労働組合の形式には、様々な種類があるのです。同じ会社の労働者が集まって結成されたものや、同じ産業内で結成されたものなど、それぞれの組織がそれぞれの役割を担っています。
- 労働組合とは
- 明治時代の労働運動
- 大正デモクラシーと労働組合の発展
- 戦後の労働組合運動
- 労働者が個別に会社と交渉
- 企業に禁止されている不当労働行為
- 労働組合の役割
- 労働組合が実現できること
- 労働組合の現代的課題
労働組合とは
労働者が自分たちで労働者の権利を守り、労働条件や職場環境を改善して、より働きがいのある職場にしていく組織です。
明治時代の労働運動
日本の労働組合の歴史は、明治時代、急速な工業化に伴い劣悪な労働環境に置かれた労働者たちが、待遇改善を求めて立ち上がったことに始まります。
当時、工場では長時間労働や低賃金が横行し、労働災害も後を絶ちませんでした。こうした状況下で、労働者たちは自分たちの権利を守るために団結し始めます。
1897年には、鉄工組合など職種別に組織された労働組合の先駆けとなる団体が結成されました。これは、日本の労働運動の萌芽と言える出来事であり、労働者が組織的に権利を訴え始める転換点となりました。
大正デモクラシーと労働組合の発展
大正時代に入ると、大正デモクラシーの影響を受け、労働運動はさらに活発化します。
1912年には、友愛会を母体とした友愛労働組合が結成され、労働時間の短縮などを求める運動を展開しました。この時代は、普通選挙の実現や言論・集会の自由を求める運動が盛り上がりを見せ、労働運動もその流れに大きく影響を受けました。
1925年には、労働組合の結成を制限する治安警察法が制定されるなど、政府による弾圧もありましたが、労働運動は社会主義運動と結びつきながら、徐々にその規模を拡大していきました。
戦後の労働組合運動
第二次世界大戦後、1945年に労働組合法が制定されると、労働組合は急速に組織化が進みました。
戦後の混乱期において、労働組合は賃上げや労働時間の短縮など、労働条件の改善に大きく貢献しました。また、労働組合は政治運動にも積極的に関与し、社会保障制度の充実など、日本社会の発展に大きな影響を与えました。
この時期は
戦後の復興とともに経済が急速に成長し、労働者の賃金水準も向上しました。労働組合は、労働者の権利を擁護するだけでなく、日本社会全体の進歩にも大きく貢献したと言えるでしょう。
労働者が個別に会社と交渉
組織全体の改善に結びつけるのはなかなか難しいですし、そもそもたった一人で声を挙げるには勇気が必要です。そこで重要な役割を担うのが、雇う側と対等な立場で交渉できる労働組合です。労働組合があれば、働く人の代表という立場で、雇う側と対等に話し合える「集団的労使関係」を築くことができます。
労働組合が役割を全うするために必要な権利は、憲法で保障されています。
その権利とは
「団結権」(労働者が労働組合を作る権利、労働組合に加入する権利)、「団体交渉権」(労働組合が雇う側と労働条件などを交渉し、文書などで約束を交わすことができる権利)、「団体行動権」(話し合いがまとまらなかった場合、仕事をしないで抗議をする権利。ストライキ権)の3つです。これらを「労働三権」といい、正社員、契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態に関わらず、すべての働く人に保障された権利です。「労働三権」が認められているのは労働組合だけで、NPOや市民団体にはこうした権利は与えられていません。
企業に禁止されている不当労働行為
労働組合法では労働組合や組合員に対し、組合活動を理由に不利益な扱いを行うことを禁止しています。その不利益な扱いとは以下の4点に定義され「不当労働行為」と呼ばれます。労使紛争において労働組合または組合員が、会社から不当労働行為を受けたときは、第三者機関である「労働委員会」に救済を申し立てることができます。
労働組合の役割
より良い職場をつくることです。
そのために、健全な労使関係を築き、組合の要求を実現させていく必要があります。
例えば春闘(春季生活闘争)と呼ばれる賃金や労働条件に関する交渉、会社の経営状況や賃金水準などについての調査・討論など、活動は多岐に渡ります。
また近年では
働く環境の変化や働き方の多様化により、求められる役割はさらに広がっています。特に重視されているのが労働組合の社会的責任(USR)です。企業の社会的責任(CSR)と同様に、労働組合もその活動を通じてよりよい社会をつくり上げていくという自覚が求められています。
労働組合が実現できること
1、組合員の不満・苦情などを会社側に伝えやすくし、職場の風通しを良くする。
2、職場のルールや賃金・労働時間などを話し合いで決められるようにし、労働条件を改善する。
3、不当な解雇や安易なリストラなどをなくし、雇用を安定させる。
4、働きぶりが公正に評価され、納得して働ける職場環境に改善する。
5、経営に関する情報を入りやすくし、透明性を増す。
6、倒産や企業売却などの時に力になる。
一方で、雇う側にもメリットがあります
1、働きやすい職場になると、従業員の意欲が向上し、業績も上がる。
2、情報の共有化が進むと、無駄がなくなり、仕事の効率がアップする。
3、従業員の意識や、不満の改善に向けた意見など、生の声を把握できる。
4、職場で起きている問題を早く把握でき、コンプライアンスの強化につながる。
5、個別労使紛争を未然に防ぐことができる。
労働組合の現代的課題
現代社会において、労働組合は様々な新しい課題に直面しています。
労働組合は、非正規雇用の増加、労働者の高齢化、グローバリゼーションなど、新たな課題に直面しています。これらの課題に対して、労働組合は、労働条件の改善だけでなく、雇用創出、社会保障制度の改革など、社会全体に貢献できるよう、その役割を改めて問われています。
例えば
AIやロボットの導入による雇用への影響や、ワークライフバランスの重視など、労働組合は従来の枠組みを超えた活動が求められています。