飲食店業界は廃業率が高く、生き残るのが難しい業界と言われています。
中小企業庁が公表している業種別廃業率をみると、飲食サービス(宿泊業も含む)の廃業率は5.6%でした※。全ての業種のなかで最も高い廃業率ですが、どのような要因があるのでしょうか。
飲食店とは
総務省による日本標準産業分類の定義を拝借すれば、飲食店とは「主として注文により直ちにその場所で料理、その他の食料品又は飲料を飲食させる事業所」。
飲食店を営業するのに主に必要なことは、講習を受けて資格を取得した食品衛生責任者と防火管理者を置き、食品衛生法に基づいた飲食店営業許可を取ることです。
食品衛生法を遵守していれば、営業の自由度が高く、さまざまなルールを決めることができます。
飲食店の経営におけるドリンク
売上に占めるドリンクの割合はだいたい、レストランで20%、居酒屋で40%、カフェで80%、バーで85%です。カフェや喫茶店、バーといった業態では、ドリンクが売上の中で高い割合を占めることを前提に設計されているので、ドリンクを注文してもらわなければ経営できません。
料理は
注文できる数や食べられる量に限界がありますが、ドリンク、特にアルコールドリンクであれば何杯でも飲めます。アルコールドリンクには、ビールのように利益率が低いものから、ハイボールやサワーのように利益率が高いものまであり、ソフトドリンクでは、手の込んだモクテルやブランドのコーヒーや高級茶でない限り、原価率が低くて利益が多いです。
ドリンクは
ものによって幅はあるものの、平均的にフードよりも利益率が高い上にすぐ提供できるので、優秀な商品といえます。全体的に利益率が高い上に何杯も飲んでもらえるアルコールドリンクは、飲食店にとってかなり貴重な収益源です。
料理とドリンクのマリアージュ
飲食店で食べ物だけを食べたいという考え方は理解できます。お金を節約したかったり、飲みたいものがなかったりして、ドリンクのオーダーに気乗りしない場合もあるでしょう。
ただ、飲食店であれば、ソムリエが料理とお酒のマリアージュを考えていたり、シェフがお酒に造詣が深かったりするものです。プロフェッショナルが考えた組み合わせの妙味を味わってみるのは、価値ある食体験になります。アルコールドリンクだけではなく、ノンアルコールドリンクであっても同様です。
お酒をはじめとするドリンク
組み合わせれば、食べ物がよりおいしく感じられることもあります。アラカルトであれば、注文する料理に、どのドリンクが合うかを考えるのも楽しいです。
白ワインか赤ワイン、日本酒か紹興酒かなど、何を選ぶかによっても、料理の印象はだいぶ違います。何がよいか思い浮かばなければ、スタッフに訊いて、人気のドリンクや料理によさそうなものをチョイスしてもらうのがよいでしょう。
アルコールドリンクはもちろんのこと、ノンアルコールドリンクでも、少しでも安い1杯ではなく、その料理と相性のよいドリンクを選ぶことをお勧めします。
飲めない、もしくは、飲まない
ここまで飲食店や食体験にとってのアルコールドリンクの重要性について説明してきました。
体質や妊娠中、治療や持病などによって身体的にアルコールドリンクを飲めなかったり、宗教やソバーキュリアスなどアルコールドリンクを忌避する信条をもっていたりする方がいます。
そのため、アルコールドリンクを飲めないこと、もしくは、飲まないことは全く問題がありません。
利用者への告知
ただ、飲食店と客のミスマッチはお互いに不幸な結果を生み出すだけです。入店してから知るよりも、入店前にルールや方針を知ることができるのは、むしろよいこと。
同じイタリア料理店でも、どれだけワインにこだわっているのか、どれだけワインを飲んでもらいたいと思っているかは、店によって千差万別です。今回のように店頭で告知するのは、飲食店と客のどちらのためにもなります。公式サイトやグルメサイトに表記したり、予約サービスや予約電話で伝えたりするのも同様です。
ワインが飲めるけれども、「ワインが飲めない人は入店不可」と公言する店に行きたくないのも、利用者の自由。
冒頭の投稿者は、張り紙があったことによって、あまり好みではない店に誤って訪れる可能性を回避できたといえます。
表現の方法に気を付けて、客を蔑ろにすることさえなければ、飲食店がポリシーやルール、考え方や態度を表明することは、とても意味のあることなのです。