「アルバイト」と「パート」に法的な違いはなく、それぞれが言葉のもつイメージで使い分けられているに過ぎません。どちらも法的には「パートタイム労働者」という区分に属し、待遇に違いはないのです。
アルバイトとパートに法律上の違いはない
アルバイトとパートは法律上の区別がなく、どちらもパートタイム・有期雇用労働法で定める「パートタイム労働者」に区分されます。「パートタイム労働者」とは、その事業所で働く正社員より、1週間の所定労働時間が短い労働者のことを指します。
企業によって、短時間労働者をアルバイト、パートとそれぞれ別の意味で使い分けることが多いですが、その企業独自のルールにより区別していることになります。
アルバイトとパートの意味と語源
アルバイトとは
アルバイトの語源はドイツ語の「arbeit」で、学生が学業のかたわら家庭教師などを行い、お金を稼ぐことをアルバイトと呼んでいたのが始まりと言われています。
そのため、アルバイトは主に学生や卒業後間もないフリーターなど若者世代が、一時的な収入を得るために空き時間を利用して働くことを指す言葉として使われています。
パートとは
パートの語源は英語の「part timer(パートタイマー)」で、「full-time(フルタイム)」の対義語となり、短時間労働を意味する言葉です。時間的制約があり、正社員として働くことが難しい主婦・主夫が家事の合間に日中の空いた時間で働くことを指して使われ始めたことから、主に主婦・主夫の短時間労働を表す言葉として使われています。
「パートタイム労働者」の定義
アルバイトとパートはどちらも「パートタイム労働者」という区分に属します。
パートタイム労働者の定義は、『厚生労働省』によると「1週間の労働時間が、同じ職場の通常労働者の1週間の労働時間より短い労働者」です。
通常労働者とは、同じ職場の正社員といったフルタイム労働者を指します。 パートタイム労働者は企業によって複数の呼び方があり、以下の名称でも定義に当てはまる場合は「パートタイム労働者」です。
- アルバイト
- パート
- 嘱託
- 臨時社員
- 準社員
パートタイム労働者に対し通常労働者は「フルタイム労働者」に該当し、企業において以下の労働者をフルタイム労働者と指す場合が多いでしょう。
- 正社員
- 契約社員
- 派遣社員
- フルタイムパート
会社の決まりや実際の雇用条件にもよりますが、おおむね以上のように「パートタイム労働者」と「フルタイム労働者」に分けられます。
アルバイトとパートの求人情報での違い
求人を募集する際に、アルバイトとパートを分けて記載する企業は多くあります。ここでは、求人情報でのアルバイトとパートに関する疑問について解説していきます。
アルバイトとパート、どちらに応募しても問題ない
アルバイトとパートは、言葉が使われるようになった背景に違いがあるだけで、法律上の扱いに違いはありません。
傾向としては、主婦・主夫の経験が活かしやすいものや日中の固定シフトが多い職種、長期間雇用を前提としたものが「パート」として募集され、体力が必要とされる仕事や夜間や早朝のシフトがメインとなる職種や短期・単発の仕事が「アルバイト」として募集されるケースが多いですが、応募条件に合致していれば、主婦・主夫がアルバイトに応募したり、学生やフリーターがパートに応募することも可能です。
条件によってアルバイトとパートの時給が違うこともある
アルバイトとパートはどちらも「パートタイム労働者」ではありますが、法律上の言葉の区別がないため、時給を同一とする決まりもなく、時給が違っていても違法ではありません。
一般的には、アルバイトとパートは同じ時給で募集されることが多いですが、働く時間帯や仕事内容により時給に差を設ける企業が多く、働く時間帯や集めたい年齢層でアルバイト・パートと呼び名を分けている場合などに結果として時給が違うということがあります。
ただし、アルバイトとパートという呼び名や仕事内容ではなく、同じアルバイトやパートであっても人種や家柄などの社会的身分で時給に差がある場合は、労働基準法第3条により違法となる可能性もあります。
パートタイム労働者の待遇
残業、有給休暇、社会保険の加入など、法律等で定められた一定の待遇は、アルバイトやパートなど雇用形態に限らず働く条件が該当すれば原則適用されます。一方、会社独自の福利厚生は、合理的な理由がある場合には、雇用形態による違いがあるものもあります。
交通費の支給は会社ごとに異なる
交通費・通勤手当の支給は法律上の定めはなく、各会社の就業規則(賃金規程)に委ねられています。ただし、正社員には交通費を支給するがアルバイト・パートには支給しないといったことは同一労働同一賃金に違反するため認められません。
そのため、働き方に限らず従業員全員に支給する会社がほとんどですが、自宅から一定距離の場合のみ支給するといった会社もあります。募集要項や面接時、あるいは入社前に提示される労働条件を確認しましょう。
残業代は雇用形態に関わらず支給される
残業代は労働基準法に基づき、雇用形態関係なく適用されます。アルバイト、パートともに、規定の時間を超えると基本給に割増した残業手当を加算して支払われます。
有給休暇は雇用形態に関わらず付与される
有給休暇も労働基準法に基づき、就業規則で定める条件に該当すれば雇用形態関係なく適用されます。アルバイト、パートどちらも、週1日シフトでも半年以上、労働契約書やシフト表で定めた労働日の8割以上の勤務をしていれば、取得する権利がもらえます。
産休・育休は雇用形態に関わらず取得可能
雇用形態に限らず、産前産後休業(産休)、育児休業(育休)は法律等で定める条件に該当すれば取得することができます。ちなみに、産休の取得には、入社時期やシフトの日数、有期雇用かの制約もありません。
社割などその他の福利厚生は会社により異なる
会社独自の福利厚生は、対象者や条件は各会社の就業規則により様々です。まかないや社割などはパート、アルバイト含めた全従業員が利用できる所も多いです。一方、住宅手当、研修の参加、会社の保養所の使用などは、合理的な理由がある場合には、正社員などに特定されるものもあります。
社会保険・雇用保険は勤務条件を満たすと加入
アルバイトやパートに限らず、一定の勤務条件を満たすと、雇用先の社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象になります。
正社員の1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数の3/4以上働いているか、厚生年金の被保険者数51人以上の会社で勤務時間が週20時間以上且つ賃金が月8.8万円(年収約106万円)以上の非昼間学生の場合は職場の社会保険の加入対象になる可能性があります。また、雇用保険については、昼間学生は加入できません。
扶養控除は雇用形態に関わらず対象となる
アルバイト、パートとも、年収が一定額以下であれば、親や配偶者の税制上の扶養に入ることができます。16歳以上であれば親など扶養者は扶養控除を、配偶者がいる場合は、配偶者が配偶者控除・配偶者特別控除を受けられます。
学生バイトの場合、バイト年収が103万円以下(給与収入のみの場合)であれば親など扶養者は扶養控除が受けられ、所得税や住民税が一定額控除されます。特に大学生世代である19歳以上~23歳未満に対する控除額が大きいため、バイト代が年収103万円を超えると親などの税負担が大きくなるので注意が必要です。
主婦・主夫など配偶者がいる場合は、配偶者の年収が1220万円以下、パート年収が150万円以下は配偶者は配偶者特別控除が満額受けられ、それ以降はパート年収が増えるにつれ、201万まで控除額が段階的に減る仕組みです。