咀嚼(そしゃく)は、食べ物を噛み砕いて唾液と混ぜ合わせ、やわらかく飲み込みやすい食塊(しょっかい)にすることと定義されます。最近、この咀嚼という行為が、心と体の健康を保ち、元気で長生きすることと大きく関わっていることへの関心が高まっています。
- 毎日欠かすことなく行う咀嚼
- 咀嚼力とは
- 咀嚼の目的とは
- 噛む回数が激減している現代人・・
- 口腔健康は生活習慣病に関係あり!?
- 口腔機能の低下を防ぐことがフレイルを防ぐ
- 噛む回数を増やすと体に良い!咀嚼の大切さと理想の回数
- 咀嚼の役割と全身への影響
毎日欠かすことなく行う咀嚼
これまで意外なほど無関心に扱われ、見過ごされてきたようです。それは、咀嚼がヒトの運動の中でも最も複雑なものの一つで、とらえることが難しかったせいでもありました。
しかし、超高齢社会に入った今、冒頭で述べたように咀嚼への関心が高まるだけでなく、咀嚼能力を調べることによって健康長寿を考えるためのヒントが見つかる、そんな研究報告が数多く出されるようになりました。そこで必要になるのは、咀嚼を簡単にしかも正確に測ることができる客観的なモノサシです。
咀嚼能力測定用グミゼリーを使って、自分の咀嚼を測り、咀嚼を守り、咀嚼を鍛えることによって、より健康で充実した生活を実現してください。
咀嚼力とは
「噛む力」は「咀嚼力(そしゃくりょく)」といいますが、人の咀嚼力は個人や状況によって異なります。
咀嚼力を正確に測定することは難しいですが、一般的に、成人の平均的な咀嚼力は約50-70キログラム程度と言われています。
咀嚼の目的とは
実はこの「咀嚼力」は日常の様々な要因によって影響を受けています。また、個人の歯の数や位置、咀嚼筋の強さ、顎関節の健康状態、食事習慣、年齢、全身の健康状態などによって異なります。
そもそも咀嚼の目的は
食べ物を細かく砕いて、唾液と混ぜ合わせて「食塊」をつくり、飲み込みやすくすることにあります。細かく砕いたほうが、安全に摂取できるうえ、消化吸収の助けにもなります。そして、よく噛み、味わって食べることで得られる満足感は「心の栄養」にも欠かせません。
ところが、嚙み合わせの悪さ、加齢に伴う筋肉の衰えや歯の欠損などから、咀嚼しにくくなるケースがあります。これは放っておけない問題です。
咀嚼力
弱まると、硬い食品を避け、軟らかく食べやすいものを選ぶようになります。軟らかい食べ物ばかりを好んで食べてしまうと、偏った食生活になりやすく、栄養バランスも崩れてしまいがちですよね。
お口だけでなく、全身の健康に支障をきたすことになってしまいますので、自分はどのくらい噛めているか、普段から「咀嚼力」を意識することはとても大切です。
噛む回数が激減している現代人・・
忙しくなった現代では、食事の時間を惜しんで、噛む時間が少なくて柔らかい食品が主流。わずか半世紀ほど前と比べても、噛む回数の少ない食事になっています。
ところで、私たちは1回の食事でどのくらい噛んでいるのでしょう。様々な時代の食事を再現し、その食事1回あたりの咀嚼回数を調べたデータがあります。弥生時代と比べ、現代の咀嚼回数はわずか1/6になっていることがわかります。
口腔健康は生活習慣病に関係あり!?
厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査から、現在歯の数が少ない人ほど炭水化物の摂取量が多く、ミネラル、ビタミン類、食物繊維の摂取量が少ない傾向が認められています。
こうした背景から、歯周病などによる歯の喪失と共に生じる咀嚼能力の低下が、食行動の変化を招き、食行動の変化から生じる栄養摂取状態の悪化が、生活習慣病やメタボリックシンドロームを促進するのではないかと推測されています。
口腔機能の低下を防ぐことがフレイルを防ぐ
歯・口の健康の悪化が放置され、食べる・しゃべるといった機能の低下が進むと「オーラルフレイル」と呼ばれる状態になります。これは、栄養 面・身体面のフレイルを進行させ、加齢性筋肉減少症(サルコペニア)や運動器症候群(ロコモティブシンドローム)の要因となります。オーラルフレイルを予防・改善することによって、全身のフレイルに歯止めをかけることが重要です。
噛む回数を増やすと体に良い!咀嚼の大切さと理想の回数
高齢者の健康維持において、食事は非常に重要な役割を果たします。バランスの取れた栄養摂取や適切な食事量の管理は言うまでもなく、実は、食べ物をよく噛むこと自体が健康に大きな影響を与えているのです。
噛むという行為
単に食べ物を細かくするだけでなく、消化酵素の分泌を促進し、食べ物の消化吸収を助ける働きがあります。
よく噛むことで栄養の吸収や消化機能の個以上、さらには脳の活性化にもつながると言われています。
また、噛む動作は脳の血流を増加させ、ストレス解消にも効果があると考えられています。体重を落としたいと思っている方では噛む回数が多いほど満腹中枢が刺激され、食べすぎを防ぐこともできます。
現代社会では
食の欧米化や加工食品の増加、ファーストフード文化の浸透などにより、私たちの食生活は大きく変化しています。
その結果、多くの人が食事の際に十分な咀嚼を行っていないのが実情です。軟らかい食べ物や、短時間で食べられる食品が増えたことで、自然と噛む回数が減少してしまっているのです。
高齢者の場合
加齢に伴う噛む力の衰えもあり、どうしても咀嚼不足になりがちです。歯の欠損や歯周病などの口腔トラブルも、咀嚼機能の低下に拍車をかけます。
その結果、十分な栄養摂取ができなくなり、体力や免疫力の低下、さらには認知機能の低下にもつながる危険性があるのです。
咀嚼の役割と全身への影響
咀嚼とは、食べ物を歯で噛み砕き、唾液と混ぜ合わせることで、飲み込みやすい状態にする過程のことを指します。この一連の動作は、単に食べ物を細かくするだけでなく、私たちの体にさまざまな影響を与えています。
食べ物を噛むという行為は、消化吸収、満腹感、脳機能など、多岐にわたる健康面での効果が期待でき、非常に重要です。
まず、よく食べ物を噛むことで唾液の分泌が促進されます。唾液には消化酵素のアミラーゼという物質が含まれており、これが食べ物に十分に混ざることで、消化吸収が促進されます。
そして唾液は、食べ物を細かく砕き、滑らかにすることで、胃での消化をスムーズにする役割も果たしています。また、殺菌作用もあるため、口腔内の衛生維持にも貢献しています。
それだけでなく!
噛む回数が多いほど満腹中枢が刺激され、自然と食べ過ぎを防止することができます。これは、咀嚼によって満腹ホルモンの分泌が促されるためです。
しっかりと噛んで食事を摂ることで、少ない食事量でも満足感が得られ、結果的にカロリー過多を防ぐことにつながるのです。
さらに、咀嚼は脳の血流を増加させる効果もあります。噛む動作によって脳が刺激され、活性化するのです。特に、記憶や学習に関わる海馬という部位の血流が増加することが分かっています。
これは、認知機能の維持や向上にもつながると考えられています。高齢者の場合、咀嚼機能の低下が認知症のリスクを高めるとの研究結果もあり、咀嚼の重要性が再認識されています。
加えて、ストレス解消効果も期待できます。噛むという動作自体が、ストレス発散につながるのです。
このように、咀嚼は消化機能や脳機能など、私たちの体のさまざまな部分に影響を与えています。つまり、よく噛むことは、単なる食べ方の問題ではなく、健康維持に欠かせない重要な要素なのです。
毎日の食事で意識的に噛む回数を増やすことは、全身の健康につながると言えるでしょう。