会議やレストランの席で、貧乏ゆすりをする人が近くにいたら、なんだかこちらまで落ち着かない気分になります。
一般的にお行儀が良くないとされている貧乏ゆすりですが、近年、健康に良いということで注目を集めているのをご存知ですか?
- 貧乏ゆすりをすると貧乏になる?!
- 貧乏ゆすりが多い女性は死亡リスクが低い?!
- 貧乏ゆすりでエコノミークラス症候群を予防
- 貧乏ゆすりをする心理状態と原因
- 貧乏ゆすりで集中力アップ
- 周りの人が貧乏ゆすりをしている場合の対処法
- 貧乏ゆすりを止めるには
貧乏ゆすりをすると貧乏になる?!
お行儀が良くないだけでなく、「貧乏ゆすりをすると貧乏になる」ともいわれます。
諸外国でも足をゆするのはお行儀が良くないとされていますが、「貧乏」という概念が加わるのは日本だけ。これはどうしてなのでしょう?
貧乏ゆすりという言葉は
江戸時代の書物や、俳句や川柳に登場します。この頃に、足をゆすると貧乏神に取り憑かれるという迷信が生まれたそうです。
名前の由来は諸説ありますが、着るものも食べるものもままならない貧乏な人が、寒さや飢えからブルブルと小刻みに震えている様子から命名されたという説が有力のようです。
貧乏ゆすりが多い女性は死亡リスクが低い?!
このように江戸時代から続く根強いマイナスイメージを覆したのが、2015年にアメリカの医学会誌「American Journal of Preventive Medicine」(2015年9月23日号)に掲載されたロンドン大学などの研究チームの報告です。なんと、貧乏ゆすりが多い女性は死亡リスクが低くなるというのです。
イギリスでは
長時間座っているオフィスワーカーの健康問題に焦点を当て、これまで対象を変えて様々な調査が行われてきました。長時間座ることが死亡リスクを高めるということが知られていましたが、今回の研究では、貧乏ゆすりの多い女性は、長時間座ることに伴う死亡リスクを下げる可能性があるということが判ったのです。
第二の心臓
足の筋肉を動かすことで、血液を全身に巡らせることができ、死亡リスクを下げる可能性があるというもの。身体の仕組みは男性にも共通するかもしれません。
「貧乏ゆすり」は、実は良く知られた病気にも有効であるとされています。
貧乏ゆすりでエコノミークラス症候群を予防
エコノミークラス症候群(別名ロングフライト血栓症)とは、狭い飛行機で長時間座っていた乗客が、飛行機を降りた直後に呼吸困難などで倒れる病気のこと。
足を動かさずに長時間座ることで、足の静脈にできた血の塊(血栓)が、足を動かした途端に血流に乗って肺に飛び、肺血栓塞栓症を引き起こすというメカニズムです。この病気を防ぐためにも貧乏ゆすりが有効とされています。
実際、航空会社も、エコノミークラス症候群予防のための足の運動について、イラストや動画で説明しています。ただし、この場合、一般的な貧乏ゆすりのようにこまかくゆするのではなく、もう少しゆっくりとした運動です。
貧乏ゆすりをする心理状態と原因
貧乏ゆすりをする原因として非常に多いのは「フラストレーションを楽にするため」です。
貧乏ゆすりに代表される、ほぼ無意識にやってしまう繰り返しの反応のことを専門用語では「固着反応」と呼び、それによってストレスを解消しようとしているのです。
緊張からの解放
緊張すると、動悸がしたり、体が震えたりします。
そうした身体の状態に意識を向けるとますます緊張が高まってしまうため、貧乏ゆすりのように無意識に身体を揺すって緊張を逃がそうとします。
身体を揺らす以外でも、髪の毛を指で回す、机を指でたたく、といった行動として現れることもあります。
怒りの放出
怒りを感じると、破壊行動をしたり、大声で叫んだり、とその「怒り」を吐き出したくなる人は多いでしょう。
しかし、実際はそのようなことをできない場面の方が多いですよね。
そうしたときに怒りを小刻みにして放出させるため、貧乏ゆすりをする場合があります。
不安からの解放
例えば試験の結果待ちをしているとき、気になる相手からの返信を待っているときなど、心がそわそわと落ち着かないときに所在なさから解放されたくて貧乏ゆすりをすることがあります。
また「爪を噛む」など日頃癖となっている行動が酷くなるという形で出ることもあります。
レストレスレッグス症候群(RLS)
レストレスレッグス症候群は「むずむず脚症候群」とも呼ばれ、下肢に不快な症状がおこり、足を動かすことで和らぐ病気です。
眠ろうと布団に入ったときや、じっと座っているときに足の内側から不快感がおこり、足を動かすと和らぎます。
原因がはっきりとわからない場合と、鉄欠乏性貧血や糖尿病などの病気や、妊娠などが原因となることがあります。
少しでも気になる場合は病院を受診してみましょう。
貧乏ゆすりで集中力アップ
健康に良いだけではありません。貧乏ゆすりは集中力をアップさせます。
長時間じっと座っている状態は、血液を足の方へ下げやすくします。つまり、頭に血液が上がりにくいということなのです。頭を使って集中するためには、頭に血液が必要です。そこで、貧乏ゆすりで血液循環を助けてあげることで、集中力が増すというわけです。
健康に良いことから医療費を下げる効果が期待できるだけでなく、仕事や勉強の効率が上がれば、収入アップにもつながります。
もしかしたら、貧乏ゆすりが金持ちゆすりに化けるかもしれません。
ただし、貧乏ゆすりが人を不快な気持ちにさせてしまいがちなことを忘れてはいけません。
それが原因で、会社での評価を下げたり、周囲の人に嫌な思いをさせたりしたら、本当に貧乏神に取り憑かれるかもしれません。時と場所を選んで貧乏ゆすりを実践しましょう。
周りの人が貧乏ゆすりをしている場合の対処法
さりげなく注意する
相手が貧乏ゆすりをしているときに「やめてください」など単刀直入に言ってしまうと場の空気が悪くなる可能性がありますので、さりげなく伝えましょう。
相手が貧乏ゆすりをしていないときに伝えるのがコツです。
「○○さんって揺れているときが多いよね」など軽い感じで伝えてみると良いでしょう。
「ストレスが溜まっている?」と声をかけてみる
相手との関係性にもよりますが、気軽に話せる場合は相手の気持ちに焦点を当ててみましょう。
ストレスが溜まっているかと聞けば「なんで?」と帰ってくると思うので、そのときに「繰り返し行動が多いからイライラや不安があるのかなと心配になって」と伝えれば、相手が自ら貧乏ゆすりに気づいてくれる可能性があります。
避難行動をする
日常的にかかわらない相手であれば、避難することが一番穏便な方法です。
その人のそばを離れる、椅子をずらして振動がこないようにする、など自分から離れましょう。
会話を切り上げる
会話中に相手が貧乏ゆすりを始めたなら、会話内容に対して何かしらの緊張、怒り、不安を感じているのかもしれません。
相手の情緒が不安定なときは、あまり建設的な会話ができないでしょう。
急ぎでないならば、一旦話の内容をずらし、会話を切り上げてしまうのも手です。
機嫌が良さそうなときに同じ会話を振れば、違った反応が返ってくるかもしれません。
貧乏ゆすりを止めるには
やる前よりやり始めてから気づく
「貧乏ゆすりをしてはいけない」「やらないようにしなければ」と思っていても、なかなかそれだけでは貧乏ゆすりは直りません。
それよりはまず、貧乏ゆすりをし始めたときに「今自分は貧乏ゆすりをしているな」と認識することが大切です。
つい無意識でやってしまう癖を客観的に見て、どういうときに貧乏ゆすりを始めることが多いか考えてみましょう。
別のことに置き換える心がけを
貧乏ゆすりをしていることに自分で気づいたときに、ただ止めようとするのではなく、すぐ何か別の行動をするようにしてみてください。
席から立ち上がる、背伸びをする、深呼吸をする、水を飲む、など何でもかまいません。
自分の中で、貧乏ゆすりをしたらこれに置き換える、という行動を決めておくのです。
できれば気分転換やリラックスができるもの、ストレスが解消できるものが良いでしょう。
生活習慣の見直しも必要
貧乏ゆすりの原因が精神的なストレスなどである場合、もちろんその原因自体をなくすことができれば何も言うことはないのですが、そういうわけにもいかない場合のほうが多いのではないでしょうか。
そんなとき、ストレスを感じにくくて溜め込まないような心身の状態でいられれば問題はありません。そのために、まずは根本的な生活習慣を見直してみましょう。
下半身の血流を良くする
特にストレスを感じたり焦っていたりするわけではないのにどうしても貧乏ゆすりをしてしまうときは、長時間椅子などに座っていて足に血が回らなくなっているのかもしれません。
そんなときは、できれば一度席を立ち、トイレに行くなりお茶を飲むなりして一息つきましょう。