。脂肪酸とは脂質、つまり油のことです。
脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。
そのうち不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。さらに多価不飽和脂肪酸にはオメガ3系とオメガ6系があり、DHA・EPAは、ともにオメガ3系脂肪酸にあたります。
オメガ3系脂肪酸の1つであるDHA・EPAは、体にとって大切な栄養素ですが、体内で作ることができません。必須脂肪酸と呼ばれ、食べ物などから摂取する必要があります。
EPA
1960年代にその働きが発見されて以来、血液の性状を健康に保ち、特に血栓ができにくくしたり、高脂血症を予防する結果、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を予防するという働きがあるということが世界中の医学者によって研究され続けてきました。EPAに血液サラサラ効果があると言われるのは、そのような効果が認められているからでしょう。
DHA
1980年代の後半に脳や網膜などの神経系に豊富に含まれている栄養素であることが話題となり、DHAを食べると「頭の働きがよくなるのでは?」といった分かりやすいフレーズで一躍有名になりました。
DHAはEPAの代わりになるものなのか?
EPAの、血液をいわゆる血液サラサラと言われるような健康な状態にするという働きについていえば、DHAはその働きを完全にカバーするものにはならないと考えられています。
血液の粘度、いわゆる血液サラサラに重要な赤血球の柔らかさに関して比較したヒトの試験では、EPAを摂取した時はEPAが赤血球の膜に取り込まれて赤血球自身が柔らかくなり、血液粘度も低下する(サラサラになる)ことが確認されたのに対し、DHAを摂取した時はEPAよりも赤血球膜に取り込まれにくく、赤血球の柔らかさと血液粘度のいずれも改善が認めらなかったことが報告されています。
EPAは成人に、DHAは子供・乳幼児に
対してDHAでは100%の濃度のものを人が食べた研究はほとんどなく、実際はEPAも混ざった魚油による研究の結果が語られているというのが実状です。
結果として
EPA、DHAの上手な摂り方
食品からEPAやDHAを摂取すると、血液中のEPA濃度は比較的順調に上がっていくことが分かっていますが、DHAの濃度はあまり変化がありません。
体内で消費され食生活で大きく変動するEPAと違いDHAは体内ではとても安定した量を保っています。ただ、そうはいっても脳に多いというDHAも食べておきたいというのが人情。
そのような人にお勧めなのは、EPAの多い魚油を見定めて摂るということです。魚油には必ずDHAが入っており、また、EPAは体内でDHAに変換することもあるので、EPAを狙って摂る限りDHAが欠乏することはありません。
逆にEPAは摂っていないと確実に減っていきますので、EPAが多い食品をしっかり狙えばどちらも十分な状態にすることができるわけです。
比べてわかるEPAとDHAの違い
EPAとDHAは同じ魚油の成分であることから似たものとして語られることが多いですが、その作用はかなり違っています。
その研究の歴史について
EPAの働きは1960年後半にグリーンランドに住むイヌイットの心臓病で亡くなる人の割合が低いことに注目した研究によって明らかになりました。
DHAは1989年に英国で日本の子供の知能指数が高いのは魚食(DHA)の影響ではないか、という研究が発表され話題を集めました。また、EPAとDHA摂取後の血液中での濃度変化については、EPAは摂取すれば増え、摂取をやめると減るという変動しやすいものであることがわかっていますが、DHAは同じように摂取してもEPAのような増減が起こりにくいことがわかっています。
EPA
ほぼ純度100%の医薬品が開発されたため、それを用いた数多くのヒト試験の結果、EPAをヒトが摂取した時の作用、つまり、中性脂肪値を下げたり血栓を予防したりする働きがとても明確になっています。
これまでに蓄積された膨大なヒト試験の結果を背景に、EPAは、ほぼ純度100%の純品が高脂血症や閉塞性動脈硬化症の治療薬としても使われています。
対して、DHAは長い間ヒトでの試験はEPAも含まれた魚油で行われ続けたために、DHAの研究結果として発表されたものがEPAのいわゆる血液サラサラ作用と混同されているものも散見されます。
DHA
ヒトについて明確にわかっていることは、ヒトの脳組織にとても豊富に存在する脂質であるということです。すなわち脳が大きくなる時、つまり子供にとってはとても重要なものであると考えられています。
大人に対しての研究で純度の高いDHAで行われている研究はここ数年行われるようになってきました。大人に対するDHAの明確な機能については今後の成果を待ちたいところです。
以上より、循環器系(血液や血管)の健康維持のために欠かせない、いわゆる血液サラサラ効果が明確なEPAは大人に、脳の構成成分であるDHAは成長期の子供におすすめであるといえます。
食生活でEPAを狙ってEPAの多い食品を摂っていればDHAが欠乏することはありませんが、DHAだけを狙って摂っているとEPAが不足する恐れがあります。大人はEPAの多い食品を狙って摂ることでEPA、DHAの両方を満たしておくという摂り方が賢明であるといえるでしょう。